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書籍解説No.8「自分の時間 1日24時間でどう生きるか」

こんにちは。

こちらのnoteでは、毎週土曜日に「書籍解説」を更新しています。
※感想文ではありません。

本の要点だと思われる部分を軸に、私がこれまで読んだ文献や論文から得られた知識や、大学時代にかじっていた心理学の知識なども織り交ぜながら独自の見解を示しています。
よりよいコンテンツにするため試行錯誤している段階ですが、有益な情報源となるようまとめていきますので、ご覧いただければ幸いです。

それでは、前回の投稿はこちらからお願いします。

第8弾となる今回はこちらです。
「自分の時間 1日24時間でどう生きるか(アーノルド・ベネット)」

私たちには皆、平等に24時間を与えられています。
富める人、貧しい人、社長、部下、大人、子ども。与えられる時間の増減が身分や年齢、資産によって変わることはなく、はたまた欲しいと願ったところで売買できるものでもありません。

その何にも代え難い時間という名の恩恵を無駄にするか、有意義に過ごすかは個人の自由ですが、それをより良いものにするためのヒントが本書には書かれています。

【「もっと時間があれば―」は言い訳に過ぎない】

ある人が、語学学習や資格取得のための勉強をしたいと考えているとします。

その人は仕事に追われる日々を送っており、毎日課せられる残業により、帰宅後は疲労困憊。勉強する時間も余裕も到底ないといいます。
しかしある時、諸々の事情により会社からテレワークを推進されることになりました。わざわざ出社する必要がなくなったことで移動の時間や労力のロスがなくなり、更には自宅業務になってからは作業の効率化を図ることもできたため、余暇の時間が増えました。これで勉強のために時間を充てられる...
しかし、その人は「これほどゆっくり息抜きできる時間は今しかない」ということで、得られた恩恵をネット上でのウインドウショッピングやゲームに充てました。勉強に関しては「少し息抜きしてからやればいい」として、先日購入した資格取得のためのテキストは積み上げられたマンガ本のどこかに埋まっています。

この事例から分かることはなんでしょうか。
それは「人間は自分に言い訳をする天才」だということです。

この事例は、決して喜劇的な物語ではなく現実として起きていることだと思います。
たとえ時間という何にも代え難い恩恵を得られても、いざ勉強やトレーニングをしなければならないと至った時に「今は他にやらなければいけないことがあるから」「ちょっと身体の調子が悪いから」「友達から遊びに誘われたから」「気分が乗らないから」と先送りにしてしまうものです。

そのため、私たちがやらなければならないと思っていることを実行に移すのは、実のところ至難の業だというわけです。やるべきことに着手するには多くの犠牲を払い、努力し続けなければならないのです。

【明日には再び24時間を手に入れられる。だからやる】

「今日は誘惑に負けて、やるべきことを先送りしてしまった」
「今週から始めた毎日筋トレ、昨日はサボってしまった」

しかし、心配ありません。
なぜなら、明日には完全手つかずの24時間が再び手に入るし、その先の未来にも時間が常にとっておかれているからです。言い換えれば「毎日やり直すチャンス」が私たちにはあるのです。

また、もしかしたら新たな挑戦の先にある「失敗」という恐怖にたじろぎ、結果として先延ばししてしまう人も少なくないでしょう。しかし、著者はこのようにいいます。

「来週まで待ったりするのは、いや明日まで待つことすら、何の意味もないということだ」

失敗や幻滅を恐れても「飛び込んでみること」「始めてみること」だといいます。たとえそれが失敗に至ったとしても、それをプラスに転じさせるための明日は必ず訪れるのです。

【はじめから大きな変化・成果を求めない】

以下は、「適切な目標設定の仕方」に関連する部分です。

確実に明日はやってくるとはいっても、失敗や挫折は私たちの意気を十分に削ぐだけのパワーを備えます。そのため、なすべき価値のあることに取り組む際には、気を引き締めてかかる覚悟が必要です。
しかし、いきなり大層な目標を掲げ、大きな変化や成果を求めてしまうと、往々にして失敗し、挫折してしまうものです。
多くのことを企てすぎたことで失敗すると「自分はやっぱりダメなんだ」と消沈し、それが自尊心や自信の喪失へと繋がってしまいます。それは何としても回避しなければなりません。

そこで大事なことは、

いきなり多くのことを企てるのではなく、小さな成功・変化を積み重ねていくことです。

ゲームでも、初心者がいきなり最高難易度のレベルに挑んだところで大概は返り討ちにされるのが関の山でしょう。そのため、まずは小さなミッションを確実に攻略していき、コツコツと自己の能力と自信を上げていくことで、難易度の高いものに手が届くようになります。

これは目標設定においても同様です。
まずは大きな達成目標の下に、小さな達成可能なレベルの目標を置きます。それらを一つひとつクリアしていき、成功体験を積み重ねていくなかで自己肯定感は高められ、気付かないうちに能力も上がっていくものです。たとえその過程で失敗をしても、小さな目標であれば最小限のダメージで済むため、そこで挫折に陥ることがなく前向きに修正に取り組むことができるでしょう。
小さな成功は、やがて大きな成功をもたらすかもしれないのです。

