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#1 /100人カイギ founder 高嶋大介さん「100人カイギそのものがなくなることがゴールかなと考えている自分もいるんです」

100人カイギを創った人といえば、そう、高嶋大介さんです。2016年に港区で100人カイギを立ち上げた高嶋さんに、「100人カイギ創立前」のストーリーやコロナ禍での焦燥、そしてこれからのことを聞いてみました。そこには、高嶋さんが自ら名乗る「100人カイギ見届け人」という名前に込められた想いが見えてきました。

高嶋大介さん プロフィール
100人カイギ founder/見届け人
株式会社 INTO THE FABRIC 代表取締役
働く人の意識を変えたいと思い、一般社団法人INTO THE FABRICを設立する。「人と人がつながる」「気づき」の場つくりを得意とし、組織/戦略デザイン、コミュニティデザイン、イベント/マーケティングを行う。ゆるいつながりがこれからの社会を変えると信じ「100人カイギ」をはじめとした働く人に変化を促す活動を行う。サウナと散歩好き。

ミニマムなオペレーションができた意外な理由

――まずは、高嶋さんが100人カイギを始めるきっかけについて、改めてお聞かせください。

実は、それまでは「港区の人」っていう意識はなかったんです。たまたまオフィスが港区にあるだけで、港区のために仕事をしているわけではないし。でも、あるとき、一緒に仕事をしていた港区の行政の方に「港区の企業だから一緒に何かしませんか?」と声をかけていただき、改めて自分が港区にある企業なんだと気がついたんです。

――それは意外でした。でもそこで「そんな意識なかったなぁ」で終わらずに、一歩進んで「港区でつながりを作る活動をやろう」と思えたってことですよね。そこには、何があったのでしょうか?

ルーツでいうと、もともと小学校と中学校が港区だったんですよ。高校で引っ越して大学は地方に行ったのですが、子どもの頃親しんでいた港区にゆかりがあったというのは大きかったですね。
それに、それまでも色んな場所を応援する活動はしていたので、いろんな人と出会うのは面白いというのはずっと自分の中にあったから、これを港区でどんな風に包括できるんだろうというのが最初のきっかけですね。

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――高嶋さんが「港区で人を招いてイベントをしたい」と思った種が100人カイギになっていったわけですが、「100人カイギ」というコンセプトやパッケージは高嶋さんが1人で考えたんですか?

そうですね。
「100人カイギ」という名称で、ゲストは5人で、100人になったら解散で、というコンセプトは1人で練っていました。

――それって、今も変わっていない?

ほとんど変わってないですね。微調整はあります。港区で何度かやっている中で「こういう要素が必要だな」「もっとこうやればよかったな」というがある度に微調整をいろいろして、今の形式になっています。

――例えばどんな調整があったのでしょうか?

最初のアイスブレイクなどですね。あれは、開始当初はなかったんです。当時の時間配分は今では覚えていませんが、20回かけながら微調整してまたテストしてを繰り返しながら、今の最終形になって、それからほとんど変わっていないです。

――それだけ完成された形式ということですよね!

余計なものをしていないんですよね。実は当時の僕って、知り合いがあまりいなかったんです。

――ええ! 意外です。

Facebookの友だちも200人くらいしかいなくて(笑)。全然知り合いもいないし、イベントでも人を呼べないしで、結局最初は僕ともう1人の友人とで始めることになりました。

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――毎月2人で運営って、大変ですよね……。

だからこそ、当日のオペレーションがミニマムになる設計を考えたんです。5人のゲストを呼ぶことは大変だけど、呼んでしまえば当日の準備はミニマムで済む設計になってるんです。

――確かに、私も運営していて当日の準備がほとんどないなと感じます。なので負担が少ない。

最初の頃は、「ファシリテーターとして自分が場を一生懸命作らないと」と思ってたんです。でもふと気づくと、お客さんは結局5人のゲストの話を聞くだけで盛り上がってるんですよね。
当時はリアル開催だったし懇親会もやっていたんですが、懇親会も追い出さないと帰らないくらい盛り上がってるわけです。

――すごい熱気が渦巻いていたんですね! その光景が目に浮かびます。

そういう場を作れていることに気がついて、「司会の役割って何だろう?」ということに行きつきました。コミュニティの場づくりっていろんな形があると思うんですが、強烈な個性を持つ人の周りに集まるコミュニティもありますよね。

