マガジンのカバー画像

川柳

7
運営しているクリエイター

記事一覧

【川柳十句】響(きょう)

スパンコールの眼は薬莢にあらず 星

苦ければレモンの鼓膜ひとしきり

数えきれない己 三面鏡の密

かなしみが先に染みれば夏馴染む

効率の良いマーチ、僕は春じゃない

履きすぎた靴揃えずに満ち足りる

譜面台ばかり林立して裸足

アルペジオダークモードに滑る泡

ふきだしのノズルなんにも消毒しない

初雪の結晶 奥歯はヒビ、叶い、

/とわさき芽ぐみ 2021.3.1

川柳七句

ぬばたまの詩歌未遂の蟻、行脚

哲学の陽射し、現行犯逮捕

額縁が実る枝にも雪の降る

コンパスで描くπの実、ひらめいて

ひら、めいて、ゆら、めいて、国は五月病

回文の遺言 指紋は愚問

愚か者の祈り、ファミレスで祈り、

/とわさき芽ぐみ

川柳六句(Twitterより)

マーガリン溶けて雨音情けない

あがいてもただ白い月、白い嘘

まばたきをしても変わらぬ元素記号

電源を抜いて明日が未知になる

ガラクタの中にもあった楽を吸う

階段に注ぐ光を裾上げす

/とわさき芽ぐみ

シャーベット状の奇跡を蒔いて夏

シャーベット状の奇跡を蒔いて夏

許すなら今だと思う積乱雲

許されるまで前髪を伸ばしてる

地下鉄のひとぬるい風が吹き荒ぶ

大声で夢の出口を尋ねをり

パーカの紐の結び目頑なで

五十音順に並べた夢がある

留守番の犬がわたしに吠えたてる

東京よ それはあなたもおなじこと

恐る恐る踏み入れる一歩メガドンキ

メガドンキ水槽前の記念撮影

齢にじゅうほにゃらら、渋谷をよろめけり

/とわさき

もっとみる

夏星

遊ぶ金欲しさに盗む夏の星

祈るなら隙間なきよう組み合わせ

夜めがけ投げる小石で星座生む

一本の線で描ける星マーク

尖らせてしまった意味を問う星座

夜の闇明るくするほど光れない

鉄分の味は苦くて星こぼれ

さりげなくさりげなく光るナンセンス

己には似合わぬ星座握り締め

あなたには名前をつけなくても分かる

協調性の高い一匹狼

抱きしめたままで良いですか 縫いぐるみ

宇宙服着たまま君と闊歩する

不自然に並んだみどりで歩き出す

電源を切ってよいかと尋ねられ(ここで保留ということはない)

今しがた降ったばかりの雨だから塩に塩気がなくなっている

炭酸の抜けたジュースはジュースではなくてもはやジュース

引き分けの意味すら問わずうつ伏せで寝てしまっては答えが聞こえない

ねえデジタルの数字は線で表せてわたしたちいつにな

もっとみる

不機嫌なcall

不機嫌な振りして撒いたエイトフォー

鞄から重さの上限聞き出して

陰影のシュー皮ばかりがボロボロと

うまく言え、ない、こと、ばかり、風下へ

振り向いたばかりのうしろ前にして

ステイ・バイ・マイ・サイドって何語かな

考える人の考えないジャンケン

勝ち組と負け組で分けよ深緑を

白昼の深さなら聞いたもの勝ちだ

明日から羊と獏は喧嘩する

右折なら何度もしたしもう飽きた

アルコール抜きで

もっとみる