【無意識の行動を変える】

私たちの行動のほとんどは習慣で成り立っています。人間は理性的な生き物だと言われていますが、実際のところ一日における大概の行動は理性よりも本能や習慣によるものなのです。
詳細は【ファスト&スロー】の書籍解説で述べていますので、ご覧ください。

習慣は、言い換えれば無意識で行っている行動です。こうした直感的で衝動的な思考を、著者のダニエル・カーネマンは「システム1(速い思考)」と呼んでいます。

そして、自分を監視しながら熟慮する思考は「システム2(遅い思考)」といいます。

システム1(速い思考):直感的、衝動的
例1) 電車に乗り込んだら、とりあえずスマホを触る。
例2) 帰宅後すぐにテレビの電源を点ける。
システム2(遅い思考):熟慮熟考、論理思考能力
例3) 集中しなければと思い、スマホの電源を切る。
例4) 提出期限の迫っている課題があるため、友人からの誘いを断る。

「習慣を変える」

言うは易しですが、これは至難の業といえるでしょう。変化というものは、たとえ私たちの改善につながるものであっても、必ず不便や不快感を伴うものです。そのため、習慣を変えたいと思ったら何らかの犠牲と強固な意志の力が必要になることを覚悟しなければなりません。

しかし、決して不可能なことではありません。
習慣を変えるには先ほど上でも述べたように、壮大な計画を入念に企てるよりも、小さな変化から始めることです。挫折が致命傷にならないよう、小さなことから始めていきましょう。

【集中、そして内省】

こうした脳の働きを理解し、コントロールすることは、充実した生活を送るための第一条件といえます。脳の働きに磨きをかけてコントロールするには「集中力」を鍛えることが有効な手段の一つです。

集中しなさい

誰もがこの言葉を掛けられ、また誰かに向けて言ったことがあると思います。
この「集中力」を鍛えるために、どこでもできる練習方法を紹介します。

それは「一つのことに思考を集中してみる」ということです。

当たり前のことのように聞こえますが、更にいうと「一つのタスクに専念する(シングルタスク)」ということです。
私たちはしばしば、音楽を聴きながらウォーキングをしたり、テレビを見ながらスマホを触ったり、動画を見ながら作業をしたり、複数のタスクを同時にこなします(マルチタスク)。これは一見効率の良いやり方に思えますが、決して集中している状況とはいえません。

そのため、集中力を鍛えるのであれば、日常のある行動を行う際に一つのタスクに専念するのです。ウォーキングの際には歩くことだけ、あるいは吹き抜ける風の音や鳥のさえずる音だけに集中し、朝食後に食器を洗っている際には汚れを一心に落としたり、読書の際には時間を決めて活字を読むことだけに専念したり、ということです。

このように集中力を高めていくことで、自分と向き合うきっかけにもなります。この内省的気分は、現代人の生活に最も欠けているものだと著者はいいます
自分は理性的に行動できているか、自分の進みたい道は何か、人生とは、幸福とは。私たちは、自分のことを振り返って考えることがそう多くありません。
これら一つひとつと真剣に向き合ってみると、自分が今すべきことがスマホやゲームなのか、それとも勉強や読書なのかが明確になってくるはずです。

【まとめ】

①時間は尊いものだが、私たちは何かと言い訳をして先延ばししてしまう。
②明日もその先の未来でも手つかずの24時間が得られる。だから失敗を恐れない。
③目標設定においては「はじめから大きな変化・成果を求めない」。
④習慣を変えるには「小さなことから始める」。
⑤内省することで、自分が理性的に行動しているかをチェックする。

これまで上で述べてきたことをまとめるとこのようになります。

余談ですが、私は2年弱のヨルダン滞在中に「語学学習、読書、料理、ランニング、マインドフルネス」を習慣化させました。もちろん、その過程ではエラーが生じたりサボったりしたこともあります。

それでも習慣化に成功したのは、
(①)「サボろうかな」と思った時に、先延ばしをしてしまう人間的な性質を理解し、
(②)明日訪れる24時間では失敗を取り戻そうと思い、
(③・④)達成可能な目標設定と小さな成功体験を積み重ね、
(⑤)自分と向き合うことを重ねてきたからだと思っています。

率直にいうと、自分の習慣や行動パターンを変えることは労力を要するうえ、時間もかかります。おそらくその過程ではエラーも生じるでしょう。
しかし、たとえ一度失敗したとしても「次の24時間は必ず訪れる」のです。
そのため、何かを変えるには長期的で多角的な視点で見据え、トライ&エラーを繰り返すことが必要だと思います。

冒頭でも述べたように、ここに書かれていることは私が本書を読むなかで特に重要だと思った部分を、他の文献から得られた知識と組み合わせたものです。
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