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「履歴書が汚れる」と言い放った元彼へ、今更だけど言いたいことがある

新卒入社して半年がすぎた頃、同期たちと元気に話している中で、私は一人、転職したいと考えていた。

就活時代、業界も絞らずに、皆が知っているような大手企業ばかりを受けて、一番最初に内定をもらった企業。大学の先生も、離れて暮らす両親も、とっても喜んでくれていた。

それなのに、一年も経たずして会社が嫌になった。朝痛くなるお腹を押さえながらバスに乗るのも、上司の威圧も、帰れない飲み会も。周りの目を気にして、毎日萎縮して過ごすことに、耐えられなくなっていた。

就活時代、業界のことや自分の性格について、もっと真剣に考えなかった自分を悔やんだ。会社を辞めて、もう一度、自分に合った環境を探したい、と考え始めていた。

当時、同じ業界で働く8つ上の彼氏がいた。いつもは明るく努めていたけれど、ある日、辛い気持ちを打ち明けたことがある。

一番近くにいた存在だからこそ、心のどこかで、転職を応援してくれると思ったけれど、返ってきた言葉は否定的だった。

履歴書が汚れるよ。考え直したら。」

短期離職することは大きなマイナスになるし、履歴書の行数も増える。彼はそれを、履歴書が汚くなるからおすすめしない、と言った。未熟な私が早まって、あとで後悔するといけないから、彼なりのアドバイスだったかもしれない。

言われなくても、短期間で会社を辞めることのリスクは、痛いほど認識しているつもりだったし、転職しても、また辛い環境が待っているかもしれない、と怖い気持ちもあった。

社会人として先輩でもある彼からの言葉は、私を思いっきり惑わせたし、その後も、呪いのように、私の心にずっしりと居座った。

それでも、入社して1年と半年が経つ頃、結局、私は転職した。

彼から言われた言葉はずっと消えなかったけれど、このままの毎日に慣れていくことの方が嫌だった。学生時代に無理やり作った志望理由はいったん忘れて、誰に見られるわけでもない、自分だけのノートに考えを整理して、いろんな人の本を読んで、会って話をして、ある会社に出会った。親も、友達も、誰も知らない会社だった。

私は、そこに転職を決めて、しばらくして彼とも別れた。

辛いこともあったけど、その会社は、初めて、働くことが楽しいと思える場所になった。今の夫に出会うきっかけとなったところでもある。

5年経った、今だから言える。あの時、彼の言葉を素直に受け入れて、新しい環境を探すことを、諦めなくて良かった。

履歴書が汚れると言った元彼へ、今更だけど、言いたいことがある。5年越しの反論をさせて欲しい。

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「アドバイスありがとう。でも、3つ言いたいことがある。」

「まず、人によって、そのときの事情も目指すものも違う。履歴書が綺麗とか、汚いとか、あなたの狭い価値観を押し付けないでほしい。」

「私はその後、自分で考えて行動したことを、評価してくれる人たちや会社に出会ったよ。短期離職を美談にするつもりはないけれど、あなたの言う『履歴書の汚さ』でジャッジをされる世界から抜け出せて、本当に嬉しく思ってる。」

「最後に、ちょっとだけ感謝してる。あなたの言葉に足がすくむこともあったけど、おかげで自分にとって何が大切か、はっきり意識できるようになったよ。自分が納得できる環境にいることが、履歴書を綺麗にしておくことよりも、何倍も大事だという考えに辿り着けた。これからも、自分にとって大切なことを見失わずに生きていくの。」

「それでは、さようなら。」

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まあ、当時は何にも確信が持てなくて、何一つ、言い返せなかったんだけれどね。

でも、これですっきりした。

おわり


ちなみに、転職先の出来ごとについてはこちらのnoteでも書いています。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。











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