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懐かしさをたどって

ヘッダー画像の絵がヨレヨレなのは
クロッキー帳に水彩をガシガシ使ってしまったからで…気持ちのまま紙を選ばずに描いてしまったのでご容赦ください(笑)


さて紙を選べないほど筆を動かしたくなった
この風景は私が昔通っていた温泉です。


新潟県・五頭連峰の麓にある出湯温泉。


コンクリート造であるものの、引き戸やロッカー、建物内の柱は木造だったりするので
かなり年季が入った外観。

出湯温泉


一体何年前からあるのだろう?
ちゃんと調べてないからわからないけど、
むかーしからあることはわかっている。


私は生まれつき皮膚が弱い体質だった。


そんな私を心配した祖父母が、皮膚が良くなるようにとよく保育園の帰りに片道何十分もかけてこの温泉に連れてきてくれていた。


いつの頃からか足が向かなくなり、
私のことを車で送ってくれていた祖父は他界し、祖母は高齢になり車に乗って遠出することが難しくなった。




大人になってから初めてここを訪れ、
昔と変わらない風景に驚く。
東京では月替わりに建物が立ったり壊されたりしているのに、ここは全く変わらない。


最初は温泉に入るつもりはなかったのだが
この建物を見た瞬間、何かが胸の中まで込み上げてきて、なかば勢いで温泉に入ることにした。



何十年ぶりか?というくらいひさしぶりに女湯の入り口をくぐると、近くの山の木々の香りと、少し硫黄が混じった温泉の香りが入り混じっていた。



「あ、そうそう、この感じ。」


蘇るあの頃の記憶。


祖母が「よっこらしょ」とか言いながらロッカーの扉を開けて、身支度をしている姿。

香りを感じただけで、古い記憶が鮮明に蘇るのは不思議だ。



浴室に入ると風呂釜が一つドンと造られており、周りは給湯器などないシンプルな造り。



近所の住民さんが世間話をする声。



ぬるめで肌ざわりのいいお湯。



全てが懐かしく、変わらずそこにあった。



湯船に浸かっている間、私は保育園のころにタイムスリップしているような心地だった。


隣に祖母はいないけど、確かな温かさを胸の中に感じる。



普段何気なく過ごしていると、毎日我慢の積み重ねで、その苦しさから目を背けるよう淡々と暮らしてしまう。


だけどこういうふとした瞬間に、遠い過去を思い出して今の自分との繋がりを感じる。


その瞬間、誰かの思いや願いを受けて自分がここに今生きていることに気付かされる。


そして、幸せに自分の人生を生きようと思えたのである。


あのとき守ってくれた祖父母への感謝を忘れずに生きていきたいっすね。

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