シーンの移行に伴って「背景」は変化するが、「キャラ」は画面の同じ位置で、同じ表情・姿勢のまま→キャラが受けたショックや感動の強さを強調する ~映画「ベイビー・ドライバー」の場合
◆概要
【シーンの移行に伴って「背景」は変化するが、「キャラ」は画面の同じ位置で、同じ表情・姿勢のまま→キャラが受けたショックや感動の強さを強調する】は「シーンとシーンのつなぎ方」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「ベイビー・ドライバー」
▶1
本作の主人公はベイビー(20代の男性)。
彼は自動車運転の天才であり、いまはとある強盗団でゲッタウェイドライバー(逃走担当のドライバー)を務めている。
要するに犯罪者集団の一員だ。しかし他のメンバーとは違って、根っからの悪人ではない。できる限り一般市民に迷惑はかけたくないし、殺人なんて以ての外だ!
そんなある日のこと。
・Step1:とある銀行を襲撃した際、J.D.(メンバーの1人)が立て続けにミスを犯した。ベイビーの人間離れした運転のおかげで全員無事帰還できたものの、バッツ(メンバーの1人、やたら血の気が多い)は怒り心頭だ。
・Step2:その後、一同は隠れ家で金を分配した。
・Step3:さぁ帰宅しようと駐車場にやってきたベイビー。そこで、リーダーのドクから指示を受けた「その車を始末しておいてくれ」。
・Step4:じつは車のトランクには……J.D.の遺体が入っていた。殺害したのはバッツ。「こんな役立たずは死んで当然だ」ということで、隠れ家に戻ってきてから始末してしまったのだ。ドクも「まぁ仕方があるまい」と容認している様子。一方、ベイビーはショックを受ける。彼は呆然と立ち尽くす。「いくら何でも殺すことはないだろ!」「仮にも仲間じゃないのか!?」なんて思っているのだろう。
・Step5:次の瞬間、シーンが切り替わった。場所は廃車処理場。先の車がいままさにスクラップにされようとしている。ベイビーは相変わらず呆然と立ち尽くし、それをじっと見つめている。
▶2
さて、ご注目いただきたいのは「Step4から5への移行」。
じつはここ、
・シーンの移行に伴って「背景(=ベイビーがいる場所)」は変化する
・しかし、ベイビーは画面の同じ位置で、同じ姿勢のまま
……なのだ。
「シーンを跨いでも(=時間や場所が変化しても)ベイビーは微動だにしない」ということで、彼が非常に強いショックを受け、呆然としているのが伝わってくる。
逆に言えば、「ベイビーが強いショックを受けていること=殺人すら厭わぬ他のメンバーとは違って、根っからの悪人ではないこと」を強調するために、【「背景」は変化するが、「キャラ」は画面の同じ位置で、同じ姿勢のまま】というテクニックが使われているわけだ。
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