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おかしな「賞賛・称賛」 ~ドラマ「ザ・ボーイズ」の場合

MM「(笑顔で)お前、大したもんだな!まるであれだ、レインマンみたいなやつだぜ!」

ヒューイ「ハハハッ……って、それ褒め言葉になってない」

ドラマ「ザ・ボーイズ」(シーズン1の第5話)




◆概要

【おかしな「賞賛・称賛」】は「コメディシーン、ギャグ」に関するアイデア。


◆事例研究

◇事例:ドラマ「ザ・ボーイズ」(シーズン1の第5話)

▶1

本作の主人公は、ヒューイ(20代の男性)。

彼は電気屋で働く、ごく普通の青年である。

心優しく穏やかと言えば聞こえはいいが、要するに優柔不断でなよなよしたタイプ。自分の意見を主張するのは苦手だ。


そんなヒューイだが、ところがいろいろあってある日――

・Step1:MMという男の指示にしたがって、「悪の組織の幹部に接触し、そいつを脅して機密情報を入手する」という任務に就くことになった。

・Step2:「そんなこと僕にできるわけないだろ!」とヒューイは頭を抱える。しかし、嘆いていても仕方がない。正義のためにはやるしかないのだ!

・Step3:かくしてヒューイは奮闘する。彼は怯え、途中でヘマをやらかすものの、しかし機転を利かせて見事目的を達成した


任務完了後、

・Step4:ヒューイはMMに電話をかけた。そして機密情報を伝えた。

・Step5:ヒューイが入手した情報は素晴らしいものだった。MMは驚く。まさかあのヒューイがここまで完璧に任務をこなすとは!というわけで、MMは笑顔になって「お前、大したもんだな!まるであれだ、レインマンみたいなやつだぜ!」

・Step6:するとヒューイは「ハハハッ……って、それ褒め言葉になってない」


▶2

ご注目いただきたいのは、Step5のMMのセリフである。曰く「お前、大したもんだな!まるであれだ、レインマンみたいなやつだぜ!」。


「レインマン」とは、かの名作映画「レインマン」の主人公のことだ。

本名はレイモンド・バビット。

彼はサヴァン症候群(知的障害や精神障害を持っているが、とある分野の能力だけは飛び抜けて高い状態)である。計算や暗記はおそろしく得意だが、一方で他人と上手くコミュニケーションを取れない。お金や物価についての理解も浅い。「毎週○曜日の□時には××をする」など、同じ行動を繰り返さずにはいられない。


以上を踏まえて考えると、つまりMMは「ヒューイ、お前ってやつは普段は何をやらせてもダメな野郎だが、しかし、敵を脅して情報を入手することに関しちゃ素晴らしい才能を持っているな!」と言っているのだ。

というわけで――「名作『レインマン』の名前が出てきたから、さぞ素敵な褒め言葉なのだろうと思いきや……(笑)」「一見すると褒めているように見えるけれど、実際は言外に『普段は何をやらせてもダメな野郎だ』と言っているわけか(笑)」「そりゃヒューイも『褒め言葉になってない』と憮然とするな(笑)」と思わず噴き出してしまった鑑賞者は少なくないだろう。


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