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書籍解説No.10「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」

こんにちは。

こちらのnoteでは、毎週土曜日に「書籍解説」を更新しています。
※感想文ではありません。

本の要点だと思われる部分を軸に、私がこれまで読んだ文献や論文から得られた知識や、大学時代にかじっていた心理学の知識なども織り交ぜながら要約しています。
よりよいコンテンツにするため試行錯誤している段階ですが、有益な情報源となるようまとめていきますので、ご覧いただければ幸いです。

それでは、前回の投稿はこちらからお願いします。

第10弾は【ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 (アダム・グラント)】です。

【オリジナルな人】

オリジナリティ(独創性) ― 独特性あるいは独創性。既存のものを疑い、よりよい選択肢を探すこと。
オリジナルな人 ― 独創性を活かし、自らのビジョンを率先して実現させる人。

一般社会では、周囲に同調し、所属集団に波風を立たせない人の方が扱いやすいことから、一般的に家庭や学校でもそのようにしつけられ、集団からも迎合されます。
そのように教育された人はやがて、既存のシステムに疑念を抱かず正当化し、集団や規則に従っている方が心は落ち着き、労力もかからないことに気付くはずです。
しかし、これによって生じる弊害もあります。周囲に迎合し過ぎるあまり、不正に対抗する感情や、世界をより良くするために考える前向きな意志が奪われてしまうのです。

著者は、オリジナリティを「コンフォーミティ(同調性)」の対概念として捉えています。流れに逆らって既存のものを破壊することには大きなリスクが付きまとい、それに抵抗する勢力も現れるでしょう。オリジナルな人は、「既存のもの」や「与えられた選択肢」を疑い、より良い選択肢を探すことに日々苦心しています。

そうした逆境をはねのけて、オリジナルなものを実現させるためのヒントが本書には書かれています。

【オリジナリティを求める自発的行動】

経済学者のマイケル・ハウスマンは、「顧客サービス係の使っているネットブラウザ」と「離職率、業績」に相関関係があることを証明しています。
銀行や航空会社、携帯電話会社で、顧客に電話対応をする3万人以上の従業員データを入手したハウスマンは、彼らの顧客履歴を見れば、仕事への取り組み方が分かるのではないかと考えました。

結果は、Internet ExplorerやSafariを利用する顧客サービス係よりも、FirefoxまたはChromeを利用する従業員の方が職に定着し、欠勤が少なく業績も高いことが判明しました。

この結果が現れたのはブラウザそのものに原因があるのではなく、ブラウザの好みからうかがえる従業員の習慣に要因があるとハウスマンは予測します。
パソコンの場合、WindowsにはInternet Explorer、MacであればSafariがあらかじめインストールされています。FirefoxやChromeを入手するには、多少の労力を使って別のブラウザをインストールしなければなりません。

このような自発的行動は、たとえ些細なものだとしても、職場での行動を決定づけるヒントになるといいます。
Internet ExplorerやSafariという「ありもの(標準仕様)」をそのまま使った従業員は仕事に対しても同様で、マニュアル通りの決まった手順で顧客対応し、会社側から提示された業務内容を固定化したものとして捉えるため、仕事に不満を感じると欠勤するようになり、遂には離職してしまいます。
自発的にFirefoxまたはChromeにブラウザを変更した従業員は、仕事に対するアプローチの仕方が違い、商品を売ったり顧客の疑問点に対応したりする新しい方法を常に探し、気に入らない状況があればそれを修正していました。

「提示されたもの」や「今あるもの」といった既存のシステムを正当化する方が楽で、気持ちも落ち着くという効果があります。
しかし、オリジナリティの最たるポイントは「既存のもの」を疑い、より良い選択肢を探すことです。オリジナリティを求めるのであれば、既存のものをそのまま使うのではなく、自ら行動を起こして新たなものを生み出さなければなりません。

【大量のアイディアと組み合わせ】

独創的な考え方をする人は、奇妙なアイディアや、満足のいかないアイディア、とんでもない失敗となるアイディアをたくさん出しますが、それらが無駄になることはありません。たとえ失敗したとしても、アイディアは蓄積されていき、その経験が無駄になることはないのです。

私たちは不確実なものに出くわすと、人間的な反応として一般的にリスクを回避しようとする傾向があります。そして、新しいアイディアを実行して得られる利益ではなく、悪いアイディアに投資して失敗する理由を見つけようとしてしまうのです。
その結果、多数の「偽陰性」の判定を出してしまいます。「偽陰性」とは、斬新なアイディアでのちに陽の目を浴びる可能性があるにも関わらず、既存のものに固執してしまい、却下すべき理由に目を向けることです。

「革新的なつながりを見つけるためには、他の誰とも違う経験の組み合わせを持つべきだ」
スティーブ・ジョブズ

そして、一見すると関連性のなさそうな経験や資格であっても、それらを組み合わせることで斬新なアイディアが構築されるかもしれません。
つまり、一つに特化した専門性がなくても、創造性深い経験があればオリジナルなアイディアを生み出すことはできるというわけです。

【リスクは取るべきか】

著者は本書のなかで、「オリジナリティには徹底的にリスクを冒すことが必要という通説」を覆します。

結論からいうと、リスクを嫌い、アイディアの実現性に疑問を持つ人が起こした会社の方が、積極的なリスク・テイカーの会社よりも長期にわたって存続するといいます。

世界の名立たる企業家や投資家は、外見的には大胆で自信満々に見えるものです。
しかし実際には、彼らはリスクの高い投資をする一方で、その他の投資では安全策を選んで身を守ろうとします。成功している人の多くは、リスクのバランスを調整し、全体的なリスクのレベルを弱めているのです。

ある分野において安心感があると、別の分野でオリジナリティを発揮する自由が生まれます。経済的な基盤を確保しておけば、転職や起業、書籍出版にあたってのプレッシャーから逃れることができます。

【全体的なリスクレベルを弱める】
A分野 → リスクレベルが低く、標準的な域内における行動、仕事
B分野 → リスクレベルは高いが、オリジナリティを発揮できる行動、仕事

【まとめ】

今回は、以下の項目を軸にまとめました。

【オリジナリティ/オリジナルな人とは】
【オリジナリティを求める自発的行動】
【リスクはとるべきか】
【大量のアイディアと組み合わせ】

本書のテーマである「オリジナリティ(独創性)」ですが、斬新で新しいアイディアは自発的な行動なくして生み出すことはできず、これを求めることは幸せに至る道として決して楽なものではありません。
それでも、オリジナルな人たちはあえて苦しい道を選び、理想の世界を実現しようと取り組んでいます。

また、創造する人は「好奇心が強い」「周りに同調しない」「反抗的」という三つの特質をもつといいます。いずれも、コンフォーミティ(同調性)に対抗する要素といえるでしょう。問題意識を持ち、逆境をはねのけて既存のものを破壊し、創造することがオリジナルなものの実現には必要です。

私たちが後悔するのは「行動を起こしたうえでの失敗」ではなく「行動を起こさなかったための失敗」である。

これはよくいわれることですが、本書を読んだ後であればより説得力が増す言葉だと思いました。

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