【週末投稿】つれづれ有用植物#44(クワ科クワ属:クワ)
クワの歴史は古く、古代に中国や朝鮮半島から渡ってきたと言われています。いろいろな利用用途がありますので、順番に解説してゆきたいと思います。
■絹糸、カイコの養蚕
私たちはすぐに「カイコさん」の食べ物として思い描く方が多いと思います。養蚕自体の歴史は古く、浙江省の遺跡から紀元前2750年頃(推定)の平絹片、絹帯、絹縄などが出土したそうです(WikiPedia)。
中国では養蚕技術の国外への持ち出しは固く禁じられており、日本へは弥生時代に中国大陸から伝わったとされています。
国内での生産品質はなかなか向上せず、中国からの輸入は江戸時代に至るまで続いたそうです。
クワはカイコが食べやすく柔らかい葉が出来る品種改良がされ、一之瀬(一瀬桑)という品種が普及したそうです。山野に自生するクワという意味でよばれている「ヤマグワ」は、霜害に強く、栽培桑が被害を受けたときに備えて養蚕地帯では霜害が割合的に少ない山地に植えて置き、栽培桑の緊急時の予備とした様です。ヤマグワの葉質は栽培桑よりも硬いため、カイコの成長が遅くなり、飼料としては性質は劣ったそうです。
現在では養蚕業は衰退の一途をたどり、桑畑は他に転作され数株のみ畑の隅に残している風景を目にすることが多くなりました。
■生薬、ハーブティー
クワの根皮は桑白皮(そうはくひ)、葉は桑葉(そうよう)、枝は桑枝(そうし)、果実は椹(たん)または桑椹(そうじん)、もしくは桑椹子(そうしんし)という生薬になります。利尿、鎮咳、去痰、消炎、強壮などの作用があり[、漢方では桑白皮を鎮咳、去痰に配剤され[、五虎湯(ごことう)、清肺湯(せいはいとう)などの漢方方剤に使われる様です。
多少未熟で紅紫色の果実を桑椹(そうじん)といって、35度の焼酎1リットルに桑椹300グラムを漬け込んで、冷暗所に3か月ほど保存して桑椹酒を作り、低血圧、冷え症、不眠症などの滋養目的に、就寝前に盃1 - 2杯ほど飲まれています。同様に、果実と根皮を35度の焼酎に漬けたものが、1日に盃1杯ほど飲まれます(WikiPedia)。
■葉や実を食用にする
4月初旬の春先の若葉は、軟らかいうちに摘み取って、天ぷらや茹でてお浸しなどにして食べます。食味は淡泊なため、いろいろな料理に合わせて頂く事ができます。
果実は、「桑の実」「どどめ」「マルベリー (Mulberry) 」と呼ばれ、生のまま食用にしたり、地方によっては桑酒として果実酒の原料となります。赤黒く熟した果実は、ジャムにすると芳香と甘みに優れています。
■木材やパルプとして
クワの木質はかなり硬く、磨くと深い黄色を呈して美しいので、しばしば工芸用に使われる。現在の中国新疆ウイグル自治区にあるホータン周辺の地域では、ウイグル人の手工業によって現在も桑の皮を原料とした紙(桑皮紙)の製造が行われているそうです。
このように、クワは昔から様々な用途して利用されてきた植物です。落葉性の高木または低木で、高さは5メートル から大きいものは10メートル以上に達します。雌雄異株または同株で、4月頃に花弁のない淡黄色の小花を穂状に下げて開花し、果実は5~6月頃に結実して初夏に熟します。熟すと赤黒くなり、甘くて生でも食べられます。
野鳥もクワの実は大好きで、あちこちで糞として種がばら撒かれるので、知らないうちにあちこちにクワが生えている所を見かける事ができます。
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