112○　2/20 書き下ろし「回顧」

「回顧」

成長と共に見える景色は昇っていく。届かなかった本棚、見えなかった建物。少しずつ可能にしていく日々に無言の歓喜を上げる。手を引かれた覚束ない足取りの横に遥か彼方の高い壁があった。その人はいつも笑顔で逞しい。ひょいと持ち上げられ抱えられて見る光景は第2の世界に来た不思議。大陸みたいな背中からよじ登り、首もと目指してたどり着いた景色には第3の世界を実感した。自分の足で歩く2.5の世界や我が子と話す際の1.5の世界を知ることになるとは、生きている価値に他ならない。あの頃に乗った龍の背中の感触は神経にまで染み込んでいる。決して奪えない結晶。

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黄赤青(きせきせい)