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キャラAが「作品タイトルを含むセリフ」を口にすることで、「Aのいまのセリフは意味深だぞ。今後の展開を暗示しているのでは?」「もしかして○○になるのか?」と疑問を喚起し、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する ~小説「妹さえいればいい。」の場合

土岐「千尋くんが弟ではなく妹だったなら、伊月もあんな妹キチ●イにはならなかっただろうに……。妹さえいれば……いや、それだと伊月が作家になることもなかった気がするな……難しいもんだ……」

小説「妹さえいればいい。」(第1巻)


◆概要

【キャラAが「作品タイトルを含むセリフ」を口にすることで、「Aのいまのセリフは意味深だぞ。今後の展開を暗示しているのでは?」「もしかして○○になるのか?」と疑問を喚起し、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。


◆事例研究

◇事例:小説「妹さえいればいい。」(第1巻)

▶1

本作の主人公は、伊月(男性20歳)。

彼はプロのラノベ作家である。


伊月には作家としての才能がある。

・Step1:が、同時に大きな問題を抱えている。何を隠そう、彼はあまりにも「妹」が好きすぎるのだ!

・Step2:妹なるものが好きで好きで仕方がない。嗚呼、大好きだ!常軌を逸した妹愛!あまりにも好きすぎて、彼の作品のメインヒロインはすべて妹だ!……かくして伊月の作品はマンネリ化し、人気は低迷していた。

・Step3:なお、伊月には妹はいない。千尋という大変よくできた弟がいるだけだ。


というわけで物語序盤、

・Step4:土岐(伊月の担当編集者)が嘆くシーンがある。彼は独り言ちる。

「千尋くんが弟ではなく妹だったなら、伊月もあんな妹キチ●イにはならなかっただろうに……。妹さえいれば……いや、それだと伊月が作家になることもなかった気がするな……難しいもんだ……」

※補足1:上記の「●」は原文通り。伏せられているのは、無論「ガ」である。
※補足2:土岐は、伊月の妹愛に頭を抱えつつも、その妹愛こそが執筆の原動力になっていることを理解している。だから「難しいもんだ」と語る。


▶2

ご注目いただきたいのは、Step4の土岐のセリフである。

「千尋くんが弟ではなく妹だったなら、伊月もあんな妹キチ●イにはならなかっただろうに……。妹さえいれば……いや、それだと伊月が作家になることもなかった気がするな……難しいもんだ……」


これを読んだ時、ハッとした読者は少なくないだろう。

何しろ、本作のタイトル「妹さえいればいい。」(の一部)が含まれているのだ。作品のタイトルが含まれている以上、作品全体にとって重要な意味を持つセリフに違いない……!


というわけで多くの読者は「これは意味深なセリフだぞ」と直感し、「もしかするとこの先、伊月に妹ができるのか?そして彼の作家生命が危機に瀕するとか?」「もしくは、千尋が妹になるとか?性転換?」「あるいは、じつは千尋は性別を偽っており、本当は妹だとか?」と疑問を抱いたはずだ。

そして、疑問を抱いたら答えを知りたくなるのが人情というものである。かくして私たちは物語に引きずり込まれる。


つまり、【キャラAが「作品タイトルを含むセリフ」を口にすることで、「Aのいまのセリフは意味深だぞ。今後の展開を暗示しているのでは?」「もしかして○○になるのか?」と疑問を喚起し、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する】というテクニックである。


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