【解説】島耕作も、クレヨンしんちゃんもスピンオフ。こいつもそいつもあいつもスピンオフ。
クリエイターのためのニュース解説『クリエイターニュース』です。
三葉「こんにちは。『クリエイターニュース』のお時間です」
<参考記事>
・『騎士団長 島耕作』:コミックナタリー
三葉「というわけで、『島耕作』、そして『クレヨンしんちゃん』という老舗コンテンツのスピンオフについて、立て続けに発表がありました。本記事ではこのニュースについて深く考察してまいります」
清水「承知しました」
『騎士団長 島耕作』は好意的に受け入れられている?
三葉「まずは、『騎士団長 島耕作』。言わずと知れた大作『島耕作』シリーズのスピンオフですね」
清水「はい」
三葉「ここで一度、同シリーズの変遷を振り返ってみましょう」
三葉「すべての始まりは1983年の『課長 島耕作』。その後、順調に出世を重ねた島耕作は、2008年には社長に就任。そして2017年のスピンオフ『島耕作の事件簿』を経て、今回『騎士団長 島耕作』に至る、と」
清水「島耕作氏の肩書が『会長兼騎士団長』になるわけですね」
三葉「『騎士団長』は、島耕作が中世風の世界に転移するストーリー、いわゆる『異世界転移もの』らしいですね」
清水「ええ」
三葉「『異世界転移もの』とは、昨今、Web小説やライトノベル、それらを原作とするアニメなどでよく見かけるストーリーパターンのことです。根強いファンを持つ一方で、『どれもこれも似通った設定、世界観であること』や『あまりにも激しいご都合主義』が批判されることも少なくありません」
※「異世界転移もの」については、この記事で解説しています。ご参照ください。
清水「はい」
三葉「『騎士団長』は、『島耕作』版の『異世界転移もの』というわけですが……いかが思われますか?」
清水「そうですね。おっしゃる通り、特にここ数年、『異世界転移もの』に対する風当たりはかなり強くなっています」
三葉「となると、今回のスピンオフについても世間の評価は厳しいと……」
清水「いえ、ところがどっこい、私の周りのマンガファン、アニメファンの反応を見る限り、かなり好意的に受け入れられていると感じます」
三葉「ほぉ」
清水「ただ考えてみればこれは当然のことで、私たちがうんざりしていたのはマンネリ化した『異世界転移もの』ですからね。『島耕作』と『異世界転移もの』の融合には目新しさがあり、アンチ『異世界転移もの』派もワクワクしているのでしょう」
『SUPER SHIRO』の主人公は……
三葉「続いて『SUPER SHIRO』にまいりましょう。こちらは、『クレヨンしんちゃん』のスピンオフ作品ですね」
清水「はい」
三葉「『島耕作』シリーズ同様、『クレヨンしんちゃん』についてもその変遷を振り返ってみましょう」
清水「ほぉ。『クレヨンしんちゃん』は既に4つもスピンオフ作品があったのですね」
三葉「ええ、今回制作が決まった『SUPER SHIRO』は5つ目のスピンオフ作品となります。そんな本作の主人公は野原家のペット・シロとのことで、一部に大きな衝撃が走っているそうです」
清水「『衝撃』ですか?」
三葉「ええ。と申しますのも、『プッチプチひまわり』でひまわり、『アクション仮面』でアクション仮面、『昼飯の流儀』でひろしがそれぞれ主人公を務めました。そして今回、新たなスピンオフということで、満を持してみさえの登場かと思いきや……まさかのシロ!」
清水「うーむ……」
三葉「全国100万のみさえファンはいま一体如何なる心境か、大変気になるところであります」
清水「……みさえファンのみなさんには『ご愁傷さまです』と申し上げたいと思いますが、その一方で、シロを主人公にしたのは英断だと思いますね」
三葉「ほぉ。みさえは犬にも劣るクソ野郎だと?」
清水「……いえ、そんな過激なことはいっていません……」
三葉「それでは一体なぜ?」
清水「本作は世界展開を目指しているとのことですからね。となると、やはり主婦ものよりも動物ものでしょう」
三葉「うーむ、なるほど」
昨今の代表的スピンオフ作品
三葉「ところで世の中にはたくさんのスピンオフ作品がありますが、昨今話題になったものといえば……」
清水「まず、『賭博黙示録カイジ』及びその続編をベースとした作品群でしょう」
清水「『カイジ』はこれまでにアニメ化、実写映画化されてきましたが、2018年7~12月にはスピンオフの『中間管理録トネガワ』もアニメになりました」
※アニメ『中間管理録トネガワ』については、この記事であらすじや見どころなどをご紹介しています。ご参照ください。
三葉「ふむふむ」
清水「また、『とある魔術の禁書目録』及び続編のスピンオフ作品も忘れることはできません」
清水「特に注目されているのは、『とある科学の超電磁砲』と『とある科学の一方通行』でしょう。2018年10月、両作品のアニメ化が発表されました。『超電磁砲』の方は、今回が第3期になります」
三葉「そうそう!そうですよね!何を隠そう私、『超電磁砲』の大ファンでして。美琴、黒子、初春、そして佐天さんをまた見ることができるかと思うと、もう本当に楽しみで楽しみで……」
みんな、スピンオフしようぜ!
