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終わりなき最悪 ~映画「釣りバカ日誌」(シリーズ1作目)の場合

草森「ただいまのご報告と重複するようでありますが」
鈴木社長「……何ぃ!?」

映画「釣りバカ日誌」(シリーズ1作目)


◆概要

【終わりなき最悪】は「コメディシーン、ギャグ」に関するアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「釣りバカ日誌」(シリーズ1作目)

▶1

本作の主要キャラの1人・鈴木社長(60代半ば頃の男性)。

彼は、「鈴木建設」という会社(中堅レベルのゼネコンと思われる)の創業者にして現社長である。


ある日のこと。

・Step1:20-30人ほどの重役が会議室に集まり、会議をしている。全員が中年から初老の男性、スーツ着用、重苦しい雰囲気、発言者は資料を読み上げるばかり。いかにも「昭和の会議」という感じだ……もちろん悪い意味で。

・Step2:秋山専務が話す「えー、つまり、えー、1立米あたり2800円というのが、このー、おー、新関西空港事業総体の、まぁ採算の取れる上限でございます。がしかし、砂利採取購入組合に加入せずに砂利資材を購入しますと立米あたり4000円となりまして、これは採算点を割ってしまうわけなんであります」(「立米」は「りゅーべー」と読む。主に建設業界で使う言葉で、意味は「立方メートル(㎥)」)。

・Step3:鈴木社長がため息をつく。いつまで経っても結論の見えぬ秋山専務の話にいらだち、うんざりしているのだ。

・Step4:しかし秋山専務の話はまだ終わらない。だらだら続く。

・Step5:ここに至って鈴木社長の堪忍袋の緒が切れる。もう我慢できぬ!彼は一喝した「秋山くん!説明はもうよろしい!要するに結論としてきみの考えはどうなんだい!組合に入るのかね?入らんのかね?」。

・Step6:ところが秋山専務は「ハァ、いや、購入組合に加入しない場合は採算割れが生じますので、これは加入せざるを得ないわけでありますが、しかし……」。相変わらず歯切れが悪い。

・Step7:鈴木社長が再び叫ぶ「もうよろしい!草森くん、次にいきなさい!」。

・Step8ふぅ。ようやく秋山専務の要領を得ない話が終わった……と思いきや、草森は開口一番こう言った「ただいまの秋山専務のご報告と重複するようでありますが」

・Step9鈴木社長がギョッとする「……何ぃ!?」。彼は眼鏡を外すと、もうすべてを諦めたかのようにテーブルの上に乱暴に放り投げた。


▶2

何を言いたいのかさっぱりわからぬ秋山専務の長話がやっと終わり、ホッとしたのも束の間……直後に「ただいまの秋山専務のご報告と重複するようでありますが」と草森。

「『重複』ってことはまた同じような話をくどくど繰り返すわけ!?(笑)」「鈴木社長があまりにかわいそうだ(笑)」と思わず噴き出してしまった鑑賞者は少なくないだろう。

嗚呼、悪夢は続く!!


まさにこれ、【やっと最悪を抜け出したと思ったら、やっぱりまた最悪だった】というコメディシーンである。


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