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焼肉では満たされない心

先日、いきなり有給を取れた日があった。
最近、Netflixで見た「有村架純・竹内涼真の撮休」という短編ドラマがとても面白かったこともあって、他人の休みの過ごし方に興味を持つようになった。世の中の社会人は突然訪れた休みの日をどう過ごしているのだろうか?

これまで私の有給はほぼ旅行のために使われてきた。しかし、コロナが流行り出してから海外は愚か国内旅行にも気軽に行けなくなり、有給の消化率はグンと下がった。だからその日は余ってきた有給を消化するため、予定はないけど休むという贅沢な使い方をしてみたのだ。

でも貧乏性なのか何もしないというのは1日を無駄にしているような気がしたので、せっかくなら『やろうと思っていたけどやってなかったこと』に挑戦しようと思った。それが一人焼肉だった。なんとなく大人の贅沢なイメージがあったから。

外食に限らず、私は元々1人でいることがあまり好きではない。もちろん1人になりたい時もあるが、一人暮らしを始めて前よりもずっと人と過ごす時間の楽しさを痛感しているくらいだ。

とはいえ2ヶ月以上外食をしていなかったこと、無性に焼肉が食べたいという衝動にかられたこと、Go to eatポイントが3,000円分余っていたことが私の背中を押した。グルメサイトで「都内/ランチ/焼肉/3,000円以内/ポイント利用可能」で絞り、何となく良さげに見えた表参道の焼肉屋を予約した。平日のお昼から個室で焼肉のコースを食べるという行為は人生初の試みである。

いざ店に入って奥にある個室に案内されると4人掛けのテーブルに網が1つ埋め込まれており、1席だけセットが用意されていた。店員さんは特に不思議がる様子もなく、黙々とコース料理を提供してくれた。

個室で他人の目もない空間、ずっと食べたかった焼肉、家では作れない美味しさ。何も不自由などないどころかむしろ贅沢すぎる時間のはずが全っ然楽しくない、驚くほど楽しくない。肉が焼ける時のジュー…パチパチ…という音と自分の咀嚼音だけが部屋に響き渡っていた。

自分の意思で来たのにその空気感に耐えられなくなった挙句、友人に実況中継LINEをしながら食べ進めて1時間足らずで店を後にした。ポイントを独り占めせず、1,500円ずつ誰かと分ければ良かったと後悔した。私にとっての1人焼肉は食欲以外何も満たされないという事実だけが残り、求めていたのは「誰かと囲みながら食べる空間」だったと気付いてしまった。私にはまだ早かったのか、はたまた向いていないのかはさておき1人焼肉はこれが最初で最後になるだろう。

その反動もあってか次の日に友人とホームパーティをして食べた時間が尋常じゃなく美味しくて楽しく感じた。コロナで外食にも行き辛く、大勢での飲み会もできない世の中になってしまったが、食を囲んで生まれるコミュニケーションだけは今後も絶対に無くならないでほしいと強く感じた。

1日でも早く元の生活が戻りますように。そしてまた私と一緒に1つの網を囲んで焼肉を食べませんか。

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