千十九

無駄なこと・意味のないこと・どうでもいいこと、それらを大切にしています。

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マガジン

  • 猫のこと

    猫にまつわる写真、エッセイをまとめています。

  • 眠れない夜のエッセイ

    眠れない夜に読むエッセイをまとめました。

  • 写真たち

    最近のスマートフォンはすごい。

最近の記事

家人に知れぬよう、書斎にウイスキーを隠している。傍らには本。 首が疲れたところで本を閉じる。 おやすみ、と猫に別れを告げ、眠りにつく。翌朝、運良く目覚めたのなら、二人目の私の一日が始まる。 そうして幾人もの私が起きては死にを繰り返し、ひとつのちいさな命が、一生を終えるのだろう。

    • 未プレイなのに「あつまれ どうぶつの森」でとにかく号泣している

      私自身はゲームが苦手で、自分でプレイすることはほとんどない。 でも最近、人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森」をアメリカ人がプレイする "ゲーム実況" を見始めてから、その世界にずぶずぶとハマっていった。 このJordanさんの配信は本当に癒される。 まず低くて落ち着いた声に癒される。そして彼がゲームのディテールの素晴らしさに感動するたび、こちらも感動し、そして癒される。 まるでプレゼントの箱を開いては目を輝かせるような、そんな楽しみ方をする人。まさに「どうぶつの森」向きな方

      • 夢はなんですかと言われても

        職場の上司が派遣社員の面接で「あなたの夢はなんですか」という質問を投げかけた。 相手はかなり考えた末に「派遣から正社員になることです」と答えた。 上司はその回答がお気に召さなかったらしく、面接後に周囲に「夢のないやつは何をやっても伸びない」とこぼした。夢。夢ね。 私には夢がない。頑張ってみても、今このときしか考えられないから。過去も未来もない、その瞬間の連続だけを体験している私に、抱ける夢はない。 面接で面接官のお気に召すような夢を語れる人は、どれほどいるのだろう。 夢を

        • 恋愛ができなくて小石になりたいので助けてほしい

          私のことを恋愛対象として好きになってくれる人のことを、嫌いになってしまう。そんな私の精神構造が大嫌いだ。 人間として好きだった人に好意を寄せられると、私はその人のことを嫌いになってしまう。そしてその人が私から離れていくとほっとする。私はどこか壊れている。もういやだ。 そもそも恋愛や異性に関心がなくて、初めて異性から好意を寄せられたときは「この人には私が怪物か宇宙人には見えていないのか?」と思った。 滑稽な反応だと思うかも知れないけれど、ずっと私は自分自身を「他人から性的に

        家人に知れぬよう、書斎にウイスキーを隠している。傍らには本。 首が疲れたところで本を閉じる。 おやすみ、と猫に別れを告げ、眠りにつく。翌朝、運良く目覚めたのなら、二人目の私の一日が始まる。 そうして幾人もの私が起きては死にを繰り返し、ひとつのちいさな命が、一生を終えるのだろう。

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        • 眠れない夜のエッセイ
          9本
        • 猫のこと
          7本
        • 写真たち
          16本

        記事

          いつか天になる - あるいは猫との別れ

          友人と「猫は死ぬと何になって何処へゆくのかな」という話をした。 子猫を庭に埋めた人は「子猫は風になって駆けまわり、庭の草花を揺らす」と言った。 その人はきっと庭の草が風で揺れるたびに、その子猫のことを思い出しては泣くのだろう。小さな命を失った人は長い時間、自分を責め続ける。 しかし同時にその人は、子猫は風になってそばを駆けまわっていることも知っている。風はその人を慰めるだろう。 短く終わった命は、永遠に吹く風になるのだ。 老猫を看取った人は「老猫は月になって毎晩その眼を

          いつか天になる - あるいは猫との別れ

          老犬と雷鳴と安寧

          飼っている老犬はもう耳が聞こえなくて、私が後ろから声をかけても振り返ることはない。 天を切り裂く雷の音に、彼が怯えることはもうない。 昔は遠くの花火の音にも怯えて震えていて、それがとても可哀想で、彼の不安を思うと私が泣きそうだった。 老いていくことは、ただ不安で恐ろしいものだと思っていた。けれど、聴力を手放した老犬の、その穏やかな日々は私の心を慰める。彼の毎日を安全なものにするためなら何でもできると思った。 老いてすこしずつその時間が曖昧になって、そして生き物から死体へ

