【発見】私だって愛されたい!愛される物語構成|「最悪のキレ方をするアガサ博士」(1)
三葉「清水さん、清水さん!」
清水「何ですか、そんなに嬉しそうに(1人でニヤニヤするなよ……)」
三葉「いえね、実はとても面白いマンガを見つけたんですよ……そう、二重の意味で『面白い』マンガを」
清水「『二重』?」
三葉「まぁまぁ。まずはこれ、ちょっと読んでみてくださいよ!」
清水「ふむ。それでは拝見」
びっくりムーン「最悪のキレ方をするアガサ博士」
<登場人物紹介>
・清水:プリンス・オブ・アニメ。年100作以上のアニメを見続けて20余年。2017年に放送されたアニメでは、『徒然チルドレン』の梶亮子が一番好き。
・三葉:清水とは中学時代からの友人。尊敬する人は『Paradise Kiss』のジョージ。
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三葉「どうです?面白いでしょ?」
清水「ふむ」
三葉「いやぁ、ほんと何気ない4コママンガなんですが……その『何気ないたった4コマ』でしっかり面白い物語を作るってすごい技術だと思うんですよね」
清水「確かに」
三葉「タイトルもよいですよね。『最悪のキレ方をするアガサ博士』……うーむ、実に上手い!こんなタイトルを付けられたらね、そりゃみんなタップしますよ!実にニクイ!」
清水「……語りますねぇ。いや、確かに面白いけど……」
三葉「ってなわけで、『マンガとして面白い』というのが1つ目の『面白い』です」
清水「ああ、『二重の意味で面白い』とかなんとか」
三葉「それそれ。さて、2つ目の『面白い』なんですが……いえね、私、初めて読んだ時に少し違和感を覚えたんですよ」
清水「『違和感』?」
三葉「ええ。……確かに面白い。シンプルながらしっかりオチもある。実に上手い!……が、何か腹落ちしないものがある。一体これは何なのか、と」
清水「ふむ」
三葉「熟考の末、私、気づいたんですよ」
清水「気づいてしまったんですね」
三葉「これ、『起承転結の<結>がないじゃん』と」
清水「ほぉ」
清水「ふむふむ」
三葉「で、次が問題なんですが……」
三葉「『結』とは、すなわち『変化の結果』です」
清水「ええ」
三葉「本作の場合、阿笠博士の突然の辛口が『変化』に該当するでしょう。そして、それが4コマ目に来ている。よって、『その後=変化の結果』が描かれていないんですね」
清水「ああ、確かに」
三葉「したがって『起・承・承・転』!これが2つ目の『面白い』です」
『結』がない……どのような影響が出る?
三葉「そう考えると、気になるのは『<結>がないことでどのような影響が出るのか?』です」
清水「『<結>はない方がよいかもしれない』と」
三葉「ええ、『SNS全盛期にフィットした作品』という意味では」
清水「なるほど」
三葉「というのもですね……」
清水「ああ、なるほど。作中に『ガチギレかよ!』、『大人げないわよ』なんてセリフがある場合、それと同じことをコメントする人はあまりいない。すなわちコメント量が減るというわけですね」
三葉「そうです、そうです。そして【読者のリアクションが減る】→【拡散されづらくなる】という流れですね」
清水「ふーむ、なるほど」
隙がなければ愛されない
三葉「『起承転結』構成を善とすれば、『結』がないというのは『隙がある状態』なんですよね」
清水「『隙』ですか」
三葉「ほら、よく言うじゃないですか。『1人で何でもできてしまう完璧超人よりも、ちょっとヌケたところがある人の方が愛される』とか、『敢えて弱みを見せることで、部下がついてくるようになる』とか」
清水「まぁ、完璧すぎると近寄りがたいと感じるのかもしれませんね」
三葉「マンガなどのコンテンツもそれと一緒だと思うんですよ。『ビシッと完結している作品』よりも、『ちょっと隙のある作品』の方がとっつきやすく、リアクションされやすいのではないかと」
清水「ふむ」
三葉「『結』がないと、それを埋めるように読者のコメントが集まる……『<結>がない』に限らず、何かしらの隙があるからこそ、それを埋めるように誰かが愛を注いでくれる……『完璧』というのは、愛を受け取るための余裕がない状態を意味しているのかもしれませんね」
清水「……何だか妙に人生教訓めいたことを言いますね……」
三葉「ってわけでね、私、これからどんどん隙を見せていこうと心に決めた次第です」
清水「……」
三葉「私だって愛されたいんですよ!」
清水「……まぁ、あなたは隙だらけですからね。愛される資質はあると思いますよ」
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この話題、明日に続く!
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(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)
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