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茫象綴噺・寸 星瞳の人魚と青年

蒼き海原にひとり、青年は佇む。心の奥底に秘めた孤独を癒すため、波音に耳を傾け、風に揺れる波間を見つめていた。ある日、海の深淵より、美しき人魚が静かに彼の前に浮かび上がる。その瞳は星のごとく輝き、言葉を交わさずとも、彼の心を見透かすようであった。青年は、その不思議な存在に魅了され、逢瀬を重ねるうちに、互いの心は溶け合っていった。だが、人魚は切なく告げる。「この海を離れる時、私の記憶も消えゆくのです」と。青年は涙をこらえ、彼女を見送った。その後、海辺に立つ彼の胸には、微かな温もりと儚い記憶だけが残された。そして、寄せては返す波のように、彼の心も揺れ動き続けた。

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