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民藝旅 vol.2 沖縄 \与那国織のゆりこさん/



〜〜〜〜前回のあらすじ〜〜〜〜

那覇で出会ったおばあちゃんずの勧めで与那国島を訪れたもじゃもじゃ。
ようやく宿を見つけて、ゆりこさんの親戚を探すためにハローページから長男さんに連絡をしたがうまくいかず。手がかりを失ってショゲていたところ、宿のお父さんが誰かに連絡を取ってくれたのだ。

お父さん、誰と話しているんだろう?
そして、なよこさんの親戚に会って、与那国島の手仕事を見ることはできるのだろうか?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



与那国のやんごとなき島言葉

「・・・・?・・・!」

さんぺい荘のお父さんが、携帯電話で誰かと話している。
うーん…与那国の島言葉が、さっぱりわからない。

OHIRAさんから教えていただいた「全国アホ・バカ分布考」にこんな一文がある。

今ではまるで外国語のように聞こえる琉球の言葉も、実は本土の言葉とルーツは一緒である。

例)アホ・バカに当たる琉球言葉

沖縄本島/石垣島→プリムヌ、フリムン、フラー
宮古諸島/西表島→プリムヌ
与那国島→フリムン

(引用:全国アホ・バカ分布考/松本修 著/(株)新潮社発行)


このフリムン/プリムヌは「惚れ者」という言葉の沖縄発音で、室町時代から江戸時代にかけて京都でポピュラーだった言葉らしい。

また、石垣島、西表島、与那国島などがふくまれる八重山列島のなかで、与那国島だけは発音が違うとのこと。それは、カタカナで表記することができない、不思議な音だった。

沖縄本島から500km、台湾から100km。
どう考えても台湾の方が近いのに、与那国島には古い日本語が残っている
文化っておもしろい。

(台湾の先住民族の友達が「中国語と民族の言葉は全く違う」と言っていた。台湾先住民族の言葉は、日本語と中国語のどちらに近いんだろう?)



*  *  *



さて、話をお父さんの電話に戻そう。


「なよこさんの娘が社協で働いてるから、行ってみるといいさ〜」


島人特有の謎のネットワークで、なよこさんの娘さんの勤め先を教えてくれた。石を投げれば知人に当たるようだ。

那覇のインタビュー時もそうだったが、与那国島の人は、同級生の兄弟の名前、甥姪の名前、結婚相手、勤め先まで色んな人が知っている。
バジュラ的なフォールド通信システムがあるんじゃないかと思うほど個人情報が共有されているのだ。(元ネタを知らない方、悪しからず)

職場にお邪魔するのは気がひけるので、社協の電話番号を調べて、電話をかけてみる。しかし繋がらない。

もしかしたら、話し中か、受話器が上がっているだけかも。

宿でじっとしているのは、もったいないから、とりあえず町に出てみよう。
さんぺい荘のお母さんから傘を借りて、丘の下にある町の中心部へ歩いた。





与那国花織のゆりこさん

役場までは歩いて10分。与那国島の北東部落「祖納」。
与那国島は沖縄本島より湿度が高く、役場に到着した時にはお風呂上がりのように体が蒸しあがっていた。

建物の中に入り、もう一度、社協に電話をかけてみる。やっぱり繋がらない。最初に電話をしてから30分が過ぎていたので、こんなに繋がらないのはおかしい。

役場の受付の方に「社協の電話が繋がらない」ことを伝えると、確認の電話をしてくれた。やっぱり繋がらないらしい。

これは、いよいよ、電話が上がっていることを気付いていないに違いない。

事前の連絡なしに職場にお邪魔するのは礼儀知らずだけど、お電話のことはできるだけ早く伝えた方がいいだろう。

役場の職員さんに社協の場所を聞くと、丁寧に教えてくれた。
社協は民家の丘を上がった先にあるらしい。


社協のドアを開けると、たくさんの靴やサンダル。
大人のこどもの…20個ほどあったと思う。
中をのぞいてみると、親子連れでいっぱい。今日は子どもの検診日らしい。

とんだ忙しい日にお邪魔しちゃった。どうしようか。

しかし、電話が繋がらないのは、公的機関としては一大事に違いない。
意を決して受付のドアを開けた。


「すみません、社協に電話したのですが繋がらなくて。たぶん、受話器があがったままかと…」


書類がうず高く積まれた机がずらり。男性が1人。
男性は「あぁ…」と受話器に触れた。特に焦った様子もない。あまり電話が来ない部署なのかもしれないな。それか、検診日は電話を取れないから受話器をあげたままにしているのかも。

