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写真展の作品に込めた、意図。

はじめに

💡この記事はこんな人におすすめ💡
 ・写真展に興味がある
 ・カメラが好き
 ・写真を撮るのが好き
 ・写真を見るのが好き

先日(2024年1月19日~21日)、『写真展トライアルVol4』に出展しました。写真展自体は、これで6回目。グループ展なので、今回は私の他にも20名以上の出展者の方がいました。

展示会中は在廊することが多く、私の作品の意図を聞いてくださる方が複数名いらっしゃいます。聞いてくださってありがとうございます。

(ちなみに「在廊」というのは、展示会の場に出展者が実際にいるということです。)

今回の展示では「うわー!そう意味だったのか、これは解説欲しい!あると絶対にいい!」という意見が多かったので、noteにまとめてみました。ぜひ最後までお付き合いください。


2024年トライアルVol4 展示作品

展示作品

まずは、実際の展示作品を一目見てください。

展示会中の作品。
フジフイルムのプリントサービスを使用して作成。B2サイズです。
実際の作品データ。

展示作品の解説

今回の展示のテーマは【回帰】でした。私にとって「いつかこのテーマで撮りたい」と思っていたものの一つが故郷

私の故郷は、三重県熊野市の山間部。「限界集落」「陸の孤島」なんて呼ばれるほどの田舎です。公共のバスは一日3本しかなく、電車なんて…。という場所です。母校はもう廃校(閉校という形にしてある)。そんな場所で育ちました。

自然豊かで、春は満開の桜を独り占め、夏には家の前の川で毎日泳ぎ、秋には山菜や栗を動物たちより早く取りに行く戦いが始まり、冬には霜の降りた草にガラケーのライトを当ててキラキラ光る様子を見て楽しんだり。

そんな素敵な【場所】です。

展示作品では【場所と人】【自分の人生の対比】2つをを表しています。

1つ目:【場所と人】

そうした田舎である場所には、自然もあれば人もいる。私は故郷のことを「嫌いでもあり、好きでもある場所」と思っています。

嫌いな面
「人のうわさが目に見えるほど広がる。人の目が怖い」
「先住民以外は排他されがちで、私は祖父の代から移り住んできた」
「自然災害が怖い、台風で川が決壊し、村中の橋が崩壊した」

好きな面
「耳で自然の音を聴いて安らぐ。川の音、虫の声、草木の重なる音、」
「助け合いで救われる。人との関係性がいい。近所のお爺さんの家に入りびたり、一緒に遊んだり、おやつをもらったり、相談に乗ってもらったり。大人が周りで見守ってくれている」

「嫌いな場所であり、好きな場所でもある」。田舎という場所には自然もあれば人もいる。そうした背景を重ね合わせて作品を見てみてください。
そして、人にはそれぞれ誰にでも「故郷」があるはずです。自分の故郷と重ね合わせながらも見てもらえたらと思います

展示作品をじっくり見てもらったら2つの見方がわかると思います。
1つは、中央から左右に分けて観る見方です。

左右に分けてみると、

左側は、

「煙(うわさ話)」「目で見える」=「目で見えるほどのうわさ話」

「自然に火が付く」「目で見ているだけ」=「災害」「受動的」=「どうしようもできない自然災害」

という負のイメージです。

右側は、

「自然」「耳で聞こえる」=「安らぎをくれる自然の音」。

「耳で聞こえる」「誰かが持っている草が上を向いている」「空が見える」=「誰かが見守ってくれている感覚がある」。

という良いイメージです。

負のイメージと良いイメージを表現するために、左右で色を分けてみました。左側は彩度が低く、右側は相対的彩度が高い。

そして故郷をイメージしているので、全体的な彩度も低めに設定しました。

2つ目:【自分の人生との対比】

2つ目は左下から右上に向かう見方です。
この見方は【自分の人生との対比】を表しています。
田舎に住んでいた自分が、最終的には右上の空に向かって、「田舎の外」に出た。というのを表しています。【回帰】がテーマなので、「私が田舎から出てきた過去を表そう」と思って「地面からスタートして空で終わる」にしました。

そして、今回の被写体(モデル)にも【回帰】の意味が込めらています。展示作品に移っている女性は、私の「妹」です。

私は高校卒業後、大学進学のために都会へ
妹は高校卒業後も田舎に残り続けています
2歳違いの妹で、見た目もそっくり。人生の分岐点である18歳には、都会か田舎か選択しなければなりません。田舎なので、実家から通える範囲にある大学もありません。最寄りの大学には、公共交通機関を使って5時間以上かかります。必然的に進学を選ぶと、田舎を出ることになります。

回帰を、自分の人生の選択肢と妹を比較して表現しています。

撮影前に取り組んだこと

撮影前から、いろんな意図を組み合わせた写真にしようと、作品づくりにかなり力を入れました。撮影前に、どのような作品にするか前もって考え、A3の紙にアイデアを書きなぐり、スマホのノートアプリでまとめようと試行錯誤したり。妹と打ち合わせをして撮影に臨みました。

スマホアプリに書きなぐった図
右上には4分割する案を描いている

それぞれの元の写真

近所の陶芸家爺さんの畑にて。
いつでも迎えてくれる田舎の人付き合いは今でも好き。帰ったら必ず寄る。
家の前の川にて。静かで人の気配は全くない。
ただぼーっと毎日川の流れを眺めていた。音が心地いい。
悩んだ時には必ずここにきていた学生時代。
田んぼの道を歌いながら歩いたり、
独り言をつぶやいてみたり、
ただ歩いて考え事をしたり。
誰もいない。周りを見れば山と田んぼ。
自由に雑草を抜いて手で振って歩いたり。

解説のまとめ

自分の回帰を表現するだけでなく、見た人が「回帰」というテーマをみて自身の故郷や人生の回帰も一緒に想像できたらいいなと思って作りました。

以下、過去の出展作品になります。

過去の出展作品

写真展歴
2021年     大阪環状線ポートレート展
2022年3月  オレンジ堂写真展
2022年7月  写真展トライアルVor.2
2023年11月   温泉大好きさんの個展(特別枠)
2023年1月    写真展トライアルVor.3
2023年5月    写真展トライアル 番外編

展示した作品の一部

2021年 大阪環状線ポートレート展 展示作品↑

2022年3月 オレンジ堂写真展 掲載作品↑

2022年7月 写真展トライアルVor.2 展示作品

その他の掲載作品

2020年フォトテクニックデジタル11月号掲載作品↑

フォトブック

展示会では毎回、フォトブックも併せて置いています。過去作品のフォトブックや、今回の展示用のフォトブックになります。

特に過去作品の『おうち時間withコロナ』は毎回好評いただいています。
内容を簡単に説明すると、コロナ禍での「外に出れない・出たら悪い気がする…」という中での「おうち時間を楽しもう」「でも結局出たいよね」という作品です。「あー!そんな時があった!」と気持ちにさせてくれる一冊です。気になる方は、ぜひ次回の展示でご覧ください。

撮影機材

撮影機材は展示作品によって違います。
FUJIのX-pro3、X100V、SONYa7RⅣ、LeicaM10、GR3xなど。
ほとんどの作品は、35mmのレンズで撮影しています。

おわりに

作品に込める思いや意図は、こうして文章で表現すると、たくさんあります。しかし、「写真だけで」語れる表現力が必要だと毎回感じます。もっと表現力を高めて、自分も満足できて、見た人も思い耽られるような作品を作れるよう精進していきます。

今回参加した写真展

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