【旅blog】八重山諸島周遊の旅 5

私も驚いて一瞬固まった。

女の子は落ち着いたようで話しかけてくる。

「あぁ、びっくりした。…暑いですね。」

「う、うん。なんか急に話し掛けてごめん。さっき軒先でビール飲んでた人だよね？」

「そうです。今はカレー食べようと思って作ってました。スクーターで帰ってきてましたよね。宿のスタッフさんかと思いました。」

そんな会話をしながら、キッチンは空調がなくて暑いので軒先で一緒に食事をとることにした。

会話をしていると女の子と言っていたが、29歳の年上で関東の保育士とのこと。

それにしてもこの島は蚊がすごい。

軒先で話しながら食べていると何箇所か刺された。二人は蚊に耐えられず、ちょうど日没の時間だったので港に行くことになり、ビールとのり塩を持って港まで歩いた。

またたわいもない話をしながら夕日を眺めたが、ここでもあまり見えなかった。

空は暗くなり、港の灯りも消え、あたり一面は闇に覆われた。

彼女と夜空を見上げると、石垣島や竹富島とは違ってかなりの星が瞬いており、天の川まで見ることができた。

※写真がないのでイラストで想像して下さい。

二人で港に寝転がり、流れ星を探した。

「流れ星なかなかあらわれないね。」と彼女がつぶやく。

その日初めて会った人と港で寝転がり、天の川を見ているなんて不思議なものです。

そんな雰囲気が2人の心の距離を少し縮めたのか、会話は思わぬ方向へ進んでいく。

「沖縄にはよく来られるんですか？」

私がそう聞くと彼女は答える。

「うーん、20代前半は住み込みで働いてたんだけど、今はあんまり来てないかな。今回が数年ぶりって感じ。」

「住み込みってすごいですね！」

「うん。こっちに好きな人がいて、結婚するつもりだったの。」

「ほうほう！」

「でも、家柄とか収入とか学歴とかでうちの親が猛反対して、私は関東の地元に連れ戻されちゃったんだぁ。」

「え…、親の猛反対ってのは俺と同じだ。。」

※漫画「そろそろ婚活始めます。」第1話参照

「同じ境遇の人って今までいなかったから珍しいかも！お互い好きでも報われない恋愛ってあるよね。」

「そうだねー。好き以外の要素が絡んでくるからね。今は彼氏はいるの？？」

「うん。お姉ちゃんの旦那さんに紹介してもらった人と付き合っててこれから結婚するの。あまり好きって気持ちはないんだけどね。」

「え！？好きじゃない人と結婚するの！？」

「そう。趣味も何もない人だけど、優しくて誠実で、仕事も安定してる。だからいいかなぁって。私も30歳になるしさ。」

本当にそんなことで良いのかと何度も聞いたが、彼女の意志は変わらない。

むしろ今日会ったばかりの私が彼女を止めようとすることがおかしいのだ。

「結婚」という一つの出来事でも、前日と比べてこんなにも違う内容なのだ。正解なんてないのかもしれない。

なんとも失礼なことをしてしまった。

彼女は気まずくなったのか話題を変えた質問をしてきた。

「ねぇ、趣味は何なの？」

「うーん、何だろう。特にないけど音楽鑑賞かな。。最近またサケロックにハマって聴いてる。」

「インスト好きな人もあんまり会わないから珍しいかも！あたしもインストが好きで、最近だとtoconomaってバンドのseesawって曲をかなりリピートしてる！これこれ！イヤホン貸してあげるよ！」

そういって彼女は自分のiPhoneにイヤホンをつけて貸してくれた。イヤホンを片耳ずつはめて星空を見上げながら音楽を聴いた。落ち着いていて旅感のあるとても良い曲だった。

そんな話をしながらも、私の頭の中では「結婚」というキーワードが何度も何度も巡っていた。

結局は結婚ってどんなかたちであれ、自分がこの人と生きていくって決断できるかどうかなんだろうな。なんとも婚前の女性に縁のある旅だ。

その後、無事二人とも流れ星を見ることができ、宿に戻ると軒先で彼女は幻の泡盛の話を聞かせてくれた。

彼女が前日まで滞在していた波照間島で作られているお酒で、波照間島以外ではなかなか手に入らないことから「幻」と呼ばれている様子。

彼女はそれを持っていて、少し飲ませてもらった。すごく飲みやすい。

名は「泡波」という。
※少し高いが今はAmazonで買える。

波照間島から石垣島、沖縄本島、日本の本州と東京に近づくにつれて値段が高くなるお酒のようだ。

2人は良い気分になり、宿の周りを散歩しながらまた天の川のきらめく満天の星空を眺めた。

夏の心地良い夜風が吹き抜けていく。

翌日のマングローブツアーは彼女も行きたいようだったので、一緒に行動することに決めて、それぞれの部屋に戻った。

こうして3日目の夜は更けていった。

つづく

#ひとり旅 #一人旅 #旅行 #travel #アラサー #沖縄 #石垣島 #竹富島 #西表島 #小浜島 #八重山諸島 #エッセイ #ブログ