――はい。有名な方のオンラインサロンとか、そういうタイプですよね。

一方で、「そういうのがなくても十分できるんだ」と気づいたんです。自分じゃなきゃできない場ではないというのもあるし、いうならばいわゆる「普通の人」5人の話を聞くだけで参加者はすごく喜んで帰ってくれるっていう。裏を返すと、それって誰がやっても同じ場や同じ盛り上がりを作れるのでは?というのを、港区で20回やったタイミングで思うようになったんです。


「100人カイギは再現できるか」コミュニティを作る社会実験

――その考えが、他の地域での開催につながっていくわけですね。

100人カイギって、ある意味コミュニティを作る社会実験をしていると思っているんです。いろんな人が港区100人カイギに来てくれてありがとうございましたというのと同時に、こういう場は他の人にも受け入れてもらえるのか、同じものが再現できるのかを実験しようと思ったのが、渋谷区100人カイギです。

――渋谷区。港区の次に始まった、100人カイギ2番目の地域ですね。

実は渋谷区だけが、唯一メンバーを僕が集めたんですよ。

――そうなんですね!

実験をしなきゃいけないので、オペレーションができる人、渋谷で開催場所を持っている人ということで、金川さん、木継さん、柳川さんの3名を僕が声をかけました。

――その3人はお知り合いだったのですか?

いえ、つながりのない人たちでした。

――初対面(笑)。高嶋さんの声掛けでチームを組んでもらったんですね。高嶋さんも一緒に運営されていたんですか?

初期に少しだけお手伝いしていました。3人が作るべき場なのに自分が介入しすぎているのではないかと思うようになり、それはよくないと思って少しずつ離れるようにしたんです。

――「100人カイギは再現できるか」という実験としての渋谷区100人カイギだったわけですが、検証する場としてはどうだったのでしょうか?

再現できたんじゃないかなと思います。。渋谷区100人カイギが回り出すと、次々と「うちでもやりたい」という声が上がり始めたんです。

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――次に相模原、横浜と続いていったんですよね。

相模原は、以前から知り合いだった依田さんが地元の若手兄弟に「100人カイギっていうのがあるよ」と紹介してくれたところからつながりました。横浜は、渋谷区100人カイギの柳川さんの同僚だったの加藤翼くんが、柳川さんが100人カイギをやっているのを見ていて横浜でも、と立ち上げてくれたんです。

――実際に参加された方や話を聞いた方が「これ面白い」「自分たちもやりたい」っていう風に広がっていったんですね。

そうなんです。参加された人や見ていた人たちが徐々に「面白そうだよ」って広げてくれて、「こういうのを作りたい」って思ってくれたから広がった。面白いですよね。1個が2個になって、2個が4つになってくると段々増えてくるっていう。

――バイバインですね!

実はね、この時点ではまだ100人カイギのロゴなどはなかったんですよ。

――え! そうなんですか。

4つ目の横浜が立ち上がって、他の地域からも問い合わせが来ていて、そのくらいのときに「これ、広がってきたかも。ヤバい」となったんです。

――ヤバい(笑)

「ヤバい」といっても広がってきてることがヤバいのではなくて、「せっかくならこういうつながりの場のムーブメントを起こしたいよね」と思って、そのためにブランド作りをしっかりしないといけないと考えたんです。

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――そこでクラウドファンディングを始めたんですね!

クラウドファンディングは、ホームページとロゴの制作費を集めることと、知名度を上げるということと、2つの目的がありました。ちゃんとブランドを作るために仕掛けていった感じです。100人カイギのホームページを立ち上げることで全ての100人カイギの情報を一元化することができました。ここでの仕掛けが功を奏したのか、この年に一気に30以上に増えました。

――2019年ですよね! 私が運営する目黒駅前100人カイギもこの年に始まりました。一気に広がりましたよね。

全てが止まった2020年2月。でも、100人カイギが動き続けているのを見せなきゃいけない

一気に広がりました。同じペースでどんどん増えていくはずだったんです。でもまさか、2020年に、コロナが来るとは思わなかった。

――2020年2月、新型コロナウイルスの影響で、すべての100人カイギが一時停止しましたよね。新しい地域の開催も、延期になったり取りやめになったりしたのでしょうか?

そうですね。「やります」と手を挙げていただいたけど、コロナだから立ち上げることができないのでやめます、というところもありました。

――それまで順調に行ってたからこそ、急ブレーキがかかってしまった。港区で始まった100人カイギが、「人が集まることでつながりができていく」というデザインでどんどん他の地域にも広がったり、100人カイギsummitで全国のつながりもできたり、ライター100人カイギなどテーマ軸でつながったりという感じで醸されていったコミュニティが、コロナでボロボロになったという感じがありましたか?