せっかくなので、なよこさんの娘さんのことを聞いてみた。


「ここに、◯◯さんという方がいらっしゃると聞いたのですが。」


すると、奥の部屋から快活な女性が顔を出した。


「〇〇ちゃん?いま外に出てるから、少し待ってたら帰ってくると思いますよ〜」


与那国の人たちは、人当たりがまろやかだ。
私がどこの誰で、その人にどんな用があるのかとか。なんにも聞かれない。
椅子があるから、どうぞ〜。女性はにこやかに笑い、お弁当を食べ始めた。

この島は、なんて平和な楽園なんだろう。島の人と話すたびに、わたしの心も柔らかくなるようだった。


10分くらい後に、なよこさんの娘さんが帰ってきた。
事情を話すと、「きっとゆりこ姉さんのことだわ!」と閃きの火花を散らして、「車に乗って!すぐそこだから連れて行ってあげる。」電光石火のごとく階段を駆け下りて、車のドアを開けてくれた。



「ゆりこ姉さーん!」

木造に沖縄屋根瓦。庭に面した窓を開けて、なよこさんの娘さんは呼びかけた。玄関はない。

少し間をおいて女性が出てきた「どうしたねー?」なよこさんのお姉さん、与那国織のゆりこさんだ。ショートカットヘアに、キラッと澄んだ目が光る。


「ああ、あんたねー!なよこから電話がきたさー!ほら、上がって!」


やっと、ゆりこさんに出会えた。

なよこさん、やっぱり連絡してくださっていたんだ。
クエストクリアのファンファーレが脳内に鳴り響く。たくさんの人に繋いでいただいて、ようやく会えた、与那国織の織女、ゆりこさん。

ゆりこさんはとっても元気。なよこさんといい、娘さんといい、このご家族はハツラツとした女性が多いのかもしれない。娘さんは「じゃあね!」と颯爽と車に乗り社協にもどった。


「それで、織物を見に来たんでしょー?」


なよこさんは、動きを止めることなくパタパタと家を歩き回る。そして、タンスの中から白っぽい布を取り出して持ってきた。

「これが、与那国花織さー」



それはまるで、花嫁衣装のように華やかで、繊細で、少女の恋心を謳った詩のように、まばゆい光に包まれていた。

日本の織物に感動した、はじめての瞬間だった。


「きれいでしょー」


ゆりこさんは、ひらり、ひらりと布地を動かした。

(せっかくなので、ビデオを撮影させてもらった。)


「織物はね、自分で絹糸を染めるのよー」


ゆりこさんが手招きする家の奥に向かうと、この織物を使うときに染めた糸がズラリと並んでいた。

島の植物で染めている絹糸。天然染料でこの鮮やかさ。


「与那国の織物は、伝統的な模様は決まっているけれど、色や組み合わせは自分で考えるのさー」


織女さんのセンスでパターン作り、染色が行われて、自宅等で織られ、工芸センターで検品が行われ、問屋が気に入ったものを買っていくシステムらしい。注文が入って織ることもあるそうだ。

絹織物は高級品なので、民藝には当てはまらないと思う。
それでも、ぼんやりするくらい美しくて、しばらく眺めていた。

(ゆりこさんの機織り機)

あとで別の織女さんが教えてくれた。ゆりこさんの織物は銀座の問屋さんが来た時、真っ先に売れたそうだ。それはもう納得のハイセンスと技。



*  *  *



「優さん、お腹空かない?ご飯食べに行こうよ。」

そういって、ゆりこさんは近くの可愛らしいコンテナカフェに連れて行ってくれた。

テリテリのラフテー丼。ゆりこさんはチキンフライ。
ふた切れずつ、おかずを交換こして食べた。

「優さん、いつまでこっちにいるの?車を借りたら、島を案内してあげるよー」

ゆりこさんの嬉しいお誘いに、2日後にドライブデートの約束をした。



*  *  *



なんて幸せな午後だろう。

今朝は、ひとりぼっち濡れネズミで、訳もわからなくて半泣きしていたのに。いま、会いたかった人に会えてご飯を食べている。

ここまで導いてくれた方々と、与那国の神様に、感謝の心が溢れてとまらなかった。


「そういえば、今週はずっと雨の天気予報ですね。少しでもいいから、晴れてくれないかな。」


カフェの店主さんは「どうだろうね、難しいかもしれないな。」と言い、ゆりこさんもうーんと首をひねった。外に出ると、雨は止んで曇り空になっていた。

それにしても、与那国島で養蚕が盛んだったと聞いたことがない。
絹糸はどこから仕入れているのかと聞いたら、本土から買っているそうだ。

それでは与那国島の織物は、新しい産業なのだろうか?
こんな離れ小島だから、自分たちで着るものを織る歴史があったのでは?



*  *  *



与那国島1日目、まだまだ続きます。長い1日だったんです。
明日は、このあと訪れた「与那国町伝統織物協同組合」のレポをお届けします。

あの鮮やかな絹糸、どんな植物で染めているのか…お楽しみに!

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