兵頭二十八

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    ★《続・読書余論》Richard W. Bulliet著『The Camel and the Wheel』1975年刊

     こんかいの《続・読書余論》は、有史以来のらくだ(フタコブラクダとヒトコブラクダ、およびそのハイブリッド駱駝)の馴致および20世紀前半までの利用について、古代語文献を含む、ほとんどあらゆる資料を博捜してまとめてある、とてつもない労作です。  サハラ砂漠の石刻絵や、中東各地の遺跡レリーフ、古代貨幣の図案等、いやしくもラクダが描画されている図像資料も、集めに集めているようです。ラクダ用の鞍の構造やハーネスの地域差を調べるため、1960年代に本人が旅行して撮影した風俗写真も載せて

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      • ★《続・読書余論》アンリ・ベルクソン著、岡部聡夫tr.『物質と記憶』1995年刊

        こんかいの《続・読書余論》は、フランスの哲学者ベルクソン(1859~1941)が、19世紀末において、人間の脳の機能について推理した大作です。 この難解な名著の全容を、私は理解できたとはとても申せないのですが、2018年に『AI戦争論』を書く時にひとつの確信を与えてくれたのが、本書中にある、夢に関する意味深いヒントでした。 AIには、わたしたち人間の住む現実世界を支配する力はありません。「身体」をもたない人工知能は、受け取った情報がリアルなのか、それとも捏造された「夢」な

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        • 2022年10月 自己宣伝

          • ★《続・読書余論》 小林幸雄著『図説イングランド海軍の歴史』2007年刊・ほか

            読むのに時間のかかる「大著」は数多くありますが、これもすごい。いったいこれを書くのにはどれほど手間がかかっただろうかと思います。  日本帝国には「海軍省」がありました。が、帝国海軍が手本にした英国には、海軍省なんてものはなかった。  全地球的に艦隊を動かす軍政・軍令機構は、とうぜんながら、少数のすぐれた計画者が理想主義的に創設できたものとは違っていたのです。ましてその国が、歴史の先頭ランナーであったなら……。 英海軍に「階級」が無かった時代から説き起こし、パクス・ブリタニカ

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            ★《続・読書余論》 ブリチェット著『アメリカ憲法入門』1972年刊・ほか

            こんかいの《続・読書余論》は、なぜ国によって憲法が違うのか、を、考えてみたいと思います。  『アメリカ憲法入門』の他に、篠田英朗著『「国家主権」という思想 ――国際立憲主義への軌跡』も有益な参考書だと思いましたので摘録しました。 《旧・読書余論》からは、『マヌの法典』『比較文明社会論』『国際法上の自衛権・補訂版』『よくわかる核兵器の本』『戦後秘密警察の実態』『入営者必携 模範兵講習録 第4号』『大日本刀剣史 上巻』『小倉昌男の福祉革命 障害者「月給1万円」からの脱出』『二十

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            ★《続・読書余論》『日本は世界第5位の農業大国』と『永田鉄山 軍事戦略論集』・ほか

            こんかいの《続・読書余論》は、二本立てです。  『日本は世界第5位の農業大国』(2010初版)は、腐敗した農水省労組の利権のために当時の民主党政権が日本国の農産ポテンシャルを破壊し続け、一般消費世帯のエンゲル係数を先進国としてありえないほど高くして貧困層を苦しめている構図を抉り出して、余すところがありません。むかし読んだとき、よくぞこれを出版してくれたと絶賛したくなった名著です。今でもインパクトがあるでしょう。 日本経済はこれからエネルギー高騰の苦境に突入するでしょう。石油

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            ★《続・読書余論》清水隆雄著『アメリカン・ソルジャー ――米国社会と兵役制度史』2012年刊・ほか

            こんかいの《続・読書余論》は、「民兵」と「州兵」と「予備役」の違いを、法令調査のプロの人が歴史を遡って確認してくれている好資料です。  なんでそこをよく確認しておく必要があるのかというと、2022-2-24にプーチンが実行したような《Z侵略》から一般住民を防護するためには、「民兵」制度の柔軟な活用が不可欠になったと信じられるからです。とうぜん、台湾の人たちも研究しなくてはいけないでしょう。 あと、《徴兵制は日本では違憲である》という大胆な見解をわが国政府は表明しているのです

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            ★《続・読書余論》塚本誠著『ある情報将校の記録』昭和54年刊・ほか

            こんかいの《続・読書余論》は、頭の固くない憲兵将校として昭和前期の大陸、台湾、内地、ビルマをぐるりと見て回った人の、じつにめずらしい回想録、ならびに、日本博学倶楽部編『日本陸海軍・あの人の「意外な結末」』(PHP文庫書き下ろし)をご紹介しましょう。  著者の塚本氏は辻政信と陸士同期だったり、偶然のタイミングで終戦前夜の東京都内にいたりと、歴史の証人の資格は十分。貴重な話が連続します。台湾の保甲制度などについての豆知識も得られるでしょう。 ついでに《旧・読書余論》からは、『中

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            ★《続・読書余論》 児島襄著『悲劇の提督』昭和42年刊・ほか

