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  • 雑誌『メンズノンノ』から読み解く男性の美容に対する意識の変遷

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ご挨拶・卒業論文目次

津田塾大学学芸学部国際関係学科を2019年度に卒業予定の小椋美月と申します。 稚拙な文章ではありますが、卒業論文を公開させていだだきます。 目次 はじめに 第1章  1. 女性に選ばれるための化粧(創刊から1990年) 2. 好感度のための化粧(1991年から1995年) 3. なりたい自分になるための化粧(1996年から2000年) 4. 「普通のこと」となった男性の化粧(2001年から2005年) 5. 化粧に癒しと楽しみを見出す男性(2006年から2010年)

    • 参考文献

      阿部恒久、大日向純生、天野正子「男性史3 「男らしさ」の現代史」日本経済評論社、2006年。 深澤真紀「日本の女は、100年たっても面白い。」ベストセラーズ、2014年。 平松隆円「化粧にみる日本文化 だれのためによそおうのか」水曜社、2009年。 能澤慧子「早引き ファッション・アパレル用語辞典」ナツメ社、2013。 酒井順子「百年の女『婦人公論』が見た大正、昭和、平成」中央公論社、2018年。 高村是州「ファッションスタイルクロニクル イラストで見る“おしゃれ”と流行の歴

      • おわりに

         本論文を執筆するにあたり、雑誌『メンズノンノ』を創刊号から33年分を参照し、美容に関する記事や広告を調べた。冒頭でも述べたとおり、『メンズノンノ』の美容に関する記事や広告も社会の動きと密接に関わっており、それはバブル経済やその崩壊、ミレニアムイヤーなどの社会の変化に影響され大きく変化していた。バブル経済の時期には、女性の社会進出が進んだことで、若い男性は女性にモテるべく化粧に気を遣うようになり、その後はビジネスシーンで好印象を残すための化粧へと変化していった。また、バブル経

        • 7 自由の象徴としてのメイクアップ(2016年から現在)

           2010年台後半になると、化粧に関する記事はさらに増加する。  2017年2月号124ページには「僕たちのリアル美容ライフ!」として、ファッションとともに美容に関しての質問が中心のスナップが掲載されている。127ページには美容行動に関するアンケートが掲載されており、「洗顔&化粧水をしていますか?」という質問に対して、90.3%の読者がY E Sと回答している。2015年2月号152ページ掲載の読者へのインタビュー企画「メンノン君の”リアル”」では、洗顔以外のスキンケアをして

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        • 雑誌『メンズノンノ』から読み解く男性の美容に対する意識の変遷
          11本

        記事

          6 目的が多様化する化粧(2011年から2015年)

           2011年も、これまでと同じく広告が非常に少ない。掲載されている美容特集や広告は2011年9月号118ページに掲載されている「節電の夏 ニオわない男に」というタイトルの夏のニオイ対策、そして毎月掲載されているスタイリストMASAHによる新作コスメの紹介コーナー「MASAH IN BEAUTY 男だって、キレイな方がいいにきまってる!」、時折掲載されるコスメの広告である。この時期の広告には2011年4月号252ページ「男子の好印象デビューは潤い肌ケアが左右する! 『メンズノン

          6 目的が多様化する化粧(2011年から2015年)

          5 化粧に癒しと楽しみを見出す男性(2006年から2010年)

           2007年の『メンズノンノ』でも、広告や美容特集の減少傾向は続いており、全く掲載されていない号が年間半分ほどとなっている。そのような状況の中でも特集されている記事の内容は、「眉」と「スキンケア」だ。2007年5月号316ページ「 自分に似合う『フェイバリット眉作り』を徹底レクチャー! 魁!「男眉」塾!!」では、美容記事が少ないこの年代においても、眉の整え方だけで4ページ使用していることから、読者にとって興味があるトピックであり、男性の化粧にとって重要なパーツであったことは間

          5 化粧に癒しと楽しみを見出す男性(2006年から2010年)

          4 「普通のこと」となった男性の化粧(2001年から2005年)

           2000年代前半は、ニオイケアに続き様々な化粧が男性に定着した時期である。  2004年2月号89ページ「そのケアちょっとまった!プロがわかりやすくレクチャー 冬のスキンケア新常識・非常識」では、「コラム:スキンケアの実態」と題し『メンズノンノ』読者150人にアンケート調査を行なっている。このアンケートでは、「使っている化粧品は?」という質問に対し「洗顔料のみ30%、洗顔料+保湿剤40%、洗顔料+保湿剤+毛穴パックなど20%、何もしていない10%」と、何かしらのスキンケアを

          4 「普通のこと」となった男性の化粧(2001年から2005年)

          3 なりたい自分になるための化粧(1996年から2000年)

           1997年ごろまでの『メンズノンノ』には、1991年から1995年までと同様に美容特集や美容関連の広告記事が少ない。掲載されている広告も同様に、ヘアスタイリング剤や洗顔料等、シンプルなラインナップである。しかし、1991年から1995年までとの違いもわずかに見られる。1996年8月号101ページ『M COLUM』には、従来の『メンズノンノ』と同じく汗のニオイ対策が組まれているが、このコーナーのサブタイトルは『今月のヘルシー』である。他の号ではサプリメントなどが紹介されている

          3 なりたい自分になるための化粧(1996年から2000年)

          2 好感度のための化粧(1991年から1995年)

           1991年から1995年には、まず1990年までと比べて美容記事と広告の数が大きく減っていることが特徴として挙げられる。これまで『メンズノンノ』には、頻繁にニオイ対策やスキンケアといった清潔感を獲得するための美容特集から、1988年4月号「メンズ化粧品完璧カタログ」に見られるように、男性向けのファンデーションやアイブロウ、ネイルポリッシュまで紹介したメイクアップの特集まで幅広く掲載されていた。しかし、1992年7月号以降、それらは紙面からほとんど姿を消す。  紙面に掲載され

          2 好感度のための化粧(1991年から1995年)

          1 女性に選ばれるための化粧(創刊から1990年)

           1986年から1990年の20〜30代男性にとって、化粧とは「女性にモテるためにやらなければならないもの」であったと考えられる。1986年7月号66ページには、「モテる男はイキイキ素肌」という見出しで、フェイススクラブやパックの紹介記事が掲載されている。その見出しの後には、「ヘアも素肌もおしゃれしなくちゃ。特に、不潔っぽい肌はいちばん嫌われるよ、女の子に」と続く。さらに、1989年4月号239ページに掲載されたカネボウのスキンケア商品の広告では、以下のような文章が採用されて

          1 女性に選ばれるための化粧(創刊から1990年)

          はじめに

           2018年、CHANELやTHREEが相次いで男性の使用を想定したメイクアップ用の化粧品を発表した(注1)。また最近、YouTubeには男性を対象にしたメイクアップの方法を解説する動画がたくさん公開されている。テレビには「りゅうちぇる」や「よきき」など、メイクアップを楽しんでいる男性タレントが出演するなど、「男性のメイクアップ」が世間で取り上げられるようになってきた。  一言に「メイクアップ」と言えば女性がする行動であると思いがちである。しかし今起こっている現象は、女性ら

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