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おわりに

 本論文を執筆するにあたり、雑誌『メンズノンノ』を創刊号から33年分を参照し、美容に関する記事や広告を調べた。冒頭でも述べたとおり、『メンズノンノ』の美容に関する記事や広告も社会の動きと密接に関わっており、それはバブル経済やその崩壊、ミレニアムイヤーなどの社会の変化に影響され大きく変化していた。バブル経済の時期には、女性の社会進出が進んだことで、若い男性は女性にモテるべく化粧に気を遣うようになり、その後はビジネスシーンで好印象を残すための化粧へと変化していった。また、バブル経済期の『メンズノンノ』読者が先輩や親世代となることで男性の化粧はより一般化し、男性の化粧にも世代間のつながりが感じられるようになる。化粧が一般化する中で、男性は「癒し」や「楽しみ」そして「格好良く歳をとる」といった前向きな感情を化粧の中に見出すようになった。
 そして、現在、SNSの登場で男性の化粧、特に顔に色を載せる装飾的な化粧は「自由」という意味を持つようになった。バブル経済期にも同様にアイシャドウや色付きリップ等を使った装飾的な化粧は特集されていたが、こちらはやはり女性にモテるための化粧であり、他者の評価を期待して行うものであった。しかし、現在の化粧は既存の男らしさからの解放の印ともいえる。
 本論文を通して、身だしなみ、そして自己表現であると思い込んで行っていた化粧という行動が、実は社会とリアルタイムに結びついているものだということに気づかされた。これから、手にする化粧品や自身が行う化粧が何と結びついているのかを考えながら、社会を眺める一つの方法として化粧と向き合っていきたい。
 (次の記事:『参考文献』)

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