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「キャラAは成人男性だが、目を覚ますと少女の体になっていた→仰天するA→そこにAの妹がやってきた」というストーリーによって「こりゃ大騒動になるぞ(笑)」「妹は、Aが幼女を誘拐してきたと勘違いするのでは?(笑)」と先行きを期待させるも、なぜか妹はまったく驚かない、むしろ「ふむふむ」とうなずきながらAを観察し始めたといった予想外の展開で、読者・鑑賞者に驚いてもらう ~アニメ「お兄ちゃんはおしまい!」の場合

みはり「(少女と化したまひろを見て)ほうほうほう」「うんうん。まずは成功ね。それにしてもお兄ちゃんってば随分とまぁ可愛らしくなっちゃって。中学生くらいかしら?」

アニメ「お兄ちゃんはおしまい!」(第1話)


◆概要

【「キャラAは成人男性だが、目を覚ますと少女の体になっていた→仰天するA→そこにAの妹がやってきた」というストーリーによって「こりゃ大騒動になるぞ(笑)」「妹は、Aが幼女を誘拐してきたと勘違いするのでは?(笑)」と先行きを期待させるも、なぜか妹はまったく驚かない、むしろ「ふむふむ」とうなずきながらAを観察し始めたといった予想外の展開で、読者・鑑賞者に驚いてもらう】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。


◆事例研究

◇事例:アニメ「お兄ちゃんはおしまい!」(第1話)

▶1

本作の主人公は、まひろ(20歳頃の男性)。

彼は引きこもりのニートであり、自堕落な生活を送っていた。


しかし物語冒頭、

・Step1:目を覚ますと、彼は中学生頃の女の子の体になっていた

・Step2:タブレッドに反射して映る自らの姿を見て、目を疑う。二度見する。三度見する。しかし間違いない。まひろは悲鳴を上げた「こっ、これじゃあまるで……女の子じゃないか~!!」

・Step3:直後、まひろはハッとする。そういえば、股間はどうなっているのだろうか?彼は恐る恐るパンツをめくる。


とその時だった。

・Step4:ガチャ!ドアが開き、1人の少女が部屋に飛び込んできた「お兄ちゃん、おっはよ~!」。妹のみはり(17歳)である。

・Step5まひろは凍りつく。あっ、ああっ……どっ、どうしよう……!「じつは朝起きたら女の子になっていてさぁ」と苦笑すればいいのか?「性器がどうなっているのか、ちょうど確認するところだよ」と説明すればいいのか?うおー!どうしよう!!混乱するまひろ。


一方、

・Step6:兄の部屋に見ず知らずの少女がいて、しかも少女はいまにもパンツをずり下ろそうとしているという訳のわからぬ状況にも関わらず、なぜかまったく動じないみはり。彼女は驚かない。取り乱さない。平静だ。

・Step7:それどころか、まひろの全身をぐるりと観察する。「ほうほうほう」とうなづく。股間までをも無遠慮に検分する。そして、ニヤニヤ笑い出した「うんうん。まずは成功ね。それにしてもお兄ちゃんってば随分とまぁ可愛らしくなっちゃって。中学生くらいかしら?」。

・Step8:ここに至って、ようやくまひろはピンと来た。こっ、こいつ……!そう、すべての原因はみはりだったのだ。彼女が、自ら開発した性転換薬をこっそり盛ったのである。


▶2

ご注目いただきたいのは、Step4-7である。

突如少女と化したまひろが股間を確認しようとしたところで……ガチャ!ドアが開いた!!


この時、多くの鑑賞者はまひろ同様にドキッとしたに違いない。「うおっ!誰か来たぞ!」と。

そして、「まひろのことを『お兄ちゃん』と呼ぶのだから、彼女はまひろの妹なのだろう」「あーあ、こりゃ大騒動になるぞ(笑)」「まひろは何て言い訳するんだろう?(笑)」「妹は、引きこもりニートの兄が少女を誘拐してきたと誤解するんじゃないか?(笑)」などと先の展開を予想して、ワクワクしたことだろう。

ところが様子がおかしい。みはりはちっとも驚かず、それどころかまひろの全身を観察し始めたではないか。

かくして私たち鑑賞者は「えっ、一体どういうこと!?」と好奇心を刺激され、ググっと物語に引きつけられる……!


つまり、【「キャラAは成人男性だが、目を覚ますと少女の体になっていた→仰天するA→そこにAの妹がやってきた」というストーリーによって「こりゃ大騒動になるぞ(笑)」「妹は、Aが幼女を誘拐してきたと勘違いするのでは?(笑)」と先行きを期待させるも、なぜか妹はまったく驚かない、むしろ「ふむふむ」とうなずきながらAを観察し始めたといった予想外の展開で、読者・鑑賞者に驚いてもらう】というテクニックである。


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