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ディレクターは眠らない


夜中の4時である。眠れない。
もしかすると2日前に10時間以上寝てしまったからかもしれない。
「おいお前、そんなに寝ていいのか?」
と体が僕に言っている気がする。
ただ2日前に10時間も寝てしまったのにはわけがあるのです。

3週間で2回風邪をひく

実は3週間で2回も体調不良になってしまった。
2つのレギュラー番組の演出を担当すると毎日のように締め切りに追われるようになる。主に原稿や映像、資料のチェック、編集。そしてそれに付随して、会議、打ち合わせに収録も入ってくる。
風邪をひくならばそれをこなしながら風邪をひくのがプロというものである。

1回目の風邪

1回目の風邪は治るのに1週間ぐらいかかった。数年前なら半日寝れば元気になったのに、全然治らない。
誰にも言っていないが(嘘)僕も40歳を超えて体力に衰えが出始めている。
収録の前日は点滴を射って乗り切った。
打ち合わせ終わりに全然知らない街のお医者さんに「元気になるやつを一発お願いします」と言って射ってもらった。
確実に僕より年下と思われるお医者さん(看護師さんかもしれない)にずっとタメ語で診察された。40超えてるのに。
「うん、そこ寝てていいよ」
「電気消す?」
「あっちから出て」
たぶん僕がどうしようもないやつに見えていたのかもしれない。
でも、そういうプレイだと思ったら別段悪い気持ちにもならなかった。
これが40超えた男の余裕である。

そんな点滴とプレイのお陰で全ての会議も編集も収録も全く穴を開けずに
やり過ごすことができた。

2回目の風邪

2回目はまさに今である。
つい1週間前まで風邪をひいていたのにまたかかるなんて
恥ずかしい限りである。
おととい急に全身のだるさと腹痛に襲われ病院に駆け込んだ。
診てもらったところ風邪で体が弱っているところに食当たりが併発したとのこと。
処方箋をもらって薬局に行ったら地獄の40分待ち。
(あとで調べたら全国的に薬が今足りないらしいですね)
会計で「電子マネーでしたらあっちのレジにならんでください」
この言葉で緊張の糸が切れて座り込んでしまった。
正直立てないぐらいしんどい感じになっていた。

その日は会議とVTRのチェックが入っていたが
すべてキャンセルさせてもらって療養することにした。
これはプロ失格である。
(あれ?キャンセルすればもっと夏休みとれるじゃん)
(この時間もったいね〜。本読めるじゃん)
(VIVANTまだ最新話見てないぞ。ヤフーニュースなんて開いたら一発でネタバレするぞ!気をつけろ!)
なんて考えながら横になっていた。
しかし頭も体も痛すぎてそれどころではなかった。

翌日から会議(リモート)には復帰したが、正直本調子には程遠く
こういう時こそ
(他のスタッフもっと喋れよ!)
(そうか、これ俺が考えなきゃいけないのか〜!)
(こういう時にトラブルでまだ企画を0から考えるの勘弁してよ!)
という愚痴が頭の中を駆け巡って余計に会議が滞ってしまう。

会議が終わったら即刻横になって
スマホの小さい画面でADさんから送られてきた資料をチェックし
なんか返信しないと怒られそうな先輩にだけ返信し
なんとか支障をきたさない程度に仕事をし
なるべく目を瞑っていた。

回復してからも地獄

そんなわけで2日間をほぼ棒に振ってしまい
結局4日分の仕事をこの土日で全てこなさないといけなくなってしまった。
全快しているわけではないが、今日の夜はちゃんとご飯も食べられたし
(明日はちょっと味濃いめのやついっちゃおうかな)
と胃のほうも調子のいいことを言っているので、明日にはほぼ回復しているだろう。

仕事の方も本日土曜分は結構順調に進んだ。
意外とやればぎゅっとできるもんだなと感心した。
ぎゅっとすればやっぱり長期休み取れるんじゃないか?とも思ったが。

本当に忙しい時には風邪をひかない

ぎゅっとできるのはたまたま今だったからよかっただけで
これが特番もがっつり並行して進んでいたらかなりヤバい状況だったと思う。
不思議なもので大きい仕事を抱えているときは風邪をひいたりしないものである。

THE SECONDのときもプロデューサーに
「僕が倒れたらどうします〜笑」
とか冗談をよく言っていたが、
ずっと元気な状態で本番を迎えることができた。

そういえば、今年27時間テレビの総合演出だった武田さんもその期間に体調を崩したなんて話は聞いたことがないし、
めちゃくちゃ忙しそうな佐久間さんも体調を崩されてラジオをやすんだりオールナイトフジコをやすんだりしてるのも聞いたことがない。(ラジオは1回だけあった?)