          老犬と雷鳴と安寧

          光線を残して

          光線を残して

          機械仕掛けのトビウオ

          機械仕掛けのトビウオ

          ワープ航法

          ワープ航法

          薄明光線

          薄明光線

          違う時間を生きるものたち

          昔住んでいたアパートで、廊下を歩いている私の横をトンボが通り過ぎて、そして数メートル先でぽとりと落ちた。近づいて見てみると、トンボは死んでいた。 さっきまで羽ばたいていたのに。昆虫の死はこんなに突然訪れるものなのかな、と驚いたのを覚えている。 フェンスに留まったカマキリが、その鎌を空に伸ばしたまま死んでいるのを見たことがある。 動作の途中、生活の途中、生きていたその途中で死んでいる昆虫たち。 生きている途中に死が訪れるなんて当然で、それこそが死なんだけど、なんだか本当に不

          違う時間を生きるものたち

          コンサータを忘れて旅行に行くとどうなるか

          コンサータという薬を飲んでいる。ADHDの "症状" を緩和する薬らしい。 1年前にADHDと診断されて、半年ほど前からコンサータでの治療が始まった。 自分の本来持つ特性を治療するなんて、おかしな話だと時折思う。 それでも日常生活に支障が出てしまったからには、放置するわけにはいかなかった。 コンサータを飲みはじめて、朝のつらさが軽減された。 目覚ましの音で起きられる。その後しばらくしてベッドから抜け出せる。朝のルーチン作業を黙々とこなせる。 以前は身体が重く(実際に本当に

          コンサータを忘れて旅行に行くとどうなるか

          ある感情の組み合わせ

          気のおけない人たちと好きな話で盛り上がって、これ以上ないくらい楽しくて、ああずっとこんな幸せが続けばいいなと思うとき、同時にどうしようもない寂しさと孤独感が足元にひんやり流れていることがある。 人に囲まれているときほど孤独なのはなぜだろう。幸せなときほど寂しいと思うのは。 笑えば笑うほどこの感情は本当に自分のものなのかと考えてしまうし、楽しければ楽しいほど本当に自分はこれが好きなのかと疑ってしまう。 自分の中に別の誰かがいるのだろうか。 人と会ってお喋りして、楽しいの

          ある感情の組み合わせ

          あれは別の選択をした世界の私なのではないか

          罪を犯した人が実は精神疾患を持っていた。ニュースでそういった情報が入るたび、私はそれが「今とは別の選択をした世界の私なのではないか」と思う。 もう失うものが何もない人が起こす事件を見るたびに、これは違う選択を選ばざるを得なかった自分の姿だ、と悲しくなる。 限られた選択肢の中から「最悪」より多少マシなものを選び続けて、そうして最後に突きつけられた選択肢は一体どんなものだったのか。 ときに人は自分の力ではどうすることもできない状況に置かれることがあって、他人からすれば荒唐無稽

          あれは別の選択をした世界の私なのではないか

          世界のルールとごっこ遊び

          ひさしぶりに本棚の整理をしていて、以前はよく使っていた色鉛筆を見つけた。鳥の形のクリップ、正方形の単語カード、400字詰の原稿用紙も出てきた。なにか書いてもいいよ、と促されたような感じ。 最近はすっかりスマホかタブレットを使うようになったから、たまには紙と鉛筆もいいかもしれない。 原稿用紙に色鉛筆で、罫線を無視して絵を描くのも楽しそうだと思った。単語カードは試し描き用のノートになってもらう。 そのモノ本来の用途とは違った使い方をするのは楽しい。些細なことだけど、ルールを破っ

          世界のルールとごっこ遊び

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          夜のサンフランシスコ 坂の街

          ケーブルカーに乗ってサンフランシスコの街を移動したタイムラプスです。

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