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こんな舞台を観てきた(2022年10~12月)

2022年の観劇記録。10~12月編。


その他の観劇記録はこちら。

天の敵

飲血(いんけつ)という造語のエグさよ…。

冒頭の料理番組のシーンで、実際に調理して、いい匂いを劇場中に漂わせた後に、人の血を飲むというグロめの物語を展開するセンスが狂っているなと思った。(でも、好き)

6月の関数ドミノが色々なものを削ぎ落としたシンプルなセットだったのに対して、こちらはかなり作り込んだセットだったのが印象的だった。

前川さんのツイートによると、本物の乾物を置いていたりしたらしい。

ガラスの動物園

ミュージカルの来日公演は何本か見たことはあるものの、お芝居の来日公演は初めての体験。

2021年に観劇した東宝の上村演出と、随分と異なる印象を受けた。
イヴォ演出は、セットはかなり抽象的だし、ローラの障がいは心的なものという印象を受けたし、ダンスシーンは超アクロバティックだし、色々と刺激的。
これが正統派かと聞かれると、おそらく違うのだろうけど、演出ってすごいなと陳腐な感想しか出てこないくらい衝撃を受けた。

ナショナル・シアター・ライブでも割と面白い解釈や演出も観るけれど、やはり生で観る衝撃はすごいなと改めて実感。

東宝版と2パターン観たことで、戯曲の理解も深まった気がした。

ジャージー・ボーイズ

世間では評判がいいことは重々承知だけれど、やはり演出が合わないなと今回改めて実感してしまった。
オープニングの「これからフォー・シーズンズの映画を撮影しますよー」という劇中劇感とか、映像を中途半端に差し込む感じが、どうしても苦手かも…。
もっとシンプルに演出しても成立する気がどうしてもしてしまう。

あと、刑務所に入ったりもするグループの話なので、基本的に素行は良くないし、「”December, 1963”のシーンとかは、ホモソーシャルなよくないノリが全開だよな」とか改めて思ってしまった。
そのエピソードを超えて、登場人物と分かち合える価値観や物語を、私自身が見出せていないのかもしれない。
(例えば、ハムレットなんか17世紀に書かれたデンマークの王子の話で、現代を生きる私と直接の接点はないけど、その思想や精神性に共感したり反発したりするわけで…)

これまでシングルキャストだったフランキー・ヴァリ役が今回からWキャストになったことで、あっきーがこれまで以上に伸び伸びと歌っていたのは、すごくよかった。

美女と野獣

今回から新演出になった劇団四季の美女と野獣。
旧演出を一度しか観ていないこともあってか、新演出も比較的すんなりと受け入れられた。(図書館のセットはあまりにも簡素な気はするけれど。)

五所さんは「サウンド・オブ・ミュージック」のリーズル役のイメージが強くて(10年くらい前の話だけど)、今回ベル役としてセンターで歌って踊っている姿を見て、謎に感慨深かった。
清水さんは「愛せぬならば」のロングトーンをこれでもかというほど伸ばしていて好印象。

この日はシステムトラブルで、ガストンの酒場のシーンの前で一時中断。
おそらくだけれど、セット転換がシステムの不具合か何かでうまくいかなかった感じ。一度、場内が明るくなって「再開までお待ちください」という弥生さんのアナウンス。10~15分後に、もう一度酒場のシーンから再開して、その後は何事もなく終演。
四季の舞台は長く観ているけれど、こんなことは初めてだったので、結構びっくり。開幕して間もないこともあってのハプニングだったのかな。

2022/10/30のキャスト

欲望という名の電車

ガラスの動物園に引き続き、テネシー・ウィリアムズの作品を観劇。
この作品を観るのも、文学座の舞台を観るのも初めて。

辛い話なんだけれども、ついつい引き込まれるような魅力のある作品だなと思った。ブランチの演じ方で結構、作品のイメージが変わってきそう。

助川さん演じるミッチから、優柔不断などうしようもなさが、そこはかとなく伝わってきて役にピッタリだと思った。

トークショーで「テネシー・ウィリアムズが自分自身をブランチに投影している」という話があってびっくり。「ガラスの動物園」のローラ同様、お姉さんをイメージしているかと思っていたが、そうではないらしい。

