銃口から寿司

男は震えていた。
「信じられるか!?銃口から寿司が出てきたんだぜ?あれは確かに鉄火巻だった。弾丸が俺を貫いたと思ったら、美味かったんだ」
「撃ったやつは何者なんだ?」
「どう見ても寿司職人ではなかった。食にもあまり興味がなさそうな雰囲気を感じた。人間かどうかもわからない」
「人間じゃないのか?」
「腕が4本に見えたんだ。実際に4本かどうかは謎だ。ぼやけて見えたから2本の腕が高速で動いていた可能性がある。トリックアートの可能性も捨てきれない」
「他に特徴は?」
「とにかく眉毛が長かった。たぶん人が住めるぐらいのサイズはあったと思う。3LDKぐらいの空間があるように見えた。もしかしたらもう人は住んでるのかもしれない。家賃はおそらく高いだろう」
「そいつの目的は何なんだ?なぜ寿司をお前に撃ったんだ?」
「おそらく、おそらくだが寿司の押し付けかもしれねぇ。俺はここ数年寿司を拒否してきた。寿司が美味いことは分かってる。それは百も承知だ。しかしどいつもこいつも寿司で舞い上がってる姿を見ていると、拒否しちまいたくなってよ、寿司をディスってばかりいたんだ。刺身も食べるし酢飯も食べるが寿司は食わねぇ、そんな食生活が続いていた。そうこうしてるうちにターゲットにされたのかもしれねぇ。弾丸の代わりに寿司が飛んできたのはかなりの衝撃だったぜ」
「撃たれた後、お前の寿司に対する思いは変わったか?」
「1度回転寿司には確実に行くだろう。だが俺は負けない。たとえ寿司のマシンガンで撃たれたとしてもな!」