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民法改正「共有」のお話(10)

 前回は・・・
 
 相続協議が整うまでの相続財産は、(相続人による)共有物になります。(「遺産共有」と言います)

 そして現行の民法の相続方法(=共有解消方法に同じ)には・・・
 「現物分割(=相続財産を分けること)」と「代金分割(相続財産を売り払って代金を分けること)」の2つのルールしか規定されていない!・・・というお話をしました。

 民法が作られたのは、明治時代(明治29年/西暦1896年)・・・
 民法が創案された当時の日本は、一家の長男が(原則的に)家長を引き継ぎ・・・代々の「家」を守り続ける!のがスタンダードな世の中でした。

 でも核家族化が進んだ今は「家長(長男)が全ての財産を相続する」と言う訳にはいかず・・・
 民法に規定された「現物分割(=相続財産を分割して相続する方法)」と「代金分割(相続財産を処分した代金を相続する方法)」だけでは、相続協議が整わないケースも生じました。(例:亡くなった親の家は残したいけど・・・相続財産が他にない等)

 そこで登場したのが「価格賠償(=相続財産を単独で相続した人が他の相続人に金銭を支払って相続する方法)」でした・・・

 でも「価格賠償」は、いまでこそ「判例」として確立し有効な相続協議の手段になっていますが、元々民法に規定のない方法なので・・・黎明期は裁判の判決に依らないと実施できませんでした。(=手間も時間もお金もタップリかかりそう・・・)

 今回は・・・「改正民法」(2023年4月1日施行予定)で共有解消のルールがどのように規定されているのか?見ていきたいと思います。

本シリーズのブログはこちら・・・
   民法改正「共有」のお話(1)
   「
民法改正「共有」のお話(2)
   「
民法改正「共有」のお話(3)
   「
民法改正「共有」のお話(4)
   「
民法改正「共有」のお話(5)
   「
民法改正「共有」のお話(6)
   「
民法改正「共有」のお話(7)
   「
民法改正「共有」のお話(8)
   「
民法改正「共有」のお話(9)

改正民法では・・・

「賠償分割」が明文化!

 改正民法では、共有関係の円滑な解消を実現するため・・・これまで最高裁が認めてきた「賠償分割」や、これまでの「判例」にある「事前協議」や「給付命令」の取扱いが明文化(是認)されます。

「事前協議」とは?
 字のとおり・・・(相続が実行される前に)相続人が話し合って合意することです。(裁判所で行われる「和解」も含むのかなあ?)

「給付命令」とは?
 ある意味・・・強制的な紛争解決制度と言えるかな?
 相続人同士が原告と被告に分かれて裁判したのに被告側が判決の内容に応じない(同意しない)時・・・原告側は、裁判所や執行官(執行機関)に強制執行の申立てをすることができるルールがあります。(被告側にも判決後の一定期限内に異議申し立てができるけど、ややこしいので・・・今回は触れません)
 そして、この申し立てが認められると・・・(被告側相続人の意思に関係なく国家権力によって)原告側相続人は判決内容を実現してもらえます。

 この改正により、民法の条文(本文)にこうした手続きが明確に規定され、(イメージ的に)暗黙の了解だったルール(=判例)がきちんと規定された!と思います。

現行民法ではお手上げ~なケース

 次に、相続と共有が絡んだ・・・以下のケース(例)で「共有関係の解消」をどうすれば良いのか?考えていきましょう!

 所有権の3つの権利(=使用・収益・処分)を行使したり、(義務として)管理をスムーズに行ったり・・・を考えると、「共有関係」はできる限り解消する方が良いと思います。

 でも以下の状況では、処分に必要な「全員合意」が得られそうにありません。(でも同じようなケースで八方ふさがり状態・・・は、ありそう)
 じゃあ、どうすんねん!!

 それは次回で・・・考えてみたいと思います。  (つづく

① とある別荘を(友人同士の)AさんとBさんが共有している
② AさんとBさんの共有持ち分は、50:50
③ そんな中、Bさんが死亡した
④ Bさんの法定相続人はCさんとDさんの二人
⑤ Cさんは不要な(お荷物の)別荘を早く処分したい
⑥ でもDさんは行方不明・・・
⑦ Aさんは(別荘の)Bさんの共有持ち分を買い取りたい

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