「キャラA=弱くて、儚くて、大人しい」という描写を繰り返すことで、「本当に?」「人間は多面的な存在だ。それだのにAは弱いだけなの?本性を隠しているのでは?」といった疑問を喚起して、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する ~小説「化物語」の場合
◆概要
【「キャラA=弱くて、儚くて、大人しい」という描写を繰り返すことで、「本当に?」「人間は多面的な存在だ。それだのにAは弱いだけなの?本性を隠しているのでは?」といった疑問を喚起して、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。
◆事例研究
◇事例:小説「化物語」(上巻)
▶1
本作の主人公は、阿良々木(「あららぎ」と読む)。
彼は高1男子である。
第1話、物語は阿良々木が戦場ヶ原というクラスメイトについて語るところから始まる。
例えば最初の1行は、
これ以降も戦場ヶ原がいかに病弱か、いかに儚げか、また、成績は優秀だが友達はおらず、いつも1人きりで本を読んでいる大人しい少女であるといったことが語られる。
▶2
ご注目いただきたいのは、戦場ヶ原の弱さが物語冒頭からたっぷり描写されているという点だ。
……いや、「たっぷり」というか「執拗に」という感じである。しかも「いくら病弱といっても、えっ。そこまで!?」とツッコみたくなるようなエピソードも散見される。
これが気になるのだ。
何しろ、人間とは多面的なものである。
どれだけ強い人にもアキレス腱がある。泣きたい夜だってある。最愛の人の前ではデレたりする。「24時間365日強いだけ」という人はちょっと考えられない。
ゆえに「戦場ヶ原は弱い!儚い!大人しい!」と連呼されると……どうだろう、次第に疑念を抱くようになったという読者は少なくないと思うのだ。
そう、「戦場ヶ原は本当に弱いのか?」「何らかの理由があって、本性を隠しているのでは?」「阿良々木やクラスメイトが知らないだけで、彼女には秘密があるのでは?」「この後本性が明かされて、阿良々木は仰天することになるのでは?」という疑念だ。
そして、疑念を抱いたからには答えを知りたくなるのが人情というものである。かくして私たちは物語にのめりこみ、ページをめくる手が止まらなくなる……!
つまり、【「キャラA=弱くて、儚くて、大人しい」という描写を繰り返すことで、「本当に?」「人間は多面的な存在だ。それだのにAは弱いだけなの?本性を隠しているのでは?」といった疑問を喚起して、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する】というテクニックだ。
なお、「戦場ヶ原は本性を隠しているのではないか」という疑念は正しい。彼女のかなりぶっ飛んだ性格と、もろもろの事情がやがて明らかになる。
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