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春のパンまつり2020


「1年前のあんた、こんなことしてたんやで」

過去に撮った写真を振り返らせてくれるGoogle Photoの機能を、私は地味に楽しみにしている。

1年前の写真を見ながら、初めての緊急事態宣言が出た春の東京を思い返した。

突然の完全リモートワーク。全く電車に乗らず、人に会えず、近所への買い出しも恐る恐るだったそんな日々の癒しは、日本や外国の美味しいパンの記事や写真を見ることだった。

夜な夜なWebページやInstagramを徘徊し、うっとりパンの写真を眺めながら「状況が落ち着いたら食べに行くぞ・・・!」とモチベーションを保っていた。

そのうち、オンラインショップを開いているお店が意外とあることに気が付いた。覗いてみると、単品のパンを選ぶというより、「パンの詰め合わせ(3000円/5000円)」といった福袋スタイルが多いようだった。

普段の私だったら「2人暮らしなのだから、3000円分も食べられないんじゃないか」や「送料かかるなら、やめようかな」といった考えが、頼んでみたい気持ちを抑えるところだ。

しかし、あの春のストレスを抱えた私は一味違った。

食べきれないなら冷凍すれば良いのだ。1000円ほどの送料よりも、私の心に癒しと平穏が訪れることのほうが大切じゃない!?という野党の声が、与党保守層に打ち勝った。勢いそのままに、えいやーと注文したのが私の「通パン(パンの通信販売)」デビューである。かくして、毎週のように全国から宝箱が届くようになった。

その中のいくつかを、写真と記憶を辿りながら、記録しておこうと思います。(1年前のことなので、今とは取り扱いが違うかもしれません)


Bricolage bread & co. /六本木

「bricolage おまかせセット3000」
人生初通パンは、東京で暮らしつつも六本木のお店。おしゃれでおいしそうなパンがずっと気になっていたけれど行ったことはなく、「逆に今が注文するタイミングなのでは!?」と謎の理論でポチった。

注文したメールを見返すと、おまかせセットながら希望を伝えることができたようで、「食事やお酒(ワイン)に合うパンが食べたい」とリクエストしていた。希望を汲み取ってくれたのか、レーズンやくるみがぎっしり入ったフリュイや、ハリーポッターの杖のようないぶりがっこのバトンは、ワインにばっちり合い、週末の夜を幸せにしてくれた。

それから、パン・オ・ショコラのチョコレートがどっしり濃厚で、満足感がとても高かったのも覚えている。

「どんなパンが入っているのかな」「クール便で届いたパンは美味しく食べられるだろうか」と、どきどきしながら注文した初通パンは、大満足の大成功だった。これに味をしめ、更に注文してしまうのであった。


Kanel bread/栃木

「Baker's Choice 北見の選ぶパンセット」
Kanel breadのパンセットは、オンラインショップを見ているだけでワクワクしてくる。「食いしん坊の3時のパンセット」とか名前もかわいいし、コンセプトごとにセットがあるというのは、食べるシーンをつい妄想してしまう。

Baker's Choiceは、その名の通り、お店で働くスタッフの方が選んだセット。いくつかある中、この「北見さんチョイス」を頼んだ理由は、「会津娘の晩酌パンセット」という言葉に惹かれたから。パンでお酒を飲みたい私にぴったりだ!と思ったのだ。Webページには可愛いイラストとともに、お薦めの食べ方や合わせるお酒も載っていて、見ているだけで頭の中で涎が止まらなかった。

実際に、北見さんお薦めの組み合わせである、「ベルリンの田舎パン」に合わせて、福島の郷土料理である「いかにんじん」を作ったのをはじめ、届いたパン×料理×お酒を楽しんだ。料理を通して、遠い場所にも思いを馳せることだってできる。知らない料理や、お薦めの組み合わせを試すことはとても楽しい。


パンストック/福岡

「通パン(通常便)」
このお店には、一度行ったことがある気がする。
福岡旅行中、たまたま通りかかって覗いた店内は、静かなライティングに照らされた木のカウンターにずらっとパンが並んでいた。たしか、そこでパンを買い、近くの九州大学キャンパスのベンチで食べたのだった。夏休みのキャンパスは、暑くて人がまばらだったことは覚えているけれど、何のパンを食べたのかは思い出せない。

メール抽選申込を経て、福岡からやってきたのは14種類のパンたち。

カカオ・ド・ショコラはむちっとした生地に、ビターなチョコがたっぷり。断面を持つと、手の熱でチョコが溶けて指が黒くなった記憶がある。

噛むたびジューシーなくるみとレーズンのルヴァン(たぶん)、パンドミは小さめサイズでもちもち、ハニートーストは心をほぐす幸せの甘さだった。

私は食事に合うようなハード系のパンが好きで、おやつのシーンに食べるような甘めのパンはあまり食べてこなかった。そんな普段選ばないパンも、「意外と食事に合う!」「好みの味だ!」など、発見があって面白かった。普段自分が選ばないようなパンに出会えるのも、お任せ便の醍醐味かもしれない。

通パンは、全国の美味しいパンを届けてくれるだけではなかった。

注文してからは、受け取りを心待ちに日々の仕事や家事を粛々とこなした。パンが届くと福袋のような開封のどきどきを楽しんだ。そして、「このパンに合う料理はなんだろう」「このお酒を合わせてみよう」とメニューをあれこれ巡らせた。実際手に取り口に運ぶ瞬間まで、ときめきとワクワクはずっと続いた。通パンは、濁りそうになる私の生活に彩りと刺激と活力を与えてくれた。

とはいえ、お店でトング片手にパンを選んだり、紙袋を抱えてほくほくしながら家に帰るのも、また楽しいから。

気ままにパン屋を巡ることのできる日々が、はやく訪れますように。

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