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救急車に轢かれて死ぬ

救急隊員「た…たいへんだ!男が救急車の下じきになったぞッ!」

マンガ「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」(文庫版第29巻)


◆概要

【救急車に轢かれて死ぬ】は「自動車」に関するアイデア。

他の車ではなく、敢えて救急車による轢死を描くからには何か意味を持たせたいところだ。


◆事例研究

◇事例:マンガ「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」

吉良吉影(本作のラスボス、連続殺人犯)は、仗助(主人公)たちとの激闘を経て、最後は救急車に轢かれて死ぬ

この結末はじつに印象的だ。というのも……


▶Point1

エンディングのモノローグを見てみよう。「ぼく(広瀬康一)――の住む…ぼくたちの町……『杜王町』はとても深く傷ついた」「いや…」「正確に言えば『町が生んだ吉良吉影という怪物によって町自身は傷つけられた……』」(文庫版第29巻)。

そう、吉良吉影は単なる殺人犯ではない。長年に渡って杜王町の住民を殺し続け、「人びとが笑顔で穏やかに暮らす場 = 町」にダメージを与えたのだ。

したがって、【特定の個人・ヒーローではなく、「救急車 = 町の財産 = 町そのもの」にとどめを刺される】というのは、なるほど、まさに吉良吉影に相応しい最期と言えるだろう。


▶Point2

吉良吉影は自分が幸運だと信じきっていた。例えば、「『運』はわたしに味方してくれていると言ったよな…!」と自信たっぷりにのたまうシーンがある(文庫版第29巻)。

ところが、彼は救急車の下敷きになって死んでしまうのだ!誰かが仕組んだことではない。彼が道に倒れていたら偶然そこに救急車がやってきた。そして轢かれて死んだ

嗚呼、この悪運っぷりよ!

多くの読者が「天網恢恢疎にして漏らさず。悪人が幸運だなんて許されぬのだ。ざまぁみろ!」とスカッとしたに違いない。カタルシスばっちりの見事なエンディングだと思う。


▶Point3

吉良吉影は、平穏で静かな暮らしを望んでいた。曰く「激しい『喜び』はいらない…」「そのかわり深い『絶望』もない………」「『植物の心』のような人生を…」「そんな『平穏な生活』こそわたしの目標だったのに………」(文庫版第29巻)。

しかし実際には、彼は【「救急車 = 人の命を救うもの」に命を奪われる】という平穏でも静かでもない、非常識で皮肉な最期を迎える。

そう、彼の願いは叶わなかったのだ。いい気味である。「ざまあみさらせ」と多くの読者は溜飲が下がったに違いない


……とまぁこのように、ラスボス吉良吉影が救急車に轢かれて死ぬという結末には納得感とカタルシスがある。救急車だからこその納得感とカタルシスである。


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