見出し画像

民法改正「共有」のお話(3)

 Aマンションの機械式駐車場設備はボロボロ状態。
 でも、大きな修繕ができません。
 お金(修繕費)は、共有して所有している約100名の共有者から一時金で集めれば良いのですが、それができないからです。
 その最大の理由は「共有者間の合意形成が取れない」から・・・

 今回は、管理を行なうための「共有者間の合意形成」について掘り下げていきたいと思います。

本シリーズのブログはこちら・・・
   民法改正「共有」のお話(1)
   民法改正「共有」のお話(2)

「共有」とは?

 何か難しい話に聞こえるかもしれませんが、できる限り分かりやすくお伝えしますので、お付き合いください。

 「共有」とは、何らかのモノの「所有権」を・・・複数の人で共同所有していることを言います。
 その割合(=「持ち分」といいます)は、他に取り決め(ルール)がない限り・・・基本的に共有者全員同じだとされています。

その前に・・・「所有権」とは?

 すごくザックリした話になりますが・・・「所有権」とは、具体的には以下3つの「権利(物権)」を排他的に(独占的に)有することを言います。

  ① 自由に「使用」できる権利
  ② 自由に「収益」を得ることができる権利
  ③ 自由に「売買」できる権利


 細かな話をすると・・・その他「担保にできる権利」等もあります。
 また、「自由に!」といっても・・・「地上権」や「小作権」または「法律や条例等」によって、(権利行使に)制限がかかることもあります。

 「共有」している場合は、全て「自由に!」という訳には行きませんが、他の共有者の権利に影響を与えない(侵害しない)範囲であれば権利を行使できます。
 例えば、自分の持分の範囲内であれば「使用」も「収益」も「売買」もできます。

Aマンションの機械式駐車場設備は?

 Aマンションの専有部分として登記されている機械式駐車場設備は・・・100名の共有者が各々1/100の持ち分(割合)で「共有」し、各々に指定されたパレット(=駐車するスペース)を使用されています。
 各共有者は、パレットを(原則)自由に「使用」することができますし、他の人に賃貸して「収益」を得ることもできます。
 また自分の「持ち分」(=パレット)は、(原則)自由に「売買」することもできます。

「分譲機械式駐車場設備」の管理

 Aマンション機械式駐車場設備の最初の共有者は、主に以下のルールを承諾してデベロッパーから住戸のオプションとして購入されたようです。 

  1. 「使用」するパレットは○番とする

  2. 機械式駐車場設備の取り扱い説明書のとおり「使用」すること

  3. 電気使用料や保守点検費に充てるため、共益費として月額2,000円を(マンションの)管理費と共に引き落とすこと

  4. 管理組合の管理費口座に収納された共益費は、電気使用料を差し引いて別の口座(K銀行口座)にプールすること

  5. 保守点検はメーカーのM社に(別紙の管理仕様にて)委託し、実施すること(報酬は、K銀行口座より引き落とす)

  6. パレットを転売(=「売買」)する場合は、Aマンションの区分所有者に限ること

  7. パレットを他の人に賃貸する(=「収益」を得る)場合は、Aマンションの住民に限ること

 このまま何事もなかったら幸せなんだけど・・・時間が経つとナカナカそういう訳にも行きません。
 設備に限らず・・・「機械もの」は、時間が経つにつれ徐々に劣化が進行し・・・いきなり不具合が発覚するものだからです。

 こうした不具合が発生しないようにメンテナンスすることを「管理」といいます。

 正直なところ・・・これまで(築年数が30年を超えるAマンションの)機械式駐車場設備が充分な管理を行って来なかったのに大きな不具合が生じて来なかったのは奇跡的なことだと思えてきます。

えっ?メンテナンスしてるよね・・・

 ここまで読んで「メーカーにメンテナンスを依頼して管理してるのでは?」とお感じになった方もおられるかもしれません。

 機械式駐車場設備メーカーのM社が行っているメンテナンス(=管理)は、「保守」(注:説明は次回)というレベルなので、これだけでは足りません。

 M社が行っているメンテナンス(点検)内容は・・・
 3月に1回現地訪問し、チェーン等への注油を行いながら機械の具合を確認するだけです。
 簡単に言えば・・・「そろそろ塗装し直した方が良いです」とか「ここの部品を交換した方が良いです」とお知らせをしてくれるだけで、M社のメンテナンス契約には全面塗装や部品交換が含まれていません。

そもそも・・・管理の主体は誰?

 専有部分であるAマンションの機械式駐車場設備を管理するのは、(他の住戸と同様に)共有者(=所有者)になります。Aマンション管理組合ではありません。

 それなのに分譲時(当初)の取り決めには「機械式駐車場設備の管理団体」の設立は想定されていませんでした。
 K銀行口座の名義人がマンション管理組合の理事長であったり、M社からのメンテナンスレポート(保守点検の報告書)も管理組合に届いていたり・・・
 実質的な管理はマンション管理組合に丸投げされています。

「丸投げされた」といっても・・・

 マンション管理組合は、機械式駐車場設備の当事者ではないので何もできません。
 マンション管理組合が管理する範囲には(所有権の対象となる)専有部分は、含まれていないからです。

 M社からのメンテナンスレポートに「劣化が著しく早急な対処が必要!」とか「発錆が進行して所々穴が開いている。このまま放置するとパレットに駐車できなくなる」と毎回警告が書かれてあっても・・・為す術がありません。  (つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?