緊張の糸ってやつがあって、それが張り詰めているときは大丈夫だけど
大仕事が終わった瞬間にその糸が切れて体調を崩すというのは
この業界でよく聞く。
つまりこの糸を張り詰め続けるぐらい、常に忙しい人は体調を崩さないのかもしれない。
僕が忙しくなったのはここ2〜3年の話なのでその糸がまだ細くて切れてしまうが、きっともっと鍛えていけば太い糸になって切れにくくなるんだと思います(社畜)。

ショートスリーパーの方が絶対にいい

僕の師匠は「いかに寝ないで仕事ができるか」を美徳としていた。
確かに眠らなければ24時間ずっと制作に時間を割くことができる。
そして実際にそれをやってのけていた。

平均睡眠時間6時間

残念ながら僕はそれができない。
1日2〜3時間の睡眠では
頭が回らないし、絶対にばててしまう。
だから僕は極力普段は6時間は寝るようにしている。
夜3時間しか寝られない時は、1時間の昼寝を2回してなんとか6時間睡眠に近づけようとしている。
もちろん編集の追い込みだったり収録前はそんな余裕もないが
極力睡眠をとってクリアな状態で仕事に臨んでいる。
結果的にその方がミスも少ないし作業効率がいいことがわかったからだ。
かと言って、余裕のある日に8時間寝たりもしないのだ。
それはそれで時間が勿体無いという気持ちも自分の中にある。
そんなわけでショートスリーパーになれるなら金を払ってでもなりたいと思っている。
時間の面で優位に立てたら、才能がない人間でも才能ある人に勝つチャンスがあるかもしれないからだ。

ただ、同世代のディレクターや作家さんに
「睡眠時間どれぐらい?」と聞いて
「ショートスリーパーだから2〜3時間で十分」
と答えた人には実は会ったことがない。
あまりこの質問をしてないからかもしれないが、みんなだいたい
「6時間」とか「7時間」と答える。
もしかすると僕の師匠が鉄人すぎたのかもしれないし
昔はそれぐらいの睡眠時間でやるのが当たり前だったのかもしれない。

(「お前らクリエイターが寝てるから今のテレビはダメなんだ!」
と言っているそこのあなたは一旦黙っててください。
そういう時代でもないんで。)

ショートスリーパーになるには

この手のビジネス書とか新書は結構読んだのだが
「常に同じ時間に寝るようにしましょう」
「寝る環境を整えましょう」
「食事は寝る○時間前に必ず済ませましょう」
というようなこの仕事をしていたら到底無理なことが書かれていて
すぐに諦めた思い出がある。
とはいえもし方法があるならご教授願いたい。

こんな時間にやることかね?

いま僕が思っていることはこれである。
「とりあえず眠れないし勿体無いから何かしよう」
と思って朝5時半にやっていることがnoteを書くことかね?

仕事を始めてしまうとキリのいいところまでやらないと終われなくて
本当に眠れなくなってしまう。
だから仕事でもなんでもないこのnoteが
ちょうどいいんじゃないかと思い今に至る。
そんな僕が1時間半かけてこの記事を書き上げた。
書き上げたというか殴り書いたに近い。
構成も校閲もなにもしていない。

普段6時間睡眠の僕が急に10時間も寝たもんだから
体が驚いて「起きてなにかしろ!」と言って
やったことがこれだとは体もさらに驚いているだろう。

驚いたどころか呆れてちょうど今眠たくなってきた。
結果として、今月も何か書かないとな〜と後ろめたい気持ちになるのだけを
解消してくれた。

ディレクターと睡眠についての僕の浅い考察。
おわり






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