三葉「さて、ここからは『やってみよう』のコーナーです。『もしあの作品のスピンオフを作るなら……』という思考実験をしてみましょう」
清水「承知しました」
三葉「さて、取り上げる作品ですが……」
清水「一般的には、スピンオフするのはその時々の話題作よりも、比較的長期間慣れ親しまれてきた作品の方がよいでしょうね」
三葉「なるほど」
清水「まずは『サザエさん』でいかがでしょうか」
三葉「面白そうですね」
議論1:磯野家を異世界転移させよう!(1)
三葉「さて、『サザエさん』のスピンオフ作品を作るなら……ということで考えてみましょう」
清水「そうですねぇ……まず昨今のトレンドを踏まえ、磯野家が丸ごと異世界転移するというのはいかがでしょうか?」
三葉「なるほど。トレンドということでしたら、『転移後の世界における磯野家は悪者で、自分たち以外にも転移してきた人がいるかもしれないと探し回る』なんてストーリーですかね」
清水「うーむ……完全に『オーバーロード』のパクリですね」
三葉「わかりましたか?」
清水「いや、わかりますよ」
※アニメ『オーバーロード』については、この記事であらすじや見どころなどをご紹介しています。ご参照ください。
三葉「まぁ、大丈夫ですよ。一般知名度は『サザエさん』の方が高いので、いつの間にか『原点は<サザエさん>。<オバロ>がパクった』ということになりますから」
清水「ひどい……」
議論2:磯野家を異世界転移させよう!(2)
清水「磯野家が現代に転移してきて、普通に生活するだけでも楽しそうですよね」
三葉「うーむ……すぐにトラブルが起きそうですねぇ。『あの家の若奥さん、いつも小学生の弟を追い回してるけど、アレ、通報しなくて大丈夫?』なんて」
議論3:磯野家版『孤独のグルメ』、その主人公は……
三葉「異世界転移だけではなく……『グルメマンガ』とか『グルメドラマ』というジャンルがありますよね」
清水「『孤独のグルメ』とか『深夜食堂』とか」
三葉「ええ、マンガでいえば『野原ひろし 昼メシの流儀』や『ワカコ酒』ですね」
清水「ふむふむ」
三葉「磯野家版『孤独のグルメ』というのはどうかなと思いまして」
清水「なるほど」
三葉「タイトルは……ズバリ『ノリスケ 昼メシの流儀』。すなわち、主演はノリスケです。毎回毎回、『今日も懐が寂しいなぁ……そうだ!磯野家でご馳走になろう』というところから始まりまして、ノリスケが図々しくも磯野家にやって来る話です。昨夜の残り物や店屋物をご馳走になり、あるいは無断で冷蔵庫を漁り、『孤独のグルメ』風にああだこうだモノローグが流れるという展開です」
清水「……ノリスケ、セコイですねぇ」
三葉「奴はそういう男ですよ」
清水「……」
議論4:傑作!『ドラえもん』版ハーレム!