            こんかいの《続・読書余論》は、終戦からだいぶ経ってから、大衆的な人気はほぼ無かった提督(栗田健男と南雲忠一)を敢えて取材している労作2冊をフューチャー。 『悲劇の提督』の前半は南雲(故人)、後半は栗田(まだ生きていた)を取り上げています。  あわせてご紹介しています豊田穰著『波まくらいくたびぞ――悲劇の提督・南雲忠一中将』のほうは、1冊まるごと南雲の評伝です。 なんといっても白眉は、海軍の話が得意な児島氏が、戦後ほとんど雑誌取材には応じていなかった栗田中将を3回訪問して詳

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            ★《続・読書余論》 『大同書』と『天主実儀』・ほか

            こんかいの《続・読書余論》は、清末のインテリ康有為がSF仕立てで著した中国宗教思想の奇書『大同書』と、明代にカトリックの布教にやってきたマテオ・リッチが漢文でシナ人からの反論に答えて行く『天主実儀』の2冊を、あたらしくとりあげてみます。  殊に『大同書』は、このごろでは全く誰も注目する人などいないだろうと思えますので、ますますタイムリーな刺激があるはず。私は、中共が滅亡したあとの中国がどうなるかのヒントを、ここから得ました。 オマケとしましては、《旧・読書余論》から、宗教や

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            ★《続・読書余論》伊藤隆編『国防と航空――国粋大衆党時代 笹川良一と東京裁判 別巻』2010年刊

            こんかいの《続・読書余論》は、戦前に私費で軍用飛行場を関西圏に建設して来るべき空襲を阻止しようとした笹川良一の史料集をとりあげましょう。 彼は昭和14年末に、山本五十六・海軍次官の口利きで「96陸攻」改造機に便乗してローマに飛び、ムッソリーニとは5分間面談しているのですが、ベルリンではヒトラーと面談もしておらず、けっきょく、三国同盟の促進とは、何の関係もない旅行であったことは、この史料集でハッキリします。 例によって、《旧・読書余論》から、航空関係のシブい摘録をあつめて附

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            ★《続・読書余論》大久保潤・篠原章 著『沖縄の不都合な真実』2015年刊・ほか

            こんかいの《続・読書余論》は、これ一冊読めば誰でも沖縄が嫌いになる、という凄い本です。 全国紙で唯一、沖縄県版をもっていた日経の記者さん(大久保氏)と経済学博士(篠原氏)が調べた数字の説得力が圧倒的。またこれを新書でリリースした新潮社もさすがというしかありません。 国境の最前線に点々と基地を配するのはあたりまえで、なかったら逆におそろしい話なのですが、当時は中共の脅威が未だ庶民には切迫して感じられなかったように回想されます。 《旧・読書余論》からも、関連した摘録をあつめ

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            ★《続・読書余論》中村秀樹著『日韓戦争』『日本の軍事力 自衛隊の本当の実力』『本当の潜水艦の戦い方』『これが潜水艦だ』・ほか

            こんかいの《続・読書余論》は、戦後の海上自衛隊の潜水艦のディープな世界を、元艦長が解説してくれている4冊をご紹介。ウクライナの次は台湾かもしれず、これを知らないではまずいでしょう。 例によって《旧・読書余論》から、関連ありそうな摘録も集めました。コンテンツには、『快弾餘響』『潜水記』『深海生物学への招待』『回教海事史』『海事史料叢書 第十二巻』『私の電車及汽車観』『帝国海軍機関史』『太平洋戦争と富岡定俊』『武田耕雲斎詳伝』『放送アンテナと電波伝播』『支那工業論』『航空部隊』

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            ★《続・読書余論》高田万亀子著『静かなる楯・米内光政 上・下』1990年刊・ほか

            こんかいの《続・読書余論》は、先の大戦の終結に尽力した筆頭人の、浩瀚な評伝です。  あまりにボリュームがあるので、ずっと「積んどく」状態でしたが、有益でした。 推薦人の大井篤が言うとおり、「いままで私も米内さんを取り扱った著述を幾つか読んだが」「これが断然いちばんだ」。 おそろしい発見があります。著者は指摘してはいないのですが、これを読了したら、伏見宮博恭[ひろやす]王(三国同盟前まで9年間も海軍軍令部総長)が、三国同盟を推進し、日米戦争を不可避にしたキーパーソンで、さら

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            ★《続・読書余論》山川 理 著『サツマイモの世界 世界のサツマイモ』2017年刊・ほか

            こんかいの《続・読書余論》は、地球的な食糧のサプライチェーンが、ウクライナ戦争を景気にこれから大きく攪乱される可能性を予見して、農業研究センターを定年まで勤めた、さつまいも一筋の専門家が書いた提言に、耳を傾けようと思います。  本書では、食糧のみならず石油までもが輸入できなくなり、かつまた、関東地方の畑が放射能汚染で使えなくなったという最悪ケースにおいても、甘藷の苗の緊急作付けによって、日本人は餓死しないで済む(栄養バランス上も特に問題が無い)――という明るい計算が、詳しく解

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