THE PARTY in PARCO劇場

PARCOのミュージカルコンサートっぽい謎企画。

伊礼さんが次回出演する「キングアーサー」のナンバーを歌っていて、これがロック調でかっこよかった。

咲妃さんが天然みたいな話はどこかでちらっと聞いたことがあったけれど、実際にかなりホワホワしたトークをされていて、結構ツボだった笑

私の一ヶ月

あんまりよくわからなかったというのが正直なところ。

舞台を3区画に分けて、同時並行で物語を展開するというコンセプトが先行するあまり、どういう物語を伝えたかったのかが伝わりにくかったか。

ラストシーンで「私の一ヶ月」という作文のようなものを大学生の娘が読み上げ、それを母が聞いているのだが、「授業参観かっ」と脳内でツッコミを入れてしまった。

歌わせたい男たち

学校の式典での国歌斉唱をめぐる物語。

そういえば、最近は不起立に関するニュースとかあまり見なくなった気がする。初演時(2005年)には、結構ホットなテーマだったのだろうか。
学校をテーマにした話だと、モンスターペアレントとかブラック校則とかの方が現代性があるかも、とか思ったり。

役者さんは5人ともナチュラルな演技で素敵だった。

オードリーの1Hネタライブ

リトルトゥース(『オードリーのオールナイトニッポン』のリスナーのこと)として、いつかは生で見たいと思っていたオードリー。

シアター1010での公演に運よく当たったので、初めて生のオードリーを見てきた。
普段の演劇と客層が違って、10代後半から30代くらいの男性が多いのが新鮮だった。お笑いはラジオを聴いて楽しむことが多いけれど、やっぱりライブもいいなと実感。

ネタの感想は投稿厳禁ということなので、割愛。

昼の回の出演者

ショウ・マスト・ゴー・オン

三谷さんが劇団時代に書いた作品の再演。

ドタバタコメディという感じで、劇場は終始笑いに包まれていた。
コメディだけれど、しっかりと伏線が張られており、物語の後半できっちり回収されていくので、よく練られた戯曲だなと笑いながら感動したりしていた。

観劇した回では、浅野和之さんの代役で三谷さん自身が出演されていた。土曜のソワレだったので、「このあとTBSの報道番組に出るんだな」とか雑念が頭をよぎってしまったが、本人は至って真剣に代役を務められていた。

夜明けの寄り鯨

結構辛口の意見をネットで見たけれども、これはなかなか渋かった。

捕鯨もアウティングも丁寧に描かねばならないテーマなのに、どちらも粗雑に扱っているなと思ってしまった。
捕鯨に関しては、途中からあまり話題にも上がらないし…。

一緒に観劇した友人によると、現地の方言はちゃんと表現されていたらしい。
(私も関西出身だけれど、少しだけ離れているので、耳馴染みがない言葉遣いだった)

しびれ雲

諸々の事情で、本多劇場はなく、りゅーとぴあで観劇。
りゅーとぴあの劇場は、900弱くらいのキャパで、クリエやPARCOをもう一回り大きくした感じ。舞台と客席が親密な感じがして、いい劇場だなと思った。

ケラさんの作品はよくナンセンスと評されるけれど、今回観劇してそれが少し腹落ちした気がした。
例えば、作中で「冬なのにセミが鳴いている」というシーンがあり、「なんで冬なのにセミが鳴いてるんだ」という台詞で笑いが起きる。
これが吉本新喜劇みたいなコテコテな笑いだと、「セミの鳴き声がする」→「どうした、どうしたとみんなで騒ぐ」→「着メロがセミの鳴き声だった」までやって、笑いが起きる気がする。
フリとオチみたいな笑いではなく、シュールな出来事が起きること自体で笑いを起こすのがナンセンスの一種なのかなとか考えた。
(そういえば、芳雄さん演じる主人公は記憶喪失なのだが、どうして記憶喪失なのかは解明されないし、記憶が蘇ることもない。これも一種の不条理・ナンセンス的な要素なのか?)


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