13. とじていくひかり
『なにを思ってるかなんて知らない』
そんな
らしくない挑発的な言葉
で
素直、抵抗しなかったんだから
って
きっとおなじこと、思ってたんだ
って
そう信じた
身を乗り出す
もう一度 もういちど
木々が 雲が
月あかりを遮っていて
君を
あのときとはちがう気持ちで、力で
いつもの黒髪 ほのかな香り
夜空にはじける
「離したくない」
気持ちが ことばが
この夜も気持ちも時間も
すべての憂いを飛び越えること
願って
その願いを力任せに叶えるため
君のいたみなんて考えもせず
もうすこしの温度を引きずりだそうと
ちいさな背中にありったけの
ちからを‥
あの日の砂が残るこころから
わき上がる単純なことば 繰り返し
これが届かないのならいっそ
なにもかもが砕けてしまえばいいのに
と思った
高架のホームから鳴りひびくコール
改札の前、いつもしてたように
その手を離した
さっきまでの手のぬくもりは
あしたも変わらないと
おもってた
いつものように
階段で振り返る君
だけど
いつもとはちがう表情に
読みとれなかった
針が重なるあしたが
来ないこと
街灯がぶらさげる鈍いひかり
冷ややかな石畳
そりかえった枯葉 ちらばる
二十三時で消息をたつバス停
いつかのファミリーレストラン
空転するチェーンの響き
通り過ぎる零時過ぎの学生たち
だれのためでもない青信号のさえずり
暗闇をひた走る貨物列車が
始発のときを待つ駅を駆け抜ける
枯葉たちが一斉に競争をはじめる
舞い上がる冬の匂い 北東へ向ける車の音
影のない街灯
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