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息苦しい透明な監獄からの脱出劇!!|『顔がこの世に向いてない。』(連載完結にあたって)

本日、マンガ「顔がこの世に向いてない。」(以下「顔この」)の最終話が公開されました。

本サイトではこれまで何度か「顔この」を取り上げてきましたが……完結を期に、改めて第1話から読み直してみましょう!


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<少年ジャンプ+>(無料部分あり)

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<作者Twitter>


すべては「絶望」から始まった!!


本作の主人公は、ミヤ。

※ミヤ:女子高生。「顔がこの世に向いてない」と自分を卑下している少女。根暗。


第1話冒頭で、彼女はクラスの人気者・北見から愛を告白されます。そして絶望する

なぜなら……

・選択肢1:告白を受け入れれば、「本当に告白されたと思ったの?」「自分がブサイクだって自覚したほうがいいよ」と嘲笑されるに違いない。

・選択肢2:告白を拒否すれば、「はぁ?何生意気に断ってんだよ」「ブスが告白断っていいと思ってんのか?殺すぞ!」とボコボコにされるに違いない。


そう、どちらにしても地獄なのですから!


「両刀論法」とは何か?


ミヤが陥った状況、つまり「選択肢は○○と□□しかない。そして、いずれを選んでも似たような結末を迎えるだろう」という状況を、哲学や修辞学の世界では「両刀論法(dilemma、ジレンマ)」と呼びます。


<「両刀論法」の例>

・選択肢1:仕事をする → 趣味に使う時間がなくなる → 辛い!

・選択肢2:仕事をしない → 趣味に使うお金がなくなる → 辛い!

・結論:人生オワタ \(^o^)/


<補足>

「両刀論法」は4つのタイプに分けることができます。ミヤが陥ったのは、「複雑構成的両刀論法」と呼ばれるタイプ。

詳しくは以下の書籍をご参照ください。


「前提」を妄信するな


「両刀論法」的なシチュエーションに陥った時、誰もがミヤのように絶望するでしょう。

……しかしですね、じつは「両刀論法」には突破口があるんですよ。すなわち、前提を疑えばいい。


先の例で言えば、「仕事をする → 趣味に使う時間がなくなる」というのは、本当でしょうか?同様に、「仕事をしない → 趣味に使うお金がなくなる」というのは、いかがなものか?

例えば、趣味を仕事にするとか、1日3時間労働の仕事を探すとか、あるいは仕事をしないでお金を稼ぐ方法を考えるとか、色々やりようはあるはずです。


要するに、前提が誤っているのにそれを妄信してしまうから、「○○か□□しかない!私の人生詰んだ!」と絶望することになる。「それって本当に?他にも道はあるんじゃないの?」と前提を疑えば、「両刀論法」を脱することができるのです。


しかし「前提」を妄信してしまう


とはいえ、「言うは易く行うは難し」が人生の常です。

私たちは普段、なかなか前提を疑うことができません。

そりゃね、時間やお金に余裕があって、さらに「どんな状況でもオレなら乗り越えられるさ!」という強い自信を持っている人なら、状況を冷静に分析し、「むっ!前提がおかしいではないか!」と突破口を発見できるかもしれない。


しかし、そんな人はごく稀です。大体の場合、私たちは時間やお金に余裕がない。また自信を持てずに悩んでいる。

そんな中で前提を疑うのは、なかなかしんどいものです。

どうしたって前提を妄信し、「選択肢は○○と□□しかない」と絶望してしまう。


ミヤの思い込み


話を「顔この」に戻しましょう。

上述の通り、ミヤは「笑われる or ボコボコにされる」という「両刀論法」的シチュエーションに陥ったわけですが……ここにもやはり「誤った前提」が潜んでいます。


すなわち、彼女は自己評価がひどく低いため、「私が誰かに好かれるはずがない。ましてや、人気者の北見に好かれるなぞあり得ない」と思い込んでいる。

これが誤りなのです(北見は本当にミヤのことが好き)。

しかしミヤはこの誤りに気づくことなく、絶望している……。


息苦しい透明な監獄からの脱出劇!!


「両刀論法」的シチュエーションは、じつに辛いものです。

「選択肢は○○と□□しかない。そして、いずれを選んでも似たような結末を迎えるだろう」って……なんと息苦しいのか!

自由はどこにいった!?

人生ってこんなにつまらないものなのか!?

本作冒頭のミヤは、閉塞的なシチュエーションにあって、窒息しかけているように見える。彼女は、透明な監獄に閉じ込められているのです。


しかしその後、ミヤは素晴らしい友人(ルーシー!)や恋人(北見!)の力を借りて視野を広げ、やがて「世界は案外と広い」「人生は捨てたものではない」と理解、「私が誰かに好かれるはずがない」という前提の誤りに気づくに至ります。


つまり……本作は、1人の少女が、第1話1ページ目に描かれた「両刀論法」的シチュエーションから脱する過程を描いた物語と整理できるでしょう。

傑作です!!


過去の「顔この」記事



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(担当:三葉)

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