おかしな「誰かと一緒にいて気まずい時の言動」　～アニメ「げんしけん」の場合 #4

春日部「いや、そんなことじゃなくて……もらう理由がないでしょ！いらない！」

アニメ「げんしけん」（第9話）

◆概要

【おかしな「誰かと一緒にいて気まずい時の言動」】は「コメディシーン、ギャグ」に関するアイデア。

◆事例研究

◇事例：アニメ「げんしけん」（第9話）

▶1

本作の主要キャラの1人・斑目（男子大学生）。

彼は、

・特徴1：とある大学のサークル「現代視覚文化研究会（げんしけん）」の会長である。「げんしけん」はオタクの巣窟であり、もちろん斑目自身もアニメやゲームを愛するバリバリのオタクだ。

・特徴2：気心の知れた相手以外とのコミュニケーションが不得手である。特に女性とのコミュニケーションには強烈な苦手意識を持っている。

▶2

ある日のこと。

斑目がいつものように部室のドアを開くと、中にいたのは春日部1人。彼女はマンガを読んでいた。

斑目は思わずビクッ、体を震わせた。

というのも春日部は、

・特徴1：美人でオシャレ、そして気の強い女子大生（斑目の1つ後輩）だ。オタクとは無縁の存在であり、というかむしろオタクを嫌っている。まぁ要するに、斑目が最も不得手とするタイプの女性なのだ。

・特徴2：オタクではないもののとある事情からちょくちょく部室に顔を出しており、斑目とは顔見知りである。だが……じつは斑目と春日部が2人きりになるのはこれが初めてのことだった。

春日部は、斑目の存在を無視してマンガを読み続ける。

一方の斑目。彼は気まずい。超気まずい。静寂が息苦しい。うっ。どうしよう。何か話しかけるべきか？でも何を？気まずいぞ。あまりにも気まずい！

・Step1：気まずさに耐えかねた斑目。彼は「あっ、あれぇ」「えっと、変だなぁ」などと呟きながら、わざとらしくポケットをまさぐった。さらに「困ったなぁ」「おかしいなぁ」「どこいったぁ？」。そしてポンと手を打った「あっ、そっかぁ！なんだそういうことかぁ！」。彼は部室を出ていった。……もちろん、すべては部室からさりげなく脱出するための演技である（傍目に見ていると、ちっともさりげなくないのだが）。

・Step2：廊下を歩きながら、斑目は心の中で呟いた「出ていってどうする……逃げてどうするよ、俺！」「とはいえ、すぐに戻るのも不自然……」。

・Step3：というわけで、斑目は自販機でドリンクを2本購入した。そして「よーし、自然に話しかけるぞ！」と決意して部室に戻った。

・Step4：斑目は精一杯の笑顔でドリンクを差し出した「これ、飲む？」。しかし春日部は、「はっ？」。困惑顔である。彼女は眉間にシワを寄せて「いや……いいよ」。

・Step5：だが斑目は笑顔のままで「ほら、缶だから変なもの入っていないし。ねっ」。ぐっと腕を伸ばし、ドリンクを差し出す。

・Step6：一方の春日部。彼女は、斑目が腕を伸ばした分だけ体を引いて「いや、そんなことじゃなくて」。怒気をはらんだ声ではっきりとこう言った「もらう理由がないでしょ！いらない！」。

・Step7：予期せぬ展開に斑目はフリーズする。笑顔が崩れる。えっ。どういうこと？親切心からドリンクをおごろうと思っただけなのに。そしてそれを会話の糸口にしようと思っただけなのに。それだのに……えっ。拒否？しかも俺、いま怒られたの？斑目はかろうじて「あっ、そう？」とだけ呟いた。

・Step8：動揺する斑目。彼は心の中で自問自答する「あれ。あっ、あれ。おかしいなぁ……俺、ズレてる？ズレちゃってる？」。

・Step9：その後、マンガ雑誌を読みながら2本のドリンクを飲み干した斑目。彼は苦しそうにゲップした。

▶3

気まずさに耐えかねて一度は逃げ出してしまった斑目。しかし彼は戻ってきた！しかも「ドリンクをおごる → それを会話の糸口にする」という秘策を携えて！！

ところが、えっ、拒否！？

困惑し、動揺する斑目だった……。

このシーンを見て、

・感想1：「春日部さんが『喉が渇いた』と言ったわけでもないのにいきなり飲み物を買ってきておごろうとするとか……完全に非モテ男性のそれなんだよなぁ（笑）」

・感想2：「斑目の非モテムーブが見ていて辛いよ～！（笑）」

・感想3：「まずは普通に会話しよう！すべてはそこからだぞ、斑目！（笑）」

・感想4：「哀れ斑目！しかしStep5の『ほら、缶だから変なもの入っていないし。ねっ』っていう言い方がなぁ……完全に不審者のそれなんだよなぁ……（笑）」

・感想5：「もちろん斑目に悪意はないのだろうけれど……春日部さんの『もらう理由がないでしょ！いらない！』っていう言葉がすべてなんだよなぁ。女性サイドからしたら、カレシでもない男に理由なくおごられるのってそりゃ警戒するよ！（笑）」

・感想6：「なぜ春日部さんに拒否されたのかちっとも理解していない斑目……嗚呼、哀れ！（笑）」

・感想7：「最後のゲップが物悲しい……。見ていて心が痛いよぉ！（笑）」

と噴き出してしまった鑑賞者は少なくないだろう。

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