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「キャラAは誰よりも肝が据わっており、しかも強い→そんなAの顔がなかなか画面に映らない」という展開によって、「Aはどんな顔をしているのだろう?」「どんなキャラなのだろう?」といった疑問を喚起し、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する ~映画「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の場合

サポーターたち「(平然としているインディとは対照的に、声を震わせて)これはホビト族の矢だ!俺たちは尾けられている!」

映画「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」


◆概要

【「キャラAは誰よりも肝が据わっており、しかも強い→そんなAの顔がなかなか画面に映らない」という展開によって、「Aはどんな顔をしているのだろう?」「どんなキャラなのだろう?」といった疑問を喚起し、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」

▶1

物語冒頭、

・Step1探検隊がジャングルを進む。

・Step2:先頭を行くのはリーダーだ。彼は確固とした足取りでずんずん前進する。

・Step3:リーダーの後ろに、案内人や荷物持ちなどのサポーターが続く。彼らはリーダーとは対照的にびくびくと辺りを見回す。……無理もない。だってそこは何が飛び出してくるかわからぬ危険なジャングルなのだから!

・Step4:やがて一行は、木の幹に刺さった矢を発見した。リーダーは数秒だけ矢を観察すると、何事もなかったかのように歩みを進めた。一方、サポーターたちは声を震わせる「これはホビト族の矢だ!俺たちは尾けられている!」。


間もなく、

・Step5:リーダーは足を止めた。彼は地図を見つめる。

・Step6:とその時だった。サポーターの1人が銃を抜いた……裏切りだ!

・Step7:裏切者はリーダーの背中に狙いをつけ、撃鉄を起こした。カチリ。

・Step8:リーダーはその音を聞き逃さない。直後、腰に装備していた鞭に手をやり、振り向きざまに振るった。ヒュン!鞭がしなる。裏切者の手に命中。裏切者は思わず銃を落とした。彼は怯え、慌てて逃げていった。

・Step9:このリーダーこそが、そう、本作の主人公・インディ(インディアナ・ジョーンズ)である。


▶2

ご注目いただきたいのは、Step1-8だ。

じつはStep9になるまで、インディの顔は一切画面に映らない。それどころか、まともに全身が映ることもない。「背中だけ」「手先だけ」「足元だけ」など、チラ見せ映像が続く

一方、サポーターたちは最初から顔が映っている。


というわけで、私たち鑑賞者は気になるのだ「サポーターたちと比べて明らかに肝が据わったこのリーダー、どんな男なのだろうか?」「どんな顔をしているのだろうか?」「嗚呼、早く見てみたい!」と。

かくして物語に引き込まれる……!


つまり、【「キャラAは誰よりも肝が据わっており、しかも強い→そんなAの顔がなかなか画面に映らない」という展開によって、「Aはどんな顔をしているのだろう?」「どんなキャラなのだろう?」といった疑問を喚起し、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する】というテクニックである。


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