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仕事のモットーは他人の感情を乗っ取らないこと

私はよく母に感情を乗っ取られてきた人生だった。嬉しいとか、悲しいとか、悔しいとか、何か出来事が起こる度に先に母が泣いたり笑ったり怒ったりする。なので、割と早期から「これは母がどう思うか」という視点で物事を捉えるようになった。「母が喜ぶから嬉しい」をモチベーションの原点にしてきた私は、他者承認をとにかく欲する大人になった。

今は職歴のほとんどが対人援助職だ。就いた理由も他者承認が明確に貰いやすいからというのが大きかった。支援してきた人の年齢は、言葉がまだ話せない2歳から、自分の親よりも年上の60歳まで。人生の節目に立ち会うような出来事も何度も経験してきた。

社会人になりたての私は、母に負けず劣らず感情を爆発させ、瞬時に自分の気持ちを相手に伝えてしまう人間だったと思う。しかし、感情を押し付けることの罪深さに気付いてからは意図的に表出を減らすようになった。

と言うのも、一度小学校1年生の男の子にテストの点数の報告を受け「嬉しいね~!」と声をかけて泣かせてしまったことがある。前回のテストは50点。色んなツールを使って必死に教えて、やっと取れた80点だった。どこか自分の支援が報われたことの嬉しさもあった。

「すごいじゃん、よかったね、嬉しいね~!」と声をかけると、男の子は号泣し始めた。最初泣いている理由がよくわからなかったが、少し落ち着いてから「…皆はふつう90点くらいとってるんだ」と泣きながら言った。悔しくて、悲しかったのだ。「80点ですごいって、僕をバカにしないでほしい」と怒っていた。その子の言葉を聞きハッとして、自分本位の言葉を先走って伝えてしまったことを謝罪した。

大人が「嬉しいね」と言ったら「嬉しい」と反射的に言ってしまったり、そう思わないといけないのかなと思ってしまう子も多い。(私もそうだった。)あの子はそれに飲み込まれずに自分の気持ちが伝えられて、強くてすごい子だったなと今でも思い出す。

子供の場合は出来事と共に、紐づく感情も自然に伝えてくれることが多い。しかし、感情の名前を知らなかったり、まだ出来事に対して感情が追い付いてきてなくてうまく表現できない子もたくさんいる。

そこからは出来事の共有を受け止め、まず子供の感情を傾聴する。その後に「点数が前回より増えたのは、頑張りが反映されてるね」とか「この難しい問題が解けたこと、私はすごいと思うよ」と自分の感想を伝えるようにしている。

言葉が話せないとか、感情の名前がわからない子も、気持ちに合う絵は選べることが多い

相手が大人になると難易度は上がるが、基本的には同じだ。出来事と相手の感情を確認した上で、次に向けての課題分析を一緒に行いtodoに落とし込んでいく。その人の気持ちに一度目を向けることで、次の行動が内発的に動機づけされていく。自分で選んだ行動をするので、結果も自責で捉えられるようになる。


人の感情を乗っ取らないことで、しっかり自分事として捉えてもらえるし、支援の上で自己防衛にもなる。それに気づいてからは、自分自身も楽に仕事をすることができるようになった。

ちなみに私の今のモチベーションの原点は、いかに短い時間で成果を出しお給料をもらうかということである。他人がどう思おうと自分に自信が持てるようになったので、あの頃の自分よりずっと生きやすい。

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