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「私はラノベ作家だ。しかし素性は隠しており、正体を知る者はいない」と言い切った直後に「――いままでは」とそれを打ち消す一文を置くことで展開を急変させ、読者・鑑賞者に驚いてもらう ~小説「エロマンガ先生」の場合

家族も含め、仕事関係者以外には内緒にしているので、俺が高校生作家だということは、クラスのやつらも知らない。
――いままでは。

小説「エロマンガ先生 妹と開かずの間」(シリーズ1作目)


◆概要

【「私はラノベ作家だ。しかし素性は隠しており、正体を知る者はいない」と言い切った直後に「――いままでは」とそれを打ち消す一文を置くことで展開を急変させ、読者・鑑賞者に驚いてもらう】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。


◆事例研究

◇事例:小説「エロマンガ先生 妹と開かずの間」(シリーズ1作目)

▶1

本作の主人公は、和泉正宗(高1男子)。

彼は現役高校生にして、プロのラノベ作家でもある


物語序盤、正宗の職業や、今日に至るまでの略歴が紹介される場面がある。

俺は、小説家という職業についている。
俗称になるが、ライトノベル作家といえばわかりやすいだろう。
中学入学とほぼ同時に、ライトノベル新人賞の選考員奨励賞を受賞しデビュー。
以来三年間、学校に通いながら、兼業作家として活動している。

……といった具合だ。


また、ペンネームについても説明が入る。

ペンネームは、和泉マサムネ。ほぼ本名。
家族も含め、仕事関係者以外には内緒にしているので、俺が高校生作家だということは、クラスのやつらも知らない。
――いままでは。
「どうかな、ばれたかな」
どきどきしながら、呟く。


▶2

ご注目いただきたいのは、「――いままでは。」である。

ペンネームは、和泉マサムネ。ほぼ本名。
家族も含め、仕事関係者以外には内緒にしているので、俺が高校生作家だということは、クラスのやつらも知らない。
――いままでは。
「どうかな、ばれたかな」
どきどきしながら、呟く。


まずは、「俺が高校生作家だということは、クラスのやつらも知らない」と断言されている。ゆえに私たち読者は「ふむふむ、秘密にしているわけね」と理解する。

が、その直後に「――いままでは」とそれを打ち消す一文が入る。かくして私たちは「えっ、秘密だったんじゃないの!?バレたの!?」と仰天する

つまり、「一度言い切った上で→それを打ち消すことで生まれる驚き」だ。


「高校生作家だということは秘密にしていたのだが、しかしじつは先日……」といった類の文章では、この驚きを生み出すことはできないだろう。


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