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バンド活動に明け暮れるつもりが怪しい武道の有段者になってしまった話

このnoteの編集画面にて

「読んだ本の感想を書きませんか?」

と運営側からのアドバイスが表示されている。

だが、前回の記事にて


普段は語らない自分の生い立ちを語る快感に味をしめてしまった。

そんな今の私は

他者の記した文などまるで興味は無い。

いずれ書くかもしれないが、それは自分語りが終わってからにする。


「どうしてこうなった」と未だに思っている


「合気道初段」


履歴書にこう書いてあれば、殆どの面接官は反応する。

競技人口が少なく、資格としても珍しいからだろう。


この資格は、大学時代合気道部に所属していた際に取得した。

しかし、それまでに武道を経験していたり、武道家に憧れていた訳でもない。
まして、護身術を学びたい訳でもなかった。

なぜ合気道を始めたのか。


話の流れでよく聞かれるが、長くなるので口頭で聞かれた際には

「なりゆきで」「自分でもよく分かっていない」と答える。間違いではない。

しかし、noteというのは便利なものでブログ並みの長文を記載する事ができる。

話すと長くなる自己紹介もダラダラと書ける。


この際だから聞かれる事の多い合気道を初めたきっかけを語ってみようか。

1. 本当は経験を活かしたかった


元々中学高校と吹奏楽部に所属していた。

何ならそのまま楽器を続けるつもりで大学の部活選びもしていた。

というのも、高校時代は全国大会にも出場する程の強豪校に所属していた私が

初心者も多い大学バンドに参加したら、無双できることは確実だったと確信していたからだ。

この当時の私は、全国大会に出場した経験からプライドと自意識が過剰だった。

その上、周囲から認められたい欲望に満ち溢れていたので「自分の戦えるステージを探す」という新入生にしては生意気すぎる理由でサークル選びをしていた。


学内には下手くそと噂の吹奏楽部と

大会にも出る活気溢れるジャズバンド部が存在していた。

無双するにしても、自意識がカンストしていた私は

よりレベルの高い場所を求め、ジャズバンド部に入部する事を決めていた。


勿論、4月の部活見学シーズンはジャズバンド部を中心に巡回していた。


しかし、この自意識の高さが祟ったのか

ジャズバンド部から入部を拒否されてしまった。


ジャズバンド部に所属する為には自分の楽器を持っていなくてはならない。

楽器を所持していない新入生は全員部室の外に追い出された。

だが、私は諦めなかった。

認められたい一心で。


学校の備品を使えないか先輩に交渉した。


しかし、備品の数には限りがあると断られた。当たり前だ。


こうして、泣く泣く入部を諦めることとなった。


まさかこの実績のある私が断られるなんて。


自意識しかない私は夢にも思っていなかったので、相当落ち込んだ。

意味もなく失恋ソングで心を慰めていた。西野カナに初めて共感した。


2. 切り替えが早いのが私の長所だと思っている

しかし、落ち込んでいる場合ではない。

この時既に6月、梅雨入りを迎えていた。

周りの新入生は部活のユニフォームを貰い、意気揚々と大学生活を謳歌している中

居場所を失った私は絶望している場合ではなかった。

先述の吹奏楽部は、部員が集まったようで募集を締め切っていた。「弱小の癖に」と心の中で毒づいた。

勉強に打ち込むという手もあったが

特段興味のある学部に入った訳でもなかったので、課外活動を充実させたい一心だった。


新たな場所を探さねば。

しかし、こんな時期にでも部員を受け入れてくれる場所はあるのか?


その時


鳴り響くメールの着信音


「合気道部です!本日も稽古を行っているのでまだ部活に悩んでいるそこのキミ、ぜひ体験して下さい^^*」

5月中頃までは他の部からも鳴り響いていたこの勧誘メール。

部員を獲得した団体から順に音沙汰が無くなっていたが

なんと、廃部寸前の合気道部だけが梅雨時になっても唯一連絡を寄越していた。


私に選択肢はなかった。


合気道、漫画で見た事ある気がする。
波動砲が打てるやつだっけ。


その程度の知識とも言えないイメージのみの情報で道場の門を叩いた。



ちなみに黒帯まで取得した現在でも、波動砲は打てたことがない。



3. 廃部寸前の合気道部

道場に入ると長い髭の生えたおじいさんが写った白黒肖像画が中央に祀られていた。

後に判明するが、肖像画の彼こそ合気道の創始者である植芝盛平である。

しかし、誰とも分からない老人の写真を見て私はこう感じた。


ここは、新興宗教か?


そして、その肖像画に向かって先輩方が合掌している。

やはり、新興宗教か。


入ってきた扉から再度逃げようかと思った。

しかし、ここで逃げては私を受け入れてくれる場所はもう無い。

心の中の碇シンジが「逃げちゃダメだ」と叫んでいるが、私の本能は「逃げろ」と声を張り上げている。


道場内の空気がしんと静まり返っている。


メール文面、顔文字まで使ってポップだったのに。

この厳かな空気とメール文面の温度差で風邪を引きそうだ。



あ、間違えましたー

この一言を言ってこの場を立ち去ろう。

そう行動しようとした矢先、先輩の視線がこちらに移った。



「新入生だね!」

逃げられなかった。

4. 先輩方は必死だった。

思いの外、先輩方は親切に接して下さった。

まさか来てくれると思わなかったよ

私もまさか自分が来ると思ってなかった。


「部員数は、3回生が4人、1回生が君合わせて4人。君が入部してくれたら8人で、ギリギリ部として存続できるから歓迎だよ!」

カイジばりに危ない橋渡ってるな、この人達。


先述のジャズバンド部が同じ敷地内にあるとは思えない荒廃ぶりだ。


ひとしきり部活説明が終わった段階で

袴を履いた長く白い髭をまとった風格ある老人が入室。


ここは西遊記の世界か?

話を聞いてみると、どうやら他学部で教授をしている顧問の先生らしい。


その風貌で教授。

心の声が漏れないよう必死だった当時の私だが

その仙人教授とは今だに繋がりがあるので人生何があるか分からない。


廃部の危機ということもあり、必死の先輩方のに取り押さえられるような形で

気が付いたら入部届を提出していた。


5. なりゆきでも上手くいくことはある。

こうして、華のジャズバンド部に入るつもりが何故か宗教観漂う合気道の門を叩く事になったが

やってみると案外楽しかった。

勿論、武道なので楽しいだけでなく厳しい面もあり

沢山怪我もした。沢山叱られた。沢山反省した。

しかし、単位を取らずに受身を取りに道場へ向かう位には打ち込んでいた。

新たな事に打ち込むことによって、過剰だった自意識はジェットコースターのように下ってゆき

過去の自分の言動に羞恥心を覚えるまでになった。

実際これを書いている今も恥ずかしさで死にそうだ。

もし、ジャズバンド部に入っていた時の事を思うと恐ろしさに身の毛がよだつ。


とは言え、まだまだ自意識が高い部分や至らない部分がある事は否めない。


しかし、合気道を通して自分に至らない部分があるという事に気が付かされた事は良い経験になった。



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