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美しい橋に興味があります。その歴史にも!

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美しい橋に興味があります。その歴史にも!

最近の記事

15.完成された木造りの美しさー伊勢神宮の宇治橋ー

伊勢神宮で和橋を観る  飛び石に始まり、丸太橋のような単純桁橋が連続桁橋へと長大化する過程では、創造的思考に基づく多くの発明・発見と試行錯誤が繰り返されてきた。  これまでは石橋を中心にして、石造りアーチ橋にいたる「橋のイノベーション」を垣間見てきた。  一方、メソポタミアや中国沿岸地域とは異なり、国内では森林資源が豊富なため、石橋とは異なる木造橋が、独自の発展を遂げた。  すなわち、橋を架ける周辺状況や利用状況に応じて技術革新が進められ、様々な形式の木造橋が架けられて

    • 13.コンクリート製アーチ橋への道ー京都七条大橋ー

      鉄筋コンクリ―トの発明と橋への適用  ローマ時代の技術者が石灰岩を砕き焼いて創ったセメントに砂と水を混ぜてモルタルとし、このモルタルにポッゾラーナ(ナポリ近郊のポッツォリに産する良質の火山灰)を加えると硬度と水密性が良くなることを発見した。  ローマでは、それに砂利を混ぜたものをオプス・カエメンティキウム(Opus caementicium)と呼び、道路・水路・浴場の建設に利用した。現在のコンクリートの起源である。実際に、コンクリート橋も架橋されているが、その外面は煉瓦

      • 14.ハイブリッド化による創造的思考ー福井の九十九橋ー

        既成概念の組合せ、ハイブリッド化  京都の鴨川に架かる三条大橋は、1590年(天正18年)に豊臣秀吉が増田長盛に命じて行った改修工事により、従来の木造橋について橋脚のみを石柱とする水平展開により生み出された。  「腐食に強い石材」と「曲げ力に強い木材」を組み合わせることで、当時としては最強の耐久性を有する桁橋を実現したのである。  既成概念の組合せではあるが、社会には大きなインパクトをもたらした。これも創造的思考の一環と考えて良いであろう。   このように異なった材料

        • 12.常識の非常識についてー京都の水路閣ー

          常識と非常識について  常識(Common sense)とは「誰でも知っているありふれたこと」の意味で、広辞苑によれば「良識、社会通念、一般知識」と解釈されている。この常識は人が社会において生きるための重要な知識であるが、個々人によって必ずしも一致してはいない。  往々にして、『自分にとっての常識は他人にとっての非常識』でもある。この常識は様々な主体(世界、国、地域社会、企業、学校、家庭など)において存在し、取り巻く環境と時間により変化する。例えば、企業であればその企業

        15.完成された木造りの美しさー伊勢神宮の宇治橋ー

        • 13.コンクリート製アーチ橋への道ー京都七条大橋ー

        • 14.ハイブリッド化による創造的思考ー福井の九十九橋ー

        • 12.常識の非常識についてー京都の水路閣ー

          11.学ぶことの大切さー中国の盧溝橋ー

          知識を得ることの大切さ  吉田兼好による随筆「徒然草」の一節(第52段)に、次のような話が出てくる。  ある時、仁和寺(注1)の老僧がひとりで男山八幡宮(注2)に参詣した。ところが老僧は山麓の極楽寺、高良の末社に参拝したのみで、山上にある本殿は拝まずに帰ってきた。そして、次のように言ったそうだ。  「お参りの人々がみんな山に登って行く、山登りに来た訳でもないのに・・・・」、あらまほしきは・・・・先達ということだ。  すなわち、知識と経験が豊富なはずの仁和寺の老僧でも、

          11.学ぶことの大切さー中国の盧溝橋ー

          10.古代メソポタミアでのアーチ橋発明ートゥールーズのボンヌフ橋ー

          メソポタミア文明の誕生  人類の歴史上にはエポックメイキングな出来事がある。その多くは、気候変動によって引き起こされた。  長かった氷河期が終わると紀元前6000年頃からヒプシサーマルと呼ばれる気候温暖化が始まり、大型動物の生息地であるステップ(草原)が森林に覆われることで、食糧危機が引き起こされた。  これに対して、人類は農耕と牧畜による生活方式を発見して対応する。しかし、紀元前3000年頃に寒冷化が始まり、アジア・アフリカ地域の北緯35度以南の降雨量が激減して砂漠が広

          10.古代メソポタミアでのアーチ橋発明ートゥールーズのボンヌフ橋ー

          9.イノベーションを起こすにはー沖縄の天女橋ー

          天草市の町山口川に架かる祇園橋  石造りの桁橋は、橋脚数を増やすことで広い川幅にも対応できる。技術の水平展開である。  熊本県天草市船之尾町の町山口川に架かる祗園橋は、橋長:28.6m、全幅:3.3mで、約30cmの角柱の橋脚が5本並立の9列、合計45本が立てられている。川上側の橋脚は水切りのために三角に尖っている。  祗園橋は、1832年(天保3年)に庄屋の大谷健之助が発起して、庶民の協力によって建造され、石材は下浦村(現在の下浦町)産の砂岩を使い、石工も下浦村の石

          9.イノベーションを起こすにはー沖縄の天女橋ー

          8.水平思考で創造的思考力を伸ばすー三条大橋ー

          飛び石から桁橋への垂直展開  創造的思考力を伸ばすために、橋を対象にして水平思考(展開)と垂直思考(展開)について考えてみた。  水平展開では、古くからある「飛び石」に川床を安定化するという新たな役割を見出して、現在でも数多く使われている。  一方、垂直展開では、より多くの人が安全に川を渡るために、「飛び石」を基台とし、板状の石や丸太を上に置いてつなぐ橋が考え出された。  飛び石は、橋脚の原型となり、橋脚の上に橋桁を乗せることで、桁橋が誕生した。  この垂直展開の例と

