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ドイツにおけるサツマイモの位置づけについて考察してみた

今年1月マイスターの資格を取るために通っていた学校の授業でのこと。付加価値税がテーマだった。

(先生)植物や野菜にかかる付加価値税の税率は?
(複数の生徒)7%。園芸用品とか加工食品は19%です。

その時、同じ列に座っていたKくんが「でもサツマイモは19%なんだよな」と隣の男子と語らっているのを私は聞き逃さなかった。
授業が終わって近くのスーパーでサツマイモを買ってレシートを見たら、たしかに19%。Kくんは24歳にしてお父さんから会社を引き継いで菊の生産をしているだけでなく墓地の植栽にまで手を広げているやり手の経営者。さすがによくご存じだ、と感心したけど一体なんでサツマイモだけ19%なワケ?

他の野菜は7%、サツマイモは19%

ざくっとドイツの付加価値税(売上税)について説明すると、これは日本でいう消費税。ただし品目によって税率が違っている。原則的には19%、モノによって低い7%の税率が適用される。そして最終的には国の金庫におさまる。

例えば人が生きていく上で必要な食品や農産物は7%におさえられている。ただし口にするものでもジャムや缶詰といった加工物やジュース、ミネラルウォーターには19%と異なる。確かに果物からジャムになるまではひと手間もふた手間もかかって付加価値があるし、かりに食べなくったって平気なのだから19%は至極当然。

水だって水道水さえあればのどの乾きはいやせる。だからボトル詰めのミネラルウォーターに高い税率がかかっていても納得できる。でもなぜにサツマイモは別扱いされねばならんのだ?

そこで想定される理由を考えながらこの問題を考察することにした。

理由1 ドイツのサツマイモは特別扱いされるほどおいしい?

似ているようでやっぱり日本で売られているのとは異なる。皮の色がちょっと薄いくらいでパッと見はそれほど変わらない。二つに切ってみると薄いオレンジ色の切り口がのぞく。

全身オレンジ色です

あら、きれいじゃない、さぞやおいしいことでしょうとまずは思う。煮物にしてもまあイケる。

ところが焼き芋にするとスルッと化けの皮がはがれるのだ。甘みの弱さは横において、でも焼き芋でゆずれないポイントは、ホクホクあるいはねっとりした食感でしょうよ。なのにその要素は全くなし。おそらくでんぷん質が少なくって水分が多いのが原因とみた。私の期待値が高すぎるからかもしれないけれど、なんか違うじゃない。。って涙目になって訴えずにはいられない。

もちろんドイツ人にしたらこれでも大いに合格点なのかもしれない。でも待てよ、そもそもドイツ人が買っている姿は目撃したことすらないではないか。どうみても美味しさを根拠にした19%ではなかろう。

理由2 サツマイモはジャガイモと違う科の植物だから?

同じく中南米を故郷に持つジャガイモとサツマイモ。ただしイモとついていてもドイツ人が主食とするジャガイモはナス科でサツマイモはヒルガオ科の植物。ここ数年、葉の色の美しさが注目されてサツマイモが花壇や寄せ植えの材料として使われているのをよく目にする。

成長力が旺盛で他の植物を押しのける勢い

でもですよ、植物としてガーデニングセンターで買うとサツマイモであっても税率は7%しかつかない。葉と食用とされる塊根部分で一体なんでこんなに待遇が違う?

理由3 ドイツで売られているサツマイモは輸入品が主流だから?

ドイツのスーパーで売られているサツマイモの産地をみるとエジプト、エチオピア、米国といったEU域外の国々の名前がほとんど。元々ヨーロッパは涼し過ぎてサツマイモ栽培に向いていなかった。

種苗会社のカレンダー。トレンディなサツマイモですって

それにドイツ人の食に対する好奇心もかつては限られていた。
ところがベジタリアンとかヴィーガンの流れによって色んな野菜が注目されるようになったし、サツマイモの消費量が年々伸びているのは移民が増えて、品ぞろえが彼らの食文化に合わせるようになっている影響も大きいのかも知れない。

今や輸入品だけではない。品種改良で低い気温でも育つサツマイモが開発されたせいだろうか、それとも地球温暖化の影響なのか、とにかくドイツでもサツマイモが栽培されている。昨夏、ボーデンゼー(湖)にあるライヒェナウ島へ旅行した時のこと。散歩中のおじいさんに畑にある作物を聞いたら「ああ、そりゃサツマイモだんべ」という答えが返ってきた。

その昔に税率を担当の役人さんは「はあん?甘いイモ?誰も食わんだろうし、出回ってないんだから、19%でもいいんじゃない」と考えたんじゃないだろうか。まさかサツマイモがこれほど浸透するとは思ってもいなかったことだろう。
それでも輸入物だろうが国内産であろうがやはり19%は変わっていない。

理由4 サツマイモは贅沢品だから?
食べる習慣がなかった=手に入れる機会が少ない=希少品=贅沢品
こんな図式があてはまるならサツマイモはかつて贅沢品と見なされたに違いない。でも、ならばお役人様にお聞きしたい。思わずぎょえっと声が出てしまうほど高いトリュフはなぜ7%に抑えられているのでしょう?これぞまさしく高級品じゃないの?

もはやサツマイモはどんなディスカウントスーパーで手にはいるけどトリュフは専門店でしか売ってない。

 私自身トリュフオイルを味見させてもらったことくらいはあるけど生のトリュフなんてとてもじゃないが手が出せない。ドイツに住む一般庶民とて同じでしょうよ。やっかみ半分だけれどこんな高いキノコを買うような富裕層からもっと税金をふんだくってやりましょうよ、と願ってしまう。

たかがキノコ、されどトリュフ 数字はユーロ値段です。

結論
どれだけ頭をひねってみてもサツマイモ19%の謎は深まっていく。そのうえ先日買ったサツマイモはなぜか7%になっていたし、もう訳が分からんぞ。。。

それにしても日本で食べられるようなホクホクの焼き芋がドイツでも食べられたらなあ。そうすればこれぞ秋の贅沢の極みとして19%の税率も腑に落ちるのだけれどね。


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