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テキスト考3 表現手段の拡張と洗練

電車の中で、何をそんなに熱心に話す必要があるのかと不思議に思うくらい、熱心なおしゃべりに興じている旅装のグループを見かけた。マスクをしているとはいえ、騒がしい大声である。電車での移動時、居合わせたくないタイプの人たちである。

その人たちはやはり、自分が話すことが楽しくて仕方がないのだろう。話すことに限らず、書くことや表現することに、人間は楽しさを感じる。インターネットの隆盛の要因の一つには、人々に表現する場を与えたということも挙げられるのではないか。SNS、ツイッター、インスタグラム等、表現するための様々な媒体が人口に膾炙しているが、テキスト(言葉)による表現もその多くを占める。

書くことや表現することは楽しいが、そこから一歩進めて、書くことや表現することにより、私たちはどのような洞察を得ることができるか。書くことや表現することで、私たちが気づき得る発見は何か。

取り返しのつかない事態が起こった後で、なぜ相談してくれなかったのかと残念に思うという話は、往々にしてよく聞く。なぜ相談してくれなかったのか。換言すれば、なぜそれを言ってくれなかったのか、書いてくれなかったのか、という問いになる。話すこと、書くこと、表現することを日々訓練することは、それらを容易にすることで自分を守ることにつながるだろう。あるいは他者に、話しやすく、書きやすく、表現しやすく接することは、その他者を守ることになるであろうか。

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