ダッチアングルで「恐ろしい雰囲気・不穏な雰囲気」を醸し出したり、キャラの「恐怖・不安・動揺・焦燥」を表現したりする ~映画「死霊のはらわた」の場合
◆概要
【ダッチアングルで「恐ろしい雰囲気・不穏な雰囲気」を醸し出したり、キャラの「恐怖・不安・動揺・焦燥」を表現したりする】は「空間演出、画面構成」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「死霊のはらわた」
▶1
本作の主人公はアッシュ(男性、20代?)。
ある日のこと。
アッシュたち(アッシュとその恋人、友人とその恋人、アッシュの姉)は、人里離れた山小屋を訪れた。ここで休暇を楽しく過ごそうという計画だ。
ところがひょんなことから……
・Step1:5人は、封じられていた悪霊を復活させてしまった!
・Step2:最初に悪霊に憑りつかれたのはアッシュの姉だった。彼女は悪魔のような姿と化し、そして人間の心を失った(以下、悪魔A)。
・Step3:悪魔Aは恐るべき力で大暴れ、アッシュらを殺そうとする!しかしアッシュらは、苦労の末にどうにか地下室に閉じ込めることに成功した。
ところが……
・Step4:その後、アッシュの恋人と友人の恋人も悪霊に憑りつかれ、悪魔化してしまった(悪魔B、C)。また友人は死霊に殺された。
さらにその後もいろいろあって……
・Step5:アッシュは、悪魔BとCをどうにか退けた。
・Step6:とんでもないことになったがアッシュだけはどうにか助かりそうだ……と思ったその時、アッシュは気がついた。嗚呼、地下室の扉が開いているではないか。そう、いつの間にやら悪魔Aが地下室から脱走してしまったのだ!
・Step7:悪魔Aはどこかに潜み、アッシュを殺すチャンスをうかがっているに違いない。いまにも飛びかかってくるかもしれぬ。アッシュは銃を構える。弾を込める。辺りを警戒する。ゆっくりと山小屋の中を移動し、悪魔Aを探す。アッシュの額に汗がにじむ。心臓が震える。緊張!恐怖!絶望!いまにも気が狂いそうだ!!
▶2
ご注目いただきたいのはStep7の「カメラのアングル(角度)」である。すなわち、ダッチアングルが多用されているのだ。
※ダッチアングル:カメラを傾けて、敢えて斜めに撮影する技法。
はて、なぜこのシーンではダッチアングルが多用されているのだろうか。
ずばり、世界が傾いているという普通ではない映像によって「いまにも何か恐ろしいことが起こりそうな雰囲気」を醸し出し、「うわぁ、超怖い!」「悪魔Aはあの物陰辺りに隠れているんじゃないの!?」「そろそろ来るか……?まだか……?いつ飛び出してくるんだ……?」と私たち鑑賞者をハラハラドキドキさせるためだろう。
実際、多くの鑑賞者は手に汗握り、息を詰まらせてこのシーンを見たに違いない。