見出し画像

「事件発生→捜査開始→謎の男が事件解決のカギとなるビデオテープを持って現れる」というストーリーを膨らませて、「事件発生→捜査開始→事件解決のカギとなるビデオテープが存在すると判明→ビデオテープの持ち主を訪問する。ところがすでに何者かが持ち去った後だった→謎の男がビデオテープを持って現れる」にすることで作中の「謎」を増やし、読者・鑑賞者の好奇心をより一層刺激する ~映画「機動警察パトレイバー 2 the Movie」の場合

映像制作会社のスタッフ「おかしいなぁ」
松井刑事「はぁ?」
映像制作会社のスタッフ「テープはもう証拠品として提出済みですけどね」
松井刑事「……!?」

映画「機動警察パトレイバー 2 the Movie」




◆概要

【「事件発生→捜査開始→謎の男が事件解決のカギとなるビデオテープを持って現れる」というストーリーを膨らませて、「事件発生→捜査開始→事件解決のカギとなるビデオテープが存在すると判明→ビデオテープの持ち主を訪問する。ところがすでに何者かが持ち去った後だった→謎の男がビデオテープを持って現れる」にすることで作中の「謎」を増やし、読者・鑑賞者の好奇心をより一層刺激する】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「機動警察パトレイバー 2 the Movie」

▶1

本作の主要キャラの1人・後藤(中年男性)。

彼は、警視庁の警部補である。


物語序盤、

・Step1横浜ベイブリッジが何者かによって爆破された。

・Step2:とんでもない大事件だ!犯人は?その目的は?真相を明らかにすべく政府や警察が動き始めた


松井刑事(後藤の仲間)も捜査にあたる。

・Step3:やがて彼は「爆破当時、とある映像制作会社のスタッフがたまたまベイブリッジ周辺を撮影していた」という情報を得た。いいぞ!きっと何かが映り込んでいるに違いない!

・Step4:というわけで、松井刑事はすぐに映像制作会社に連絡を入れ、ビデオテープを貸してほしいと頼んだ。ところが……えっ!?もう警察に提出済みだと言う。

・Step5:松井刑事は愕然とする。警察がビデオテープを押収しただなんて話は聞いていない。何者かが警察を偽って持ち去ったのか?もしくは、警察の中で何か陰謀が渦巻いているとか?


で、次のシーン。

・Step6:舞台は後藤の職場に移る。

・Step7:後藤が、同僚のしのぶと話をしているとやがて来客。いかにも怪しい男がやってきた。男の名は荒川。陸上自衛隊の調査部に所属していると言う。

・Step8荒川はビデオテープを差し出して、再生してみてほしいと言った。――そう、松井刑事が追っていたあのビデオテープである。つまり荒川は、松井刑事よりも早くビデオテープの存在を察知し、警察を偽って映像制作会社にアプローチ、入手していたというわけだ。

・Step9:その後、後藤としのぶは、荒川と共にビデオテープの映像を見る。案の定、そこには重大なヒントが映り込んでいた。かくして物語はいま大きく動き出す――。


▶2

以上をまとめると、

・【1】Step1-2:事件発生。皆が捜査を開始する。

・【2】Step3-5:事件解決のカギとなるであろうビデオテープの存在が明らかになる。ところが、すでに何者かによって持ち去られた後だった

・【3】Step6-9謎の男(荒川)がビデオテープを持って登場。後藤らがビデオテープの映像を見る。


ご注目いただきたいのはStep3-5。

じつはこれ、ストーリーの進行上はあってもなくてもどちらでもいいシーンだ。だってそうだろう、「捜査開始→謎の男が後藤らを訪問し、『重大なヒントを持っている』と言ってビデオテープを差し出す」という展開でもまったく差し支えないはずだ。むしろ、この方がすっきりしていてわかりやすい物語になりそうだ。


しかし――「読者・鑑賞者を引きつける」という観点からすれば話は別。Step3-5は重要な役割を果たしている。

すなわち、「何者かがビデオテープを持ち去った後だった」という謎が提示された時、多くの鑑賞者は「一体何が起きているんだ!?」「誰が持ち去ったんだ!?」「なぜ持ち去ったんだ!?」などと疑問を抱いたはずだ。そして、疑問を抱いたからには答えを知りたくなるのが人情というものである。かくして私たちはググっと物語に引き込まれる……!


つまり、【「事件発生→捜査開始→謎の男が事件解決のカギとなるビデオテープを持って現れる」というストーリーを膨らませて、「事件発生→捜査開始→事件解決のカギとなるビデオテープが存在すると判明→ビデオテープの持ち主を訪問する。ところがすでに何者かが持ち去った後だった→謎の男がビデオテープを持って現れる」にすることで作中の「謎」を増やし、読者・鑑賞者の好奇心をより一層刺激する】というテクニックである。


◆他のアイデアも見る👀

この記事が参加している募集

#とは

57,754件

最後までご覧いただきありがとうございます! 頂戴したサポートはすべてコンテンツ制作に使います!