それは、ありますね。全部の地域が止まり、順調に広がっていった新規立ち上げも止まり。あと、実は、2020年から海外でもやりたいという話がいくつもあったんです。グローバル展開も止まってしまった。もう真っ暗ですよ。

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――あの頃の空気感を思い出すだけで今も胸が痛みます……。

でも、せっかく続いてきたものを止められない。みんな動けないけど、100人カイギが動き続けているのを見せなきゃいけない。何か「100人カイギ」というものがFacebookなどのSNS上で常に流れている状態を作っていかないと、この「火」が本当に死んでしまうと思いました。それで始めたのが100人カイギchannelです。

――100人カイギchannel。各地に登壇されたゲストの方に、高嶋さんと、川崎100人カイギの千葉さんのお2人がお話を聞いていく、というオンライントーク番組ですね。目黒駅前100人カイギのゲストにもご出演いただきました。各地域と連携してのゲストのブッキングや告知、オンライン配信のオペレーションなど、毎週開催するのは大変だったんじゃないかと思います。

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そうやっているうちに、オンライン開催にシフトする地域が出てきたり、新しく始める地域の中でも「オンラインでやります」というところも出てきたりと、オンライン開催も増えていきました。

――最初からオンラインで始める地域もありましたよね。

和光市、大田区、金沢、新潟市。この辺りが、リアルで始める予定だったのがコロナによってオンライン開催にシフトした「オンラインシフト組」ですね。

――最初からオンライン開催の地域ですね! そうすると、これ以降の地域は「そもそもオンラインで始める」という地域なんですね。その一方で、リアル開催していた地域がオンラインにシフトしたり、オンラインとリアルのハイブリット開催をしたり、となっていったんですよね。もっと言うと、リアル開催をするためにコロナが落ち着くまで休止を続ける、という地域もあったり。

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そうですね。コミュニティとしてリアルで集まらなきゃ嫌だという地域と、こんな時代だからこそ「リアルで集まる以外でも別の道がないか」っていうふうに動き出した地域とに分かれました。

――それに加え、「最初からオンライン」でコミュニティ運営を想定する地域も出てきたり。

まさに、そこでいろんな新しい進化も起きているんですよね。コロナはになって2年経った今僕が思うことは、参加する方の意識の変化です。コミュニティの作り手がリアルにこだわっていても、必ずしもリアルで来てくれるとは限らない。オンラインなら顔を出さずに手軽に入れるから良いよね、っていう感覚を得てしまった人たちは、リアルに戻ることはないかもしれません。どうやったら戻って来てくれるんだろうねと。

――なるほど……。今お話聞いていて思ったのは、結局「作り手側がどういうコミュニティを作りたいのかにもよるのかな」ということかと。めちゃくちゃ濃密な地域密着のゴテゴテのコミュニティを絶対作りたいから絶対にリアルにこだわる!であったり、気軽に参加してもらって知り合いを作ってもらうようなコミュニティを作る、であったり。「何を求めて100人カイギをやるのか」っていうところを、運営する人たちが設定するフェーズになっているのかもしれないと感じました。

そうですね。だから、本部からは「オンラインでやりなさい」とは言わないんです。それぞれの形でやってくれたらいいと。

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――私が運営に携わっている目黒駅前100人カイギは、どちらかというとコテコテの地域密着なコミュニティの実現を目指しているからリアル開催にこだわっているんですが、一方でオンライン開催の地域の100人カイギに参加したら、その良さがあるというのも感じます。例えば、大田区100人カイギの高橋さんが、「100人カイギの旅」という名前を付けて、オンラインのいろんな100人カイギで出会った方々を訪ねる旅行をされていたんですよ。

ああ、やってましたね!

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――あれ、すごく良いなと思って。オンラインだから遠い場所で開催されていても気軽に参加できて、そこで知り合った人とその土地に行ったときに関係性を深められる。そういう、オンラインならではの可能性と広がりを感じました。

そうなんです。例えば、ある地方に行くからその地域の運営者の方に「その地域に行くんだけどどこかいいところありませんか?」って聞いたら、すごく紹介してくるわけですよ。コミュニティの持つ魅力がオンラインでも形成され始めてると思っています。

100人カイギが当たり前にあちこちで開催されている未来

――コロナ休止を経ての2022年、そしてこれからの100人カイギは、どうなっていきますか?

