見出し画像

民法改正「共有」のお話(4)

Aマンションの機械式駐車場設備はボロボロ状態。
 でも、大きな修繕ができません。
 お金(修繕費)は、共有して所有している約100名の共有者から一時金で集めれば良いのですが、それができないからです。
 その最大の理由は「共有者間  の合意形成が取れない」から・・・

 今回は、管理を行なうための「共有者間の合意形成」について、2023年4月1日に施行される「改正民法」が使えるかも?というお話をしたいのですが・・・その前に「現行民法」では(それが)難しいかも?と思うことをお話したいと思います。

本シリーズのブログはこちら・・・
   民法改正「共有」のお話(1)
   民法改正「共有」のお話(2)
   民法改正「共有」のお話(3)

「共有物」管理の種類

 共有物の維持管理をする時・・・各々の共有者の考え方(=管理方法や費用の掛け方等)が異なります。
 コストを掛けてでも改良して管理した方が良いと考える共有者も居れば・・・できる限りコストを掛けないで(少々ぼろくなっても)維持管理した方が良いと考える共有者もおられるでしょう。

 ということで・・・共有者間の利害を調整する必要があるため、「民法」では「共有物」の「管理」についての原則的なルールが記載されています。
 具体的には・・・維持管理のレベルによって、以下3つの(共有者間の)合意方法が示されています。

①「保守」 共有物の現状を維持する(保って守る)ため行為
     (例)機械式駐車場設備の保守点検
  ➡ 合意レベル:単独で実施できる(民法 第252条 ただし書き)

②「管理」 (「変更」に至らない程度の)利用・改良する行為
    ※一般的な管理と分類するため「(狭義の)管理」という
     (例)機械式駐車場設備の大改修(大修繕)
  ➡合意レベル:共有者の過半合意(民法 第252条 本文)

③「変更」 共有物の形もしくは性質に変更を加える行為

     (例)機械式駐車場設備のリニューアル
  ➡合意レベル:共有者の全員合意(民法 第251条)

 上の表を見てもらって・・・②「管理」と③「変更」の違いがビミョ―だと思いませんか?
 そうなんです。ホント微妙なんです。

 例えば、機械式駐車場設備の発錆を抑えるために全面塗装を共有者の過半の賛成で実施したとします。
 (全面塗装に反対した)共有者Aさんに持ち分に応じた塗装工事の費用を請求した時に・・・
 Aさんが「全面塗装は②の『管理』ではなく、③の『変更』だ!合意できていない!支払い義務はない!」と主張したら・・・どうでしょう。
 確かに塗装し直した色は元と同じ色ではないし、塗料の種類も方法(新品:工場で塗装/全面塗装:現場で塗装)も違うでしょう。

 こうした見解の違いが生じるリスクを回避するため・・・
 ①の『保守』以外の管理は・・・「③の『変更』(=全員合意が必要)と想定」して合意形成した方が安全(=反対者からの主張に勝てない)・・・という解釈が一般的になっています。
 つまり共有物の(「保守」以外の)「管理」を行うためには・・・「現行民法」では、共有者間の「全員合意」が必要(=過半の賛成では反対する共有者と争ったら負ける可能性が高い)ということです。
 
 このルールでは、いくらボロボロの機械式駐車場設備であっても(色々な考えや経済的等、各々の事情や利害が異なる)共有者100名の全員合意を得るのは事実上不可能!ということです。

(ミニ知識)
 上記には「管理」が2回(2種類)出てきます。ややこしい・・・
 1つは維持管理をすること全体を指す「管理」、もう1つは管理の種類(レベル)を示す「管理」です。ホントややこしい・・・
 以下に整理しておきます。

・狭義の「管理」とは?
 ➡ 財産の性質を変えない範囲内の利用または改良を行なう行為
  ※ 「変更」や「保存」は含まれないので「狭義」


一般的用語(広義の)「管理」とは?
 ➡一般的・日常的に使われている維持または改良を行なう行為
  ※ 「変更」や「保存」も含むので「広義」

 次回は、分譲マンションの「管理」はどうなっているのか?お話ししたいと思います。  (つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?