95○　2/3 書き下ろし「解凍」

「解凍」

ミナギルエネルギー
充電が満たされたままの
疲れ知らずの若きホース
運動場を駆けて息が切れても
楽しいことばかりの世と
信じて疑いもなかったなら
電力が底をつくまで
見ていたかった
それでよかった
いつからか家の中にあった
刺繍の凝った万華鏡を
寝転びながら見ていた理由
さらさらと音をたてて
崩れては消え
新しい何かが出来ていく
途切れぬメタモルフォーゼ
僕はその隙間に
本当の僕を忍ばせて
微々たる変化が起きないかと
願っていたっけ
六面体の奥深くに閉じ込めたものを
今になって思い出す
錆び付き使い回したオイルが
最後の引き金を引いている
この状況において

＊＊＊

黄赤青(きせきせい)