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民法改正「共有」のお話(1)

 メディアの話題で「民法が改正されています。2022年(令和4年)4月1日より成人年齢が18歳に引き下げられました」というニュースは記憶に新しいと思います。民法は明治時代に作られた法律で、現代社会とミスマッチしている部分もあるので・・・色々な改正が行われました。

 そんな中、実に地味なのですが・・・「共有」(=同じ物を二人以上で共同所有すること)に関する改正も2023年(令和5年)4月1日に施行されます。今回は、この「共有」に関する改正をテーマにしてお話したいと思います。

 「共有」に関するルールは、マンションに関わるだけでなく社会生活の中で知っておいて損をしない知識だと思いますので・・・お付き合いください。

 でも、その前に・・・このテーマを選んだ動機をお話します。

改正民法の「共有」を取り上げた背景

 それは・・・私がAマンション管理組合(約170戸)のサポートを行っている中で「共有」されている分譲駐車場について、コメントをする必要があったからです。

Aマンションの機械式駐車場設備

 Aマンションが竣工した1980年代は・・・新築マンション等の敷地や建物内に設置しなければならない駐車場(=これを「附置義務駐車場」といいます)台数の住戸数割合がピークを迎えていました。
 当時の京都市は・・・住戸数の60%以上の駐車場を確保しなければならなかったはずです。

 そんな背景から・・・貴重な敷地面積を奪う?駐車場を効率的に配置するため・・・マンションにも機械式駐車場が普及していきました。

 当然にAマンションにも「機械式(二段式)駐車設備」が約100台設置されています。(冒頭の写真は、私が撮影したAマンションの「機械式駐車場設備」です)

 ここまでなら他のマンションで良くあるパターンなのですが・・・

機械式駐車場設備が専有部分??

 何と!Aマンションでは「機械式駐車場設備」が(各住戸と同じように部屋番号が付いて・・・)専有部分として登記!されています。
 これは・・・ホント信じられない登記なのです。

マンションの専有部分とは?
 もっぱらが所有する部分 ➡ 所有権の目的となる部分
 専有部分になるには①構造上の独立性&②利用上の独立性が必要

マンションの共用部分とは?
 共に用い・使用する部分 ➡ 所有権の目的とはならない部分
 マンションの専有部分以外は、全て共用部分
 (所有者全員で原則:専有部分の面積率=持ち分比率で所有)

 そもそもAマンションに設置されている「機械式駐車場設備」は(共用部分の付属設備にあたるので)所有権の対象となるマンションの専有部分として登記できないはずです。(当然、所有権も登記できないはず・・・)

 Aマンションの「機械式駐車場設備」は、下記の②「利用上の独立性」は確保されていますが、①「構造上の独立性」が確保されているとは言えないからです。(例えば「メリーゴーランド式」の機械式駐車場設備なら、①と②が確保されて専有部分になれると思うけど・・・パレットが上下する「二段式」は無理です)

①構造上の独立性とは?
壁、天井、床等によって他の部分と遮断されていること。
(周囲の全てが完全に遮断されていなくても隔壁や階層等によって他の部分と遮断され、その範囲が明確であればOK!)

②利用上の独立性とは?
独立して住居、店舗、事務所、倉庫等の用途に供されていること。(そのため直接又は共用部分を通じて外部と往来できる必要あり)

 でもAマンションの登記を確認すると・・・
 「構造上の独立性」が確保さていない「機械式駐車場設備」が専有部分として登記されいます。(もちろん他の住戸と同様に・・・共用部分の持ち分割合も書いてある)
 そして、パレット(=駐車車両が載る部分)数のAマンションの区分所有者に「共有」されています。

 新築販売時、デベロッパーが「機械式駐車場設備」のパレットをマンション購入者にオプションで販売したようですね。

 デベロッパーは、ホント「商魂たくましい」というか何というか・・・機械式駐車場設備を「ゴリ押し!」で(所有権の目的となる)専有部分として登記申請したのでしょう。

当時の登記簿は「ブックシステム」

 「ゴリ押し!」ができた背景には、当時の登記所では「専有部分の要件」(=①「構造上の独立性」+②「利用上の独立性」の確保)が登記官に周知徹底されていなかったこともあると思いますが、Aマンションが登記された当時は、登記システムがコンピューター・システム化される以前の「ブックシステム」だった!という背景があるかも?と思いました。

 「ブックシステム」とは、要するに紙に手書きで作成された(書かれた)登記簿システムのことを指します。
 手書きの時代でも・・・登記所で二重三重のチェックを行って正しい登記が行われていたと思いますが、現在のようにデジタルデータをチェックする場合と較べると・・・明らかにチェックが甘いのでは?と思うからです。

 ちなみに、明治時代から「大福帳」みたいな登記簿台帳が使われていたそうです。
 大福帳式では登記簿台帳への変更追記が難しく、登記記載事項の正確性も問題があったのでしょう・・・1950年代からはバインダー式に変更されましたが、いずれにしも手書きの「ブックシステム」では登記所の事務処理能力にも限界があります。

 そんな中、登記事務の大量・複雑化に対応するため、1988年に登記事務のコンピュータ・システム化(=電磁的データで記録)を行う法改正が行われ、徐々に全国の法務局で登記事務のコンピュータ・システム化が行われていきました。(現在では、一部のデータを除き・・・日本全国全ての登記記録は電磁データ化されてます)

今日はここまで!

 デベロッパーの思惑通りに(でも、無理やりに)分譲された機械式駐車場設備は・・・築30年を超える現在のAマンションの中で、大きな問題が顕著化しつつあります。
 無理をすると、その歪みが何所かに影響を及ぼす・・・という感じでしょうか?
 機械式駐車場設備の劣化が著しくなったのに・・・何も手当てができない状態が続いているからです。

 次回は、Aマンションで行われている分譲機械式駐車場の保守管理方法についてお話します。  (つづく

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