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夢はなんですかと言われても

職場の上司が派遣社員の面接で「あなたの夢はなんですか」という質問を投げかけた。
相手はかなり考えた末に「派遣から正社員になることです」と答えた。
上司はその回答がお気に召さなかったらしく、面接後に周囲に「夢のないやつは何をやっても伸びない」とこぼした。夢。夢ね。

私には夢がない。頑張ってみても、今このときしか考えられないから。過去も未来もない、その瞬間の連続だけを体験している私に、抱ける夢はない。

面接で面接官のお気に召すような夢を語れる人は、どれほどいるのだろう。
夢を持っていることは、当たり前のことなんだろうか。

私は、しいて言うのなら。夢のない人でも、夢がないことを引け目に思わず堂々と生きていける世界が訪れること。その世界が私の理想で、それが私の夢だと思う。

いいじゃないか夢がなくても。いま現在を流れてゆく、濁流のようなこの一瞬一瞬。この一瞬だけを生き続けることが人生の人だっているのだから。

人はそれぞれにまったく違った世界を生きている。
過去を見つめる人。未来を思う人。そして存在する今だけを生きる人。

人に語るほどの夢がなくても、過去に生きようと未来に生きようと、その人のその1日が穏やかで一切の罪悪感のないこと。それは私にとって理想的で、夢のような話だと思う。

夢のない人生は、今この一瞬を見つめることに集中させてくれる。
そうやって生きて、ふと振り返ると、うしろには迷った跡だらけの曲がりくねった道があるだけ。ただそれだけ。

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