清水「続いて、『ドラえもん』のスピンオフについて考えてみましょう」
三葉「承知しました」
清水「『ドラえもん』の場合、大長編(映画)で様々な世界を訪問しているので、異世界転移系スピンオフでは面白くありませんね」
三葉「同様に、のび太の両親の馴れ初めから、のび太の結婚、更にその子孫に至るまで、既に本編で様々なシーンが描かれています」
清水「性別が逆転した世界なんてのも、やはり『ドラえもん』本編で描かれていましたね」
三葉「『ドラえもん』のスピンオフはなかなか難しいですねぇ……」
清水「うーむ……」
三葉「……」
清水「……」
三葉「……」
清水「……」
三葉「……アダルト路線はいかがでしょう。『萌え』でも構いませんが、いずれにしろ『ドラえもん』は子供向けマンガなので、大人を対象にすることで斬新なスピンオフが実現し得ると思います」
清水「ふーむ、なるほど。そういうことでしたら、ハーレムものが面白いと思います」
三葉「ほぉ!誰を主人公に据える想定ですか?あっ、もしくはしずかちゃんを主人公にして逆ハーレム?」
清水「そうですねぇ……『のび太を主人公にして、次々と魅力的なヒロインを登場させる。そしてしずかちゃんが焦る』という筋立てはいかがでしょう?」
三葉「むっ!素晴らしい!慧眼に感服しました」
清水「これはどうも」
三葉「いやぁ、ストーリーが次々浮かんできますよ。そう……例えばライバル登場に焦ったしずかちゃんがのび太に電話をしてくるというのはいかがでしょう?『のび太さん、私、今からお風呂に入るわよ』みたいな」
清水「うーむ……ビッチ臭が漂いますねぇ」
三葉「彼女も必死なんですよ」
清水「……うーむ」
三葉「一方、のび太はああいう性格ですからね。しずかちゃんが必死になって迫れば迫るほど、のび太の気持ちは冷めていきます」
清水「ふむ」
三葉「そうなると、当然しずかちゃんはドラえもんに泣きつくことでしょう」
清水「なるほど。ドラえもんとしては未来が変わっては困るので、しずかちゃんに協力するわけですね」
三葉「ドラえもんがのび太ではなく、しずかちゃんの面倒をみることになります。ドラえもんの口調だって変わってきます。『源さぁ、お前、泣いていても何も解決しないんだぜ。道具は貸してやるけど、お前も腹を据えろよな』みたいな」
清水「ドラえもん、厳しいですねぇ……」
三葉「続いて登場するのはジャイアン。彼は友情に熱い男です。のび太をぶん殴って『目を覚ませ!お前にはしずかちゃんしかいねぇだろ!』と叫ぶ」
清水「燃える展開ですねぇ」
三葉「無論スネ夫だって黙っていません。しずかちゃんのライバルに金を握らせて、のび太を忘れさせたり」
清水「うーむ!傑作ですよ、これ」
三葉「いわゆるハーレムものの使い古された設定・展開だとしても、『ドラえもん』に当てはめるだけで非常に面白くなるものですね」
清水「あとは小学館や藤子プロの許可を得られるかが問題ですが……」
三葉「許可しないでしょうねぇ」
清水「でしょうねぇ」
三葉「……」
清水「……」
議論5:出木杉くんの憂鬱
清水「『ドラえもん』のスピンオフですが、また別の方向性として、出木杉くんを主役に据えるのはいかがでしょう?」
三葉「面白いですねぇ。……あっ!それなら、『実は出木杉くんは人生2周目』という設定はいかがでしょう」
清水「ほぉ!」
三葉「そうなると、彼が勉強もスポーツも万能なのが納得できます。そして、彼は『なぜ自分が人生をループしてしまっているのか』、その理由を必死に突き止めようとしているとか」
清水「うーむ、『ドラえもん』世界の核心的な何かに触れそうなネタですね」
議論6:水戸黄門は、転移後の世界で何をするのか?
清水「アニメから離れますが……古くから親しまれている作品ということで、『水戸黄門』のスピンオフはいかがでしょう?」
三葉「ほぉ、いいですねぇ……何よりも、元ネタが幕末頃に誕生したとされる『水戸黄門漫遊記』ですからね、権利関係を気にせず創作できるのがよいですね」
清水「おっしゃる通り」
三葉「ストーリーとしてはどのようなものが考えられるでしょうか?」
清水「ここはシンプルに、水戸黄門一同が異世界に転移することにしましょう。彼らは手練れですからね、当然素晴らしいステータスを得ます。『侍レベル99』とか」
三葉「なるほど」
清水「そんな彼らが何をするかといえば……」
三葉「……」
清水「……」
三葉「……世直しでしょうか」
清水「……まぁ、世直しでしょうねぇ」
三葉「うーむ、そうなると……彼らはきっと、悪のゴブリンに苦しめられている町の人々を救うことになるんでしょうね」
清水「そうですね」
三葉「そしてクライマックス……ゴブリンが『その剣技……貴様ら、一体何奴!?』→『こちらにおわすは侍レベル99、水戸光圀公であらせられるぞ!頭が高い。控えおろう!』→『ゲーッ!』→一同土下座……という具合でしょうか」
清水「……いつもと同じ展開ですね」
三葉「まぁ、どこへ行こうと水戸黄門は水戸黄門というわけですね」
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以上です。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
では、次の記事でまたお会いしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)
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