目の前にいる１人も救えないような奴が、もっと大きなことを成せるわけ、ないじゃないですか

だいたいね、お前たちはね、目の前にいる１人すら救おうとしないじゃないですか。

国民全員に何が給付金１０万ですか、何がマスク２枚配布ですか。

そんなモノね、さっさと配ってしまえばいいんですよ。

そんなことよりもね、いま医療現場で疲弊して疲れ切ってる人に直接的な支援をもっとしてくださいよ。

職を失った人にお金をバラ撒いてくださいよ。

休業自粛してる人にウン百万の支援金を払ってくださいよ。

僕らの税金ですからね。

ニーチェも言ってたじゃないですか。『死にもの狂いの剣士と、満足した豚からも等距離に離れていたところで、そんなのは凡庸じゃねえか』ってね。

あのね、分かっていることをわざわざ、口に出されても仕方がないんですよ。

マスクやアルコール消毒液が不足しているとか、世界経済が大変だとかね。

わざわざ言わないでもいいんですよ。

そんなんで国民の危機感を煽ってる場合かって。

確かなことは「３密を避けてお家にいろ」ってことなんですよ。

そのためには、国がもっと支援すべきなんですよ。

目の前に困っている人がいたら、助けるべきなんですよ。

この国の偉い人の大半はね、馬鹿を見ることを恐れて、何にもしないじゃないですか。

馬鹿を見ることを死ぬほど恐れている、馬鹿ばっかりですよ。

それよりも、もっと早く目の前にいる困っている人を助けましょうよ。

僕ですら、手作り消毒アルコールを街で配ってますからね。

目の前にいる１人も救えないような奴が、もっと大きなことを成せるわけ、ないじゃないですか。

こんな魂のこもっていない政策なんてね、駄目ですよ。

何も揺さぶられないじゃないですか。

こんな政策を聞いてね、どう闘えって言うんですか。

そうやって、何に対しても他人事みたいな国の偉い人がね、世の中を悪くしちゃってるんですよ。

もうちょっと本気出してくださいよ。

目の前で、子供が泣いているとしますよね。

銃で誰かに撃たれそうだとしますよね。

その時に、正義とは何だろう、とか考えてどうするんですか？

助けちゃえばいいんですよ。

コロナで困っている人がいたら、助けちゃいましょうよ。

法律が人とか世界を救うとは限らないんですよ。

そもそもね、目の前にいる１人も救えないような奴が、もっと大きなことを成せるわけ、ないじゃないですか。

伊坂幸太郎「砂漠」に出てくる西嶋より