          8.水平思考で創造的思考力を伸ばすー三条大橋ー

          7.垂直思考で創造的思考力を伸ばす一京都の行者橋ー

          垂直思考で飛び石から桁橋へ  創造的思考力を伸ばすために、水平思考(展開)と垂直思考(展開)について考えてみる。  水平展開とは、対象とする技術や知識などを他の分野や領域に適用することである。一方、垂直展開とは、対象とする技術や知識などを深めてさらに進化させることである。  実際、水平展開として、古くからある「飛び石」に川床を安定化するという新たな効果が見出された例があげられる。  一方、垂直展開として、より多くの人が安全に川を渡るために、「飛び石」を基台とし、板状の石

          7.垂直思考で創造的思考力を伸ばす一京都の行者橋ー

          6.創造的思考力を伸ばすためにー鴨川の飛び石ー

          飛び石とは?  万葉集第七巻1283に、柿本人麻呂による歌が収められている。   はしたての倉橋川の石の橋はも          男盛りに 我が渡りてし石の橋はも  歌の意味は、「倉橋川の石の橋はどうなったでしょう。私が若いときに、渡るように置いておいた、あの石の橋はどうなったでしょう。」である。  人麻呂が懐かしんだ「石の橋」は、恋しい人を訪ねて対岸へ渡るために置いた「飛び石」のことである。  奈良時代には、川を渡るために利用した飛び石を石の橋と呼んでいたので、

          6.創造的思考力を伸ばすためにー鴨川の飛び石ー

          5.想像をたくましくして思考力を高めるーつるのはしー

           JR西日本大阪環状線の鶴橋駅で下車し、東口(近鉄線)改札を出て、通称コリアンタウンを南北に貫く「鶴橋本通商店街」を南に向かうと、徒歩約15分で「つるのはし跡公園」に到着する。  「つるのはし」は、日本最古の橋として名高い「猪甘津の橋」の古跡とされている。「つるのはし」の由来は碑文に詳しい。  西暦324年に仁徳天皇が、大阪の百済川(後の平野川)を渡るために猪甘津(江戸時代の猪飼野村、現在の桃谷3丁目)に小橋を架けた。  周辺には百済からの技術者集団が多く住んでいたことから

          5.想像をたくましくして思考力を高めるーつるのはしー

          4.創造的思考法に磨きをかけるには

           創造的思考を実現するには、右脳が持つ直感や無意識の感性を用いて新しいアイデアを導き出すこと、左脳が持つ客観的事実に基づいて合理的に事象を組み立てる論理的思考とを、バランスよく繰返すことが必要である。  言葉で示すことは簡単でも、これを実現することは難しい。どのようにアイデアを導き出し、どのように事象を組み立てるのか、具体的な方法が常人(凡人かも)には見えてこない。しかし、何ごとにも原理・原則がある。  まず、①問題は何かを明らかにする。その後、②広く関連する情報を収集し

          4.創造的思考法に磨きをかけるには

          3.橋をめぐり、右脳と左脳で右往左往

            創造的思考力は成功の鍵  カーボンニュートラルに向け社会システムが大きく変わろうとする今、従来の延長線上にはない未知の分野への挑戦を、常日頃心がける必要がある。そのためには創造的な思考力が重要で、これが成功の鍵を握っている。  一方、未知の分野であるがゆえに失敗(トラブル)への対応も、常日頃心がけておく必要があり、そのためには問題の解決能力が鍵となる。 右脳と左脳による思考プロセスの違い  典型的な二つの思考プロセスの概念を、図1に示す。(a)が発散型思考で、(

          3.橋をめぐり、右脳と左脳で右往左往

          2.橋の起源について

           橋とは、「交通路・水路などが、河谷・くぼ地その他、これら道路の機能を阻害するものに突き当たった場合に、これを乗り越える目的をもって造られる各種の構造物」と、土木学会編纂『土木用語辞典』に定義されている。  古(いにしえ)の時代に、水に濡れずに河川、湖沼などを渡るという問題を解決するために、人類が考え出したアイデアである。  橋の起源に関しては、川を渡るために飛び石を利用したり、川をまたいだ風倒木の上を動物が渡るのを見て考え出された。また、猿の群れが深い谷を渡るときのモンキ

          2.橋の起源について

          1.人類の3大発明

           教科書には、15~16世紀のヨーロッパに大きな社会変革をもたらした三つの発明、「火薬」「羅針盤」「活版印刷術」があげられている。しかし、実際には古代中国の4大発明とされる「紙」「印刷」「火薬」「羅針盤」が、ヨーロッパに移入されて改良・実用化されたものであることを知ると、真の発明(創造的思考)とは何かを考えさせられる。  創造的思考とは、ゼロから全く新しいものを生み出すことと定義する必要はない。たとえ既存技術の改良改善であっても、結果的に社会に大きな変革(イノベーション)を与

          1.人類の3大発明

          ポルトガル第二の都市ポルトのドウロ川に架かるドナ・マリア・ピア橋(Ponte Maria Pia)は流麗な橋でした。パリのエッフェル塔を設計したギュスターヴ・エッフェルの設計と聞くと、なるほどと感心しました。

          ポルトガル第二の都市ポルトのドウロ川に架かるドナ・マリア・ピア橋(Ponte Maria Pia)は流麗な橋でした。パリのエッフェル塔を設計したギュスターヴ・エッフェルの設計と聞くと、なるほどと感心しました。