【なぜ戦う?】魔法少女のモチベーション論|「ババア・イン・ザ・魔法少女」
前回までのあらすじ
三葉と清水は面白マンガを発見し、幸せな時間を過ごしたのだった!詳細はこちら(本記事の前に読むことをお勧めします)。
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キドジロウ「ババア・イン・ザ・魔法少女」
※pixivでも同じマンガをご覧になれます(こちらの方が読みやすいのでお勧めです)。なお、「二子」はキドジロウさんの変名です。
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魔法少女はなぜ戦うのか?
三葉「前回に引き続き、『魔法少女』について考えてまいりましょう」
清水「承知しました」
三葉「でね、今回は『魔法少女のモチベーション』に注目したいと思います」
清水「『モチベーション』?」
三葉「『モチベーション』とは、『魔法少女になる理由、魔法少女として戦い続ける理由』のことです。『魔法少女もの』を語る際には、これが非常に重要なポイントだと思うんですよ」
三葉「という次第です」
清水「なるほど」
三葉「で、改めて本作をチェックすると……」
三葉「『若くてかわいい自分でありたい!』というのは、(少なくても女性であれば)多くの人が納得できるモチベーションですよね」
清水「確かに」
三葉「そして、これはポジティブか、それともネガティブかと問われれば……」
清水「ポジティブでしょうね」
三葉「まさに!お婆さんの言動をご覧いただけばわかる通り、非常にポジティブでキュートなモチベーションなんですよね」
『まどマギ』のその先へ
三葉「でね、私、『お婆さんが<ポジティブでキュートなモチベーション>によって魔法少女になる』点こそが本作最大の魅力だと思うんですよ」
清水「ほぉ」
三葉「いえね、絵がかわいいとか、テンポがよいとか、特に最後のページの急転直下感が絶妙だとか様々魅力はあるわけですが……1つあげるとすれば間違いなくコレですよ」
清水「ふむ」
三葉「というのも前回ご覧いただいた通り、2019年現在、私たちは『<魔法少女もの>ジャンルの拡大・形骸化』期にいます。『バトルヒロイン』タイプから『萌え』タイプ、『熱血、ミリタリー』タイプなど、様々な魔法少女が群雄割拠する時代……ですが、その中で最も存在感を発揮しているのは『ダーク』タイプでしょう」
清水「ふむ。2011年の『魔法少女まどか☆マギカ』(以下、『まどマギ』)の大ヒット以来、『ダーク』タイプの時代が続いていると言えるでしょうね」
三葉「そして『ダーク』タイプの場合、『ダーク』という名前からして明らかですが、そのモチベーションは基本的にネガティブなんですよね」
清水「確かに」
三葉「『ダーク』系の代表格である『まどマギ』にしても、2016年に放送された『魔法少女育成計画』にしても、魔法少女が戦うのは『生き延びるため』、『戦わねば死ぬから』です」
※補足:このあたりは宇野常寛『ゼロ年代の想像力』の「決断主義/バトルロワイヤル系」に関する議論を意識して話しています。興味をお持ちの方はどうぞご一読ください。
三葉「でね、こうした『ダーク』タイプも無論面白いんですよ。日常パートとダークパートの両方を楽しめる『1粒で2度おいしい』的な魅力もありますし」
清水「ふむ」
三葉「『<もう何も恐くない>→<マミる>』のようなジェットコースター的超展開は最高に盛り上がりますし」
※「<もう何も恐くない>→<マミる>」:『まどマギ』第3話の有名なシークエンスのこと。「ダークタイプの魔法少女もの」が一気に注目されるようになった記念碑的な名場面。
清水「ふむふむ」
三葉「そして何よりも……かわいい女の子たちが酷い目に遭う話ってワクワクしますしね!」
清水「……」
三葉「とまぁ、そんな素晴らしい『ダークタイプの魔法少女もの』ですが……とはいえ、そろそろ『ネガティブなモチベーション』にも飽きてきたかな、と。『ポジティブなモチベーション』で戦ってもよいのではないか、と。率直に言ってこのように思うのです」
清水「同感ですね。そろそろ年号も変わることですし、ここは明るく陽気にね」
三葉「そうそう。別段『魔法使いサリー』に戻れとは言いませんが、Back to the Old Schoolを叫んでもよい時期だと思うんですよね」
「ポジティブなモチベーション」の困難
清水「ただアレですよね」
三葉「どれです?」
清水「『視聴者・読者が感情移入できて、しかもポジティブなモチベーション』というのはなかなか難しそうですよね」
三葉「ふーむ」
清水「『ポジティブなモチベーション』と比べれば、『ネガティブ』はまだ簡単でしょう。『何もしなければ死ぬ』状況であれば、そりゃ戦いを選ぶのも納得できますよ。ただポジティブな方は……」
三葉「まったくです。『ポジティブなモチベーション』ってすごく怪しいんですよね。『愛のために戦う』だの『正義の味方』だのと真顔で叫んでみなさいよ。もうね、胡散臭さがプンプン漂ってきますよ。目的は何だ?カネか?どうせカネだろ?騙されねぇよ!コンチクショウ!……という具合にね」
清水「確かに」
三葉「ところが……」
清水「ええ」
三葉「本作はここが上手いんですよね。『若くてかわいい自分でありたい』というのは、上述の通り、多くの人が共感でき、しかもポジティブなモチベーションです。『なぜ戦っているんです?』→『若くて、かわいくいられるからですよ。ニコニコ』……じつに説得力がある」
清水「なるほど」
三葉「『お婆さんはあくまでも自分のために戦っており、結果的にそれが世の中の役に立っている』という図式です。愛だの正義だのと大上段に構えてきた従来のヒーローと比べるとやや物足りない気もしますが……だからこそ、今の時代に共感され得るのではないでしょうか」
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(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)
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