「私はラノベ作家だ。しかし素性は隠しており、正体を知る者はいない」と言い切った直後に「――いままでは」とそれを打ち消す一文を置くことで展開を急変させ、読者・鑑賞者に驚いてもらう ~小説「エロマンガ先生」の場合
◆概要
【「私はラノベ作家だ。しかし素性は隠しており、正体を知る者はいない」と言い切った直後に「――いままでは」とそれを打ち消す一文を置くことで展開を急変させ、読者・鑑賞者に驚いてもらう】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。
◆事例研究
◇事例:小説「エロマンガ先生 妹と開かずの間」(シリーズ1作目)
▶1
本作の主人公は、和泉正宗(高1男子)。
彼は現役高校生にして、プロのラノベ作家でもある。
物語序盤、正宗の職業や、今日に至るまでの略歴が紹介される場面がある。
……といった具合だ。
また、ペンネームについても説明が入る。
▶2
ご注目いただきたいのは、「――いままでは。」である。
まずは、「俺が高校生作家だということは、クラスのやつらも知らない」と断言されている。ゆえに私たち読者は「ふむふむ、秘密にしているわけね」と理解する。
が、その直後に「――いままでは」とそれを打ち消す一文が入る。かくして私たちは「えっ、秘密だったんじゃないの!?バレたの!?」と仰天する。
つまり、「一度言い切った上で→それを打ち消すことで生まれる驚き」だ。
「高校生作家だということは秘密にしていたのだが、しかしじつは先日……」といった類の文章では、この驚きを生み出すことはできないだろう。
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