まずは、今年来年で10以上の地域が解散を迎えます。

――そうでした! 前を走っていた港区、渋谷に続いて、それこそコロナ以降に始まった地域もこれからどんどん解散を迎えるんですよね。「100人カイギ見届け人」としては、どんな気分でしょうか?

例えば20年後とか30年後とか、100人カイギというものがあちこちで普通にあって、その頃には多分誰も僕が始めたっていうことは知らなくて。その時代にふと知らない地域に行ったときちょうどやっていた100人カイギにふらっと参加したり。

――「実は俺……」って言いますか!?

言わない。言わないだろうなぁ。

――言わないんだ! 言えばいいのに(笑)。

継続することで文化として100人カイギというものが続いている様子を見ながら、にやにやして帰るんだろうな、って思うんです。多分。

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――まさに見届け人ですね!

そういう、「100人カイギ」がつながりを作る文化として残ってほしいっていう思いもあれば、一方で100人カイギみたいなものがないと人と人とが知り合えない世の中っていうのはおかしいなとも思っていて。

――確かに、イベントやプロジェクトがなくてもつながりができるというのが理想ですよね。

だから、100人カイギそのものがなくなることがゴールかなと考えている自分もいるんです。相対する気持ちが2つある。

――でも、100人カイギが必要ない社会になったとしても、あえて100人カイギをやるとまた面白いことができるようになってくるから、やっぱあったほうがいいんじゃないかな。別のものになって定着していくというか。

こないだちょうど話が出たんです。「『100人カイギ』っていう言葉が形容詞になっている」って。「それ、やってること100人カイギっぽいよね」みたいな感じで。

――すごい! でもわかります。私も運営していて、多業種、多世代の方がこんなに集まって盛り上がってつながりが作れていくのって、「100人カイギならでは」なんじゃないかとよく感じます。

それこそ、さっきも話が出たけど、国内で他の地域に行くときなんかに「こういう人紹介してくれませんか?」とその地域の運営さんに相談したら、すぐにたくさん紹介してくれるんですよ。

――そういう意味で言うと、100人カイギは参加するのも面白いけど、実は運営が一番面白いのでは?という話になってきますね。

間違いなく、運営が一番メリットがあると思っています。地域で100人の人と知り合えるわけですから。100人カイギを運営していたら、解散するときには地域のコミュニティマネージャーになっているということなんですよね。

――地域コミュニティの核になりたい方はぜひ100人カイギを運営してみませんか!ということになりますね(笑)。コロナで一時期新規立ち上げは停止していましたが、立ち上げオファーは増えていますか?

また戻ってきていますね。本部としての運営の都合上、新規立ち上げの数を「1か月に2つまで」調整しているので、今は2か月か3か月先までもう決まっている状況です。

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――リアル開催が多いですか? それともオンライン?

どちらもありますね。リアルで再開したくて始まるところもある。オンラインでやるところもある。それはもうどちらでも。僕が決める話じゃなくて、さっき話じゃないけど、その人たちがどういうコミュニティを作りたがるのか選択すればいいので。そこは否定も指示も指定もしません。

――じゃあどっちにするにしても、「こんな形でやってるところもありますよ」とこれまでのいろんな100人カイギのチームのノウハウを共有しながら運営できるということですね。

そうですね。いろいろ考えてガチガチにしたくはないので、その地域、そのチームで考えて実践していってもらえたらと思っています。

――ありがとうございました! 100人カイギが当たり前にあちこちで開催されている未来、私もちょっと楽しみになってきました。

100人カイギは若い人だけじゃなくて年齢層が幅広いから、おじいちゃんおばあちゃんが参加してても違和感ないですからね。

――私も、おばあちゃんになってもフラっと参加しようと思います!(笑)

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聞き手:洪愛舜・Junko Honma
文:洪愛舜
写真:Junko Honma

100人カイギ & stories ライター

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洪愛舜プロフィール
目黒駅前100人カイギ運営者。一般社団法人めぐもり代表理事。フリーライター。大阪府堺市出身。立命館大学理工学部卒。2011年、第一子出産を機に地域コミュニティの重要性を再確認し、地域での活動を開始。2015年『目黒駅前新聞』創刊。2019年「目黒駅前100人カイギ」発足、現在も運営中。
目黒駅前100人カイギ
一般社団